【感想】『テンジュの国(2)』泉一聞 (著) 18世紀チベット 異国からきた婚約者との心温まるストーリー【マンガ感想・レビュー】
『テンジュの国(2)』出ました。
18世紀チベットを舞台にした心温まるストーリーです。とてもすばらしい作品です。
かなりオススメの一冊です。
目次
- カン・シバ
- モシ・ラティ
- ラティのカワイすぎる問題発生中
- それでも涙が……
- じいちゃんにからかわれて
- リンツェン・ラモ
- デレク・カンド(父)
- ニマ・ドルカル(母)
- ペマ・ケルサン(妹)
- チベット豆知識
- 管理人の思いつき関連漫画
- まとめ
13歳の医師見習いのカン・シバのところに婚約者が来ます。異国から来た婚約者はラティ。
ラティは異民族ですから頼れる人はいません。そしてカン・シバは薬草一直線で、女の子のことなんて全然取り扱いが分かっていません。お互いに知らない者同士ですが、ふたりはゆっくりと心ひかれていきます。
カン・シバ
(『テンジュの国』1巻より)
カン・シバは13歳。お父さんが医師で、自分は医師見習いです。そして無類の薬草好きです。全然女の子に興味がなくて草ばっかりいじっているタイプです。
カン・シバ自身が知らないうちに婚約が決められていました。しかも婚約者がかわいいとか、役得にもほどがあります。
モシ・ラティ
モシ・ラティは異民族の婚約者です。婚約が決まってから言葉が違うので、言葉も勉強して覚えているし、優しくて努力家です。
しかも、かわいい。
かわいくて、努力家で健気。そして周りには知っている人がいない異民族の結婚で、頼れる人がカン・シバのみという状況です。つまり、いい子でさみししがりやで主人公に頼りっきりとヒロインとしては最強です。
ラティのカワイすぎる問題発生中
(『テンジュの国』1巻より)
読めば読むほどに、ラティがカワイイ。このカワイさはかなり強力です。容姿がカワイイだけじゃなくて、ラティちゃんの全ての努力のベクトルがカン・シバくん一人に向かっているからなんですよね。
それでも涙が……
(『テンジュの国』1巻より)
明るく振舞っているラティですが、ふと表情がくもってしまいます。どうしたらいいかわからないカン・シバですが、二人はぎこちなくゆっくりと話をしていきます。原因はラティちゃんのホームシックです。
明るく健気に頑張っている女の子が突然見せる涙も強力です。異文化に一人だけで放り込まれて、カン・シバだけを頼りに頑張っているって本当に大変ですよね。
じいちゃんにからかわれて
(『テンジュの国』2巻より)
俺の奥さんみたく昔はかわいくても、女の子は変わっちゃうからね、とからかわれるカン・シバ。思わずラティちゃんに聞いてしまいます。
(『テンジュの国』2巻より)
わかりません!!
女心のわからないキング・オブ・唐変木のカン・シバくん。一人相撲でラティちゃんは真っ赤っかです。カン・シバは脳内ラブラブな言動がダダ漏れ状態です。カン・シバの発言を分解してみましょう。
今はカワイイ
→ 結婚する
→ 小言ばっかりに変わる
→「そうなるんですか!?」=「変わっちゃうんですか!?」
→ 変わらないでほしい(反語表現)
ようやく手をつないだぐらいのウブウブ婚約者を前に、まず最初にいきなり”今カワイイ”っていう前提の話をするカン・シバの危なっかしさったらありゃしません。下手したら敗着の一手です。
次に結婚して、ずっと一緒に過ごして、最後に小言ばっかりになる、それが心配。って、どんだけ先の心配よ。心配しすぎだろ。
つまりカン・シバは、
「今ラティはカワイイ。そして絶対結婚する。そして変わらないでほしいなぁ」
っていうことを文学的反語的に表現してしまっているわけです。
作者のもうお前ら結婚しろという願望と、そうそうお前ら簡単には結婚させないという矛盾した心境を読み取ることが大切ですね。
2巻のラティは、1巻よりさらに強力な恥じらいっぷりを展開してます。見ている方もニヤニヤしっぱなしです。しかもまだ二人は手をつないだだけですから、ラティはまだあと2回変身を残しています(予想)。
はあ、もうお前ら結婚しろよ。
リンツェン・ラモ
(『テンジュの国』2巻より)
2巻でようやく登場のヒロイン対抗馬がいきなり風呂嫌いの汚ギャル(死語)かよ!
カン・シバの幼馴染のリンツェンの登場です。子供の頃から一緒に遊んでいた異性の登場です。恋愛におけるお約束的な試練です。これ試験に出るレベルの公式です。
ヒロインの前で主人公と幼馴染の時のままで接して、いちゃつきのあまりヒロインがいろいろと想像してダメージ受けるというアレです。
あだち充先生とか高橋留美子先生ならラストの伏線になるような、もめにもめまくる設定です。今回はリンツェンちゃんがラティのことを考えられるいい子なので、二人の関係を察して問題解決しました。
デレク・カンド(父)
(『テンジュの国』1巻より)
お父さんが医師でカン・シバが医師見習いなんで、当時は職業は世襲制なんでしょうか。医師であるため、お母さんよりもお父さんの登場出番が多いです。父であり、仕事ではお師匠さんですが、年上のお兄さんみたいな雰囲気です。
ニマ・ドルカル(母)
(『テンジュの国』1巻より)
お母さんです。「乙嫁語り」 だったら女性同士のキャッキャウフフが大量発生しますが、『テンジュの国』ではまだ出番少なめです。
ペマ・ケルサン(妹)
(『テンジュの国』1巻より)
要所要所で出てくるのがペマちゃん。天真爛漫でトラブルメーカー、でもこれはいい子だな。いろいろとお馬鹿をやって物語を引っ張ってくれます。ペマちゃんは大きくなったら美人さんになるとみた(独断)。
チベット豆知識
(『テンジュの国』1巻より)
兄ちゃんがカン・シバで、妹がペマ・ケルサン、お父さんがデレク・カンドです。家族なのにみんな名前バラバラじゃん。
チベットの”姓名”ってどうなっているの?という疑問が湧いてきます。チベット族は姓名のうち名前が二つあって苗字がないのです。カン・シバの2つで名前で、苗字はないということなんです。ですから血族でも共通の苗字がないのですね。
こんないろいろなチベット豆知識がいっぱい各巻末に載っています。
管理人の思いつき関連漫画
『どこか遠くの話をしよう』
『テンジュの国』は、須藤真澄さんの『どこか遠くの話をしよう』を思い出させます。『テンジュの国』の設定はチベットですが、須藤さんの作品は南米が舞台です。
『神戸在住』
泉一聞先生の子供の描き方が、木村紺先生の『神戸在住』に雰囲気が似ている印象です。特に妹のペマちゃんとか、似ているように思えます。『神戸在住』にあふれる日常生活、とくに高齢者や子供達の描き方がすきなんです。
まとめ
『テンジュの国(2)』はすごい面白かったです。18世紀チベットの雰囲気がよく出ています。そしてカン・シバの薬草の知識もすごいです。漢方薬やチベット仏教の知識も豊富。見知らぬチベットを連想させてくれます。
それよりもなによりも、ラティがカワイイ。この一言につきます。ヒロインとしては異国に一人で来ている健気なカワイイ子ですから、もうNHKドラマ的な共感率です。1巻もかわいかったですが、2巻の恥じらいっぷりったらありゃしません。
次の3巻ではカン・シバの対抗馬も出てくる予定です。このまま18世紀チベットで恋愛昼ドラ展開になるのか?いやいや、まさかね。最終的に二人が幸せになってくれるといいですね。
かなりオススメの一冊でした。話題になってくれるといいなぁ。
ご参考になりましたら幸いです。
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