勤務医開業つれづれ日記・3

「このマンガがすごい!2021」参加してます。あふれる”好き”を形に。マンガ感想とか書評を中心にしたブログです。

【感想】『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』借金玉 “日本一意識低い”自己啓発書、これはものすごい本出ました!【ライフハック】追記:借金玉先生からお返事いただきました!

(2018.07.04更新)

 

 

 

はじめに 

最近、本を読んでいて続々と当たり本が出ていますのでご紹介していきたいと思います。

 

『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』は読んでいて本当にしびれました。“日本一意識低い”自己啓発書という素晴らしい本でした!

 

 

 

読んだらいい人

タイトルには『発達障害……』とありますが、発達障害がない人にもぜひ読んでほしい本です。世の中の仕組みになんとなくなじめない、生きづらいと思っている、意識高い系の人についていけない、そんな人の胸に響くに違いありません。

 

この本の特徴

作者の借金玉(すごいペンネームだ……)さんはADHDとASDを合併しているようです。いままで発達障害の患者さん本人が書いたライフハック本っていうのはなかったと思います。今までは医学的な観点からのアドバイスがメインでした。患者さん本人の肉声が聞けるだけでも希少価値です。

 

しかも借金玉さんの分析が大変面白いです。とにかくライフハックの本としては破格の本です。ADHDの多動型そのままでめちゃくちゃです。「自分を変えるな」「すべての会社は『部族』」「茶番センサー」とユニークなネーミングと独特の視点が素晴らしい。机に神棚をつくるのには笑ってしまいました。

 

他にも人間関係には「見えない通貨」があり、ワイシャツ30本とかものや道具の使い方から、薬物依存、自殺やうつからの回復と、ものすごい深さと広さを持った本です。

 

ラスト前の30章の、自分を根拠なく肯定するには他人を根拠なく肯定する、という考えは本当に大事です。この一文読むためだけでもこの本を読んでいいと思います。

 

実は日本という”部族”への対応

本書を読んで、管理人が勝手に思っていることを書いてしまいます。

 

本書の面白さの感覚は構造主義のレヴィ・ストロースに似ているかもしれません。構造主義は実存主義をぶっ壊した考え方です。サルトルの実存主義が「未開」「野生」な社会が「低開発」「発展途上」を意味していたのに対して、レヴィ・ストロースは構造的な人間社会としての普遍性を見つけて、未開な社会にも社会構造を見つけ優劣をつけることは意味がないと説いています。

 

借金玉さんの理論展開も、現代の日本社会は「部族社会」であることを看破しています。発達障害の人の方が“理論的、西洋的な視点”で日本社会を“部族”とみなしている、と考えているように思えます。発達障害の方が西洋的で、日本の会社や社会が「未開の部族」だと仮定してみましょう。

 

 

ごくごく簡単にいうと”未開の民族”について、

サルトル → 野蛮

レヴィ → ちゃんとルールがあるよ

と言っています。

 

それと同じ構図で”日本の会社”について、

発達障害の人 → 日本の会社は野蛮、つきあってられない

借金玉→ 日本の会社も実は、ちゃんとルールあるよ

だから日本の会社という部族の野蛮なルールも覚えようぜ、って言っているのだと思います。

 

 

日本では会社という「部族」に受け入れられることこそ最重要です。興味がないことにはスイッチが切れてしまう理性的な発達障害の方が発動する「茶番センサー」は「部族」には不必要であります。うつが終わり、部族に受け入れられるかどうか不安なまま「街に戻る=部族に戻る」そんなタイミングこそ危ないことを指摘しています。

 

”部族”を演じられない人へ

作者のいう「目に見えない通貨」は、レヴィ・ストロースのいうところの「女性と婚姻」での「本当に欲しいものは他人から与えられることによってしか得られない」ということに対応するとおもいます。

 

「言葉のキャッチボール」におけるルール、という改めて言葉にして言う必要がないことを「目に見えない通貨」を仮定して明文にしてもらったことで、理論的かつ空気が読めない発達障害の人にもルールが存在していることがわかります。

 

さらには定型発達の人たちにも今まで演じてきた「部族」の暗黙のルールが改めてわかるはずです。この本はレヴィ・ストロースが看破したように「部族」を演じられなかった人への、日本という部族の「ルール教本」あるいは劇の「脚本」となるはずです。

 

まとめ

まずは自分が「大人の発達障害なのでは」と思い悩んでいる人は絶対に読んだ方がいいです。生きるための知恵が満載です。

 

次に自分のことは発達障害とは思わないけど、今の世の中は生きづらいと感じている人も手に取ることを強くお勧めします。なぜなら日本の会社という「部族」が一体どんなローカルルールで判断しているのかわかるはずです。

 

さらに殺伐としたサバイバルをやっていると自覚している人は、早く本書を手に取ってください。勝っている時はいいですけど、負けた時に生きる方向を見失います。無条件に自分を許す、そして他人を許す。存在自体を正当化するために必要な本です。

 

すごいお勧めの一冊でした。

 

 

追記:

借金玉先生からお返事いただけました。サルトルとレヴィの比喩が的外れじゃなくて一安心。ありがとうございます!

 

 

 

 

 

 

 

 

<哲学関係・関連記事> 

■「寝ながら学べる構造主義」 - 勤務医 開業つれづれ日記・2

■構造主義とはなんぞや?「言説の領界」 ミシェル フーコー 新訳出ました! - 勤務医 開業つれづれ日記・2

■哲学オススメ!「読まずに死ねない哲学名著50冊」「史上最強の哲学入門」「反哲学入門」 - 勤務医 開業つれづれ日記・2

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

Copyright © 2016 kaigyou-turezure All Rights Reserved.