【感想】『クジラの子らは砂上に歌う 10』 梅田阿比 (著) 祝・アニメ化!必見のとんでもない作品です!!【マンガ感想・レビュー】
『クジラの子らは砂上に歌う』10巻出ました!アニメは10月8日開始です(1)。待ち遠しいですね。
『クジラの子らは砂上に歌う』は本当にとんでもない作品です!
砂の海に浮かぶ泥クジラに500人余りの人間が住んでいます。泥クジラの行く先はわかりません。周りの砂の海に飲まれた人は二度と戻ってこれません。自分たちは一体何者でどこへ向かっている?知らない世界に立ち向かう勇気とその代償、自由とそれに伴う痛み、小さな愛情と大きな憎しみ。チャクロたちは一つ一つを自分たちの目で確かめながら進みます。たとえ現実がどんなにつらいことであっても。
とんでもなくすごい作品なので、アニメ化をきっかけに、もっともっと多くの人に注目されていい作品だと思います。ものすごいオススメです!
現時点で最新刊は10巻です。そして今回10巻と同時に公式ファンブックと梅田阿比先生の短編集が発売になっています(3)。本編以外に公式ファンブックもかなり読んで使わせてもらっております。登場人物も多く設定も複雑な『クジラの子らは砂上に歌う』にはこちらもかなりオススメです!
1巻
物語は砂の海を航海する泥クジラでのお葬式から始まります。
チャクロ
泥クジラ記録係のチャクロ。
この物語の主人公です。とっても泣き虫で優しい子です。印(ベニヒ)であり、情念動(サイミア)という特殊な能力を使えます。ハイパーグラフィア(過書の病)であり狂ったように記録を書きまくります。
スオウ
スオウは次期首長といわれています。美形だけど実は男性。サイミアをもたない無印です。泥クジラはサイミアを持たない長命の無印の長老たちがどのようにするか取り決めをしています。サイミアをもつ印は短命です。その理由は分かっていません。
リコス
漂流していた島に取り残されていたリコス。チャクロたちに助けられます。チャクロたちが初めて出会った泥クジラ以外の人間です。印でありサイミアを使います。リコスの顔に浮かんでいるのは念紋(アウラ)。サイミアを使うときに現れ、それが大きいものほど強い力を持ちます。リコスは泥クジラの長老たちに尋問され、感情のないアパトイア(人形)と言われます。
サミ
サミちゃん、かわいい!チャクロの幼馴染で、スオウの妹です。サイミアをうまく使えるお姉さんタイプ。チャクロと二人で並んでいる姿が微笑ましいです。でも、幸せな時間はあまりにも短くて……。
予想もしない戦い
急に戦端は開かれます。リコス以外、誰も予期するものがないままに一方的な戦いが始まります。戦いというより泥クジラ虐殺です。読者も含め、誰もが理解できないまま多くの血が流れます。
2巻
帝国軍が泥クジラに攻め込みます。一方的な戦いは虐殺となっていきます。
リョダリ
帝国の兵士で、リコスの幼馴染。帝国の兵士は感情を失っていますが、リョダリは狂ったように戦いが好きで、とくに感情を持った泥クジラの住民を虐殺することに快感を覚えます。
オルカ
オルカはリコスの兄で、今回の帝国の泥クジラ(=ファレナ)殲滅の司令官。冷静沈着に見えますが陰では「人間主砲」「死神」と恐れられ、奇行を誰にも止められないと言われています。隠れた設定がいっぱいありそうな人物です。
オウニ
泥クジラの印でも最強と言われる青年。いつも仲間の少年たちと泥クジラのルールを破り、泥クジラの奥に投獄されていることが多い。帝国軍の虐殺に抵抗できた数少ない者の一人。
3巻
7日後の帝国軍の第二次攻撃を前に無印の長老たちはある決断をします。チャクロやリコスたちはその決定に逆らいます。
ネリ
ネリは無印の長老たちのそばにいます。でも別の役割を持っているようです。泥クジラの体内で長老たちと若者たちの葛藤が始まります。
エマ
ネリと同じ顔を持ったエマ。神出鬼没でチャクロを導きます。
リコス、ためらう
ふたたび帝国軍と戦うことがわかった泥クジラのメンバーは戦いの準備をします。そのなかでリコスはチャクロに今までに感じたことがない感情を感じ取ってしまいます。心を失っていたリコスは動揺します。
ファレナのデモナス(悪霊)
帝国軍に対して泥クジラのメンバーは突撃隊をつくります。オウニは無敵の強さを発揮します。
4巻
オウニ、発動
戦艦ヌース・スキロスに潜入した突撃隊でしたが、ヌースの間では殺生をしないという禁をやぶった帝国軍に仲間が多く倒れます。その戦いの中でオウニの力が発動されてしまいます。
オリヴィニスとアンスロボスの骨(コカロ)
戦艦ヌース・スキロスの恐らくはヌース(魂形)であるオリヴィヌスとチャクロは話をします。コカロが泥クジラの新しい旅への大事なものになります。
ロハリト
また新しい人間と遭遇することになった泥クジラ。泥クジラでもなく、帝国でもないロハリトは何を目指しているのでしょうか。
お話的にはここまでが第1部って感じでしょうか。『クジラの子らは砂上に歌う』は舞台化されていますが、舞台もここまでのお話のようです。あまりの人気に再演が決まったようです。再演の詳しい情報はこちらから(2)。
5巻
オルカ、物語る
オルカは泥クジラ(=ファレナ)殲滅作戦の失敗の責任を魂召会(エクレシア)で追求されます。彼は「物語り」ます。”詭弁”、”屁理屈”と言われながらも圧倒的な説得力を持つ彼の「物語」はエクレシアを動かします。
リョダリ、絶望す
ファレナ殲滅作戦で死んだとして扱われていたリョダリはオルカに拾われます。このままでは処刑されるだけのリョダリは身分を隠し、道化としてオルカに従います。
泥クジラ、新たな旅へ
エマはコカロの力を発揮させます。泥クジラに大きく広がる紋様は舵を大きく切ることを可能にしました。ロハリトとともに見知らぬ世界を目指します。
6巻
リコス
泥クジラのみんなと一緒に暮らしているリコスはこの環境を何よりも大切に思っています。しかし無印の人々は泥クジラを捨てるために旅をすることを決めました。リコスの心境は複雑です。
シコクとシコン
シコクとシコンは双子の兄弟。オウニと同じ体内モグラだが、さらに強硬派であって無印は不要だという”紫翼の舵”という組織を立ち上げます。
自警団団長シュアン
泥クジラのみんなが一生懸命に進む道を探している時に、どこか自暴自棄で死に急いでいるのがシュアンです。しかし自警団の団長であり、オウニを除いてもっとも強いと言われています。オウニとシュアンは同じように呪いを受けている、という意味の言葉がシュアンの口から時々出て来ます。
7巻
ミゼンの部屋
泥クジラの迷路の奥にある隠し部屋「ミゼンの部屋」に謎を解く鍵が隠されていました。
チャクロたちは一面に書き込まれた記録を読みました。そこには泥クジラの初代首長ズィオと彼女が生み出したデモナス(悪霊)であるミゼンの物語がありました。
8巻
覚醒するオウニ
オウニは一度サイミアを失います。そして再びサイミアを取り戻した時、それは元の力ではありませんでした。より大きく、より破壊的な力です。泥クジラをも破壊するようなその力の意味をシュアンだけが理解しています。
オルカとイティア
オルカは泥クジラ(ファレナ)殲滅作戦に失敗してから、いろいろと策を練ります。アツァリを脅して戦艦カルハリアスを譲り受けます。そしてスキロスの書記官であったイティアに求婚します。あまりにそっけない結婚の申し込みにイティアもドン引きです。
個人的にはなんだかこのイティアがとても気になります。
最初スキロスの書記官としての登場から結構気に入っていたんですが、チャクロも泥クジラの記録係ですし、同じ文字にかかわる帝国側の人物として今後のキーパーソンになるのではないでしょうか。
ギンシュ団長姉さん
ギンシュ団長姉さん、管理人はとても好き(笑)。もともと自警団にいてスキロス突撃隊にも選ばれていました。シュアンが自警団団長をやめる時にギンシュに団長を譲りました。天然で明るくて前向きです。チャクロのことを弟のようにかわいがります。
航海で泥クジラは犠牲者を出しながらもロハリトの国にたどり着きます。
9巻
アモンロギアの領主ダクティラ
ロハリトの国はアモンロギア。それを統べるのはダクティラです。ロハリトはダクティラの四男です。ダクティラは領主として泥クジラを取り上げ、印たちを兵士として使おうとします。ロハリトは自分を救ってくれた泥クジラの無印たちと、父であるダクティラとの間で揺れます。
チャクロ、岐路に立つ
アモンロギアは無印たちを人質にします。そして印たちに兵士になるように言い渡します。猶予はたったの3日間。もともと泥クジラでは無印がルールを決め、印がそれに従っていたので、印たちは迷うばかりでどうしたらいいかわかりません。
リコス、皆との別れ
リコスは帝国の兵士で、泥クジラに助けられ、そしてアモンロギアに泥クジラがたどり着いたとき、どこにも居場所がありませんでした。それでも泥クジラのために何かできることがないか考えていたリコスは、無印たちが捕らえられたときに泥クジラを離れ一人で救出に行きます。
10巻
泥クジラ vs 帝国軍オルカ vs アモンロギア
オルカはふたたび泥クジラを追うために軍団を手に入れました。アモンロギアに攻め込むオルカ。しかし今回の彼の使命はそれだけではない様子です。戦いの最中に戦艦を降り、リョダリを連れてアモンロギアの内部に侵入します。
リコスとオルカ
オルカはリコスの兄です。そしてつねに泥クジラを狙い、殲滅しようとしています。オルカが泥クジラに固執するには訳がありそうです。
オルカは皇帝陛下の魂形アンスロポスを手中に入れようとしています。一方、4巻でオルカが乗っていた戦艦ヌース・スキロスを沈めたときチャクロはアンスロボスの骨、コカロを得ます。ん?同じアンスロポスという名前ですね。泥クジラにネリと一緒にいるコカロはもともと皇帝陛下のアンスロポスの一部だったのでしょうか?
リコスは無印を見つけようと、アモンロギアの戦闘の中をさまよいます。偶然、兄であるオルカを見つけます。泥クジラを殲滅しようとする兄を殺してでも止めたいと思っています。
チャクロとオルカ
リコスが兄オルカを見失った後、チャクロはオルカを見つけます。泥クジラの仲間たちを大勢虐殺した司令官オルカ。でもリコスと血が繋がった兄であり、リコスと似ていて、そしてオルカが仲間に優しいほほえみを浮かべているのを見て激しく動揺します。
というわけで、駆け足で10巻紹介させてもらいました。本当にとてつもないお話です! 『クジラの子らは砂上に歌う』は本当に知る人ぞ知るという作品だと思いますが、繰り返し読んで、読めば読むほどいろいろなことがわかり、新しい巻がでると以前の謎が解けたり、逆に謎が深まったりします。
ヌースやソティラス、そして昔の泥クジラの歴史は割愛しましたが、それらの話が重なり合ってタペストリーのような素晴らしい物語を作り上げています。
今回のアニメ化でもっともっと多くの人に注目されてほしいです。リコスとチャクロは一体どうなってしまうんでしょう?リコスの兄であるオルカの野望、オウニやシュアンはなぜ呪われているのか?多くの謎を秘めながら物語は進んでいきます。ものすごいオススメです!!
(1)
(2)舞台『クジラの子らは砂上に歌う』2018年1月再演決定!
(3)公式ファンブック
ファンブック、かわいすぎ!すごい良いですよ!!
梅田阿比短編集
<関連記事>
kaigyou-turezure.hatenablog.jp
(4)梅田阿比先生HP
ご参考になりましたら幸いです。