【感想】『没頭力 「なんかつまらない」を解決する技術』吉田 尚記 (著) 現代人が幸せになる方法の科学とは?
『没頭力 「なんかつまらない」を解決する技術』吉田 尚記(よしだ ひさのり)さん読みました。
現代人がなぜ幸せを感じることができないのか?科学技術が発達しても、どこかしら満ち足りた感じがしないのはなぜか?
『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』 がヒットした吉田尚記さん。今回の本も非常に勉強になりました。吉田尚記さんはアナウンサーで会話調の本ですから、ものすごく読みやすいです。そしてじっくり読み込むと深いです。読む時の注意点も含めて感想を書いてみました。ものすごいおすすめでした。
目次
- 「なんかつまらない」を解決する
- 没頭を科学して分解、再現してみる
- 「没頭」って「フロー」?
- 人生を2万個の好きなことで埋め尽くす
- 没頭の3要素
- 不安を自分のものにする
- 没頭する場所はラーニングゾーン
- 『没頭力』を読むときの注意点
- まとめ
「なんかつまらない」を解決する
『没頭力』のサブタイトルは『「なんかつまらない」を解決する技術』です。本書の”はじめ”が、
「なんかつまらない」と思っている人たちへ
です。つまりは本書のターゲットは「なんかつまらない」と思っている人たちです。そして問題は「なんかつまらない」を解決、解消することです。
人が幸せを感じるのは「快楽」「意味」「没頭」となっています。
引用のポジティブ心理学はマーティン・セリグマン先生の『世界でひとつだけの幸せ―ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生』を参考にしていると思われます。アマゾンで検索するともう一冊の方の新しい本が出てきますが、多分こちらが有名だと思われます。
<ポジティブ心理学マーティン・セリグマン>
没頭を科学して分解、再現してみる
幸せの構成要素の一つである「快楽」は刹那的です。あとで引用するチクセントミハイも「快楽は消えやすく、快楽体験は自己を成長させない」(後述『フロー体験』P.59)としています。そして「意味」は人生を有意義なものとして、有名になったり、高い地位を得たりすることを目指します。
そして「快楽」「意味」とは別にある幸せの要素である「没頭」。この本ではこの没頭をいかに自分のものにするのかという点で話が進められていきます。この本の目次です。
1 「没頭」を定義する
2 「没頭」の仕組み
3 「没頭」できる体を作る
4 「没頭」するテクニック
5 「没頭」を味方につける
みてお分かりのように「没頭」を定義し、そのシステムを知り、体を作り、テクニックを身につける、という順に話が進んでいくことになります。
「没頭」って「フロー」?
吉田さんは最初の”没頭の定義”の章で「没頭」=「フロー」としています。「ゾーンに入る」とか「ジャックイン」とも言われている状態です。みなさん、その感覚はわかりますか?自分はわかります。
自分の言葉の定義としては「フロー」はよりオフィシャルな場面で入試試験や各種大会、競技などで起こるもので、「没頭」はより個人的な場面で起こる印象です。
そのため本書のような「フロー」=「没頭」であるという感覚はちょっと抵抗感があったのですが、一応本書の定義に沿って話を進めたいと思います。
<フロー体験入門>
本書で紹介されているのがこちらの本です。自分は下の「フロー体験」は読んでいるのですが、こちらの「入門」は未読でした。
<「フロー体験 喜びの現象学」チクセントミハイ>
こちらは超有名な本です。もしも心理学に興味があるならぜひ読んでいただきたい本です。
人生を2万個の好きなことで埋め尽くす
映画評論家の淀川長治さんは人生で2万本の映画を見たという予想の話がでます。そこで吉田さんは「人生を2万個の好きなことで埋め尽くす」ということを提示しています。
100個好きなことがあれば200回ずつで2万個になります。好きなことが100や200あればどれかは職業になるのでは?ということですね。
没頭の3要素
・自分なりのルールを決める
・結果が得られるまでのスパンを短くする
・自分のスキルより4%難しいことに挑戦する
チクセントミハイの「フロー体験入門」の8要素から3つをピックアップして「没頭」に入るための条件を取り上げています。
不安を自分のものにする
・不安
・開き直り
・没頭(フロー)
現代人がなんとなく感じている不安。しかし「没頭」への道は、不安 → 開き直り → 没頭、という順序で行われます。ですから「不安」は没頭への入り口です。この不安をうまく使って没頭に持っていくことこそ現代人の問題を解決することになる、と吉田さんは言っているのだと思います。
没頭する場所はラーニングゾーン
管理人の勝手な考えをちょっと書いてみたいと思います。『没頭力』と、他の心理学の本をミックスさせて考えてみます。今回は”コンフォートゾーン”と「没頭」についてです。心理学でいう”コンフォートゾーン” は自分が居心地がいいところのことです。ここを出るときには不安感を感じます。逆にコンフォートゾーンではあまり人は成長しません。ぬくぬくしちゃうんですね。不安を感じる場所は、勉強できる場所としてラーニングゾーンと呼ばれたり、より不安が強くなる場所だとパニックゾーンと呼ばれています。
『没頭力』で不安を感じるところで、開き直って、没頭する、ということは、おそらく不安を感じるラーニングゾーンに入っていて、ゾーンに入るということです。つまり「没頭」している場所はラーニングゾーンであり、「没頭」が最も自己を成長させる条件が整っているということなのではないでしょうか。
つまり「没頭」するときが一番成長している時、ということなのです。本文でもあるように「意味」を目指して頑張っている人は「没頭」している人には勝てない、とあります。それは「没頭」が学習や自己成長にもっとも適しているからではないでしょうか。
『没頭力』を読むときの注意点
ニコ生・ツイキャスが元になっている
この本はニコ生やツイキャスが元になってできています。それが分からないと、この本の方向というかクセがつかめないと思います。吉田さんはアナウンサーですから、話がとても上手いです。どんどん引き込まれていきます。
単に普通の本だと思って読んでいくと、話の流れがとびすぎていたり、伏線だと思っていた固有名詞が回収されなかったりします。会話だと思って、引っかからないようにしなくてはいけません。
一人で話をしている本
”はじめに”で予防医学の石川先生や精神科医の斎藤先生など5人と話をしたことが書いてあります(P.23-25)。最初に読むと、前著『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』の石川先生との対談みたいに5人のインタビューが載るのかな?と思ったらそうではありません。5人の話はいったん終わってしまいます。原井先生はその後、多分本文では話が出てきていないと思います。
後ろで里崎選手の話も出ますが(P.181)、話もそこでおしまいです。この本はニコ生の書き起こしだと思えば理解できると思います。会話書き起こしの本だと思っているとイメージがあうのではないでしょうか。
<石川先生と吉田尚記さんの共著>
こちらも大変面白く読めました。
まとめ
『没頭力 「なんかつまらない」を解決する技術』を読みました。なにか現代社会において不安を抱えていたり、「なんかつまらない」と感じている人はぜひ読んでみて欲しいです。
人が幸せになるのに「快楽」「意味」「没頭」があり、「没頭」にはいくつか条件があります。逆に条件を整えると「没頭」することを意識的にコントロールできるようになります。
「没頭」は不安をテコにしており、開き直ることで没頭に入ります。その不安を感じるところこそコンフォートゾーンを抜け出したラーニングゾーンであり、もっとも人が成長できる条件が整っています。
自分ルールで「没頭」することで、人生を2万個の「没頭」で埋め尽くすと幸せな人生になります。そして結果的にコンフォートゾーンを抜け出し自己成長をうながし他者をぶっちぎる、ということになるのではないでしょうか。
人は基本的に幸せになれるはずだし、自分は幸せになる!という人には読んで欲しい本です。今多くの本が脱資本主義的な考え方を展開させています。自分の『没頭』こそ新しい世界を切り開くキーワードになるのではないでしょうか。すごいオススメの本でした。