勤務医開業つれづれ日記・3

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【感想】『あんたさぁ、』ルネッサンス吉田 (著) 『茜新地花屋散華』を思い出しながら読むルネッサンス吉田【マンガ感想・レビュー】

ルネッサンス吉田先生の『あんたさぁ、』出ました!

 

姉と弟は二人暮らし。

姉は双極性障害(躁うつ病)で漫画家です。メンタルの浮き沈みがはげしく、体を売りながら漫画を描いています。弟は一般の会社勤めをしています。二人は静かに生きていこうとします。昔の傷を隠しながら……。 

 

自分の心に響く作品でした。『茜新地花屋散華』から9年。『愛を喰らえ!!』で2014年に第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞しています。今回もハートにくるような作品です。

 

純文学に近いような、自分で読み解いていくような作品です。かなりマニアックな部類に入る作品だと思いますが、はまったらすごいいい作品だと思います。個人的にはかなりオススメでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電球

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ルネッサンス吉田先生を読むときのキーワードのひとつは切れた電球。決して大きな動きではありませんが、作中で切れた電球をとおして周りとの人間関係がにじみ出してきます。

 

双極性障害パターン

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双極性障害とは躁うつ病です。躁うつ病とはうつ病の時はおちこみ、躁病のときはハイテンションになってしまいます。その両極端な状態を繰り返すことを双極性障害といいます。作中でもお姉さんは躁状態とうつ状態を繰り返しています。つらいですよね。詳しくは厚生労働省のHPを参考にしてください。

 

厚生労働省HP

双極性障害(躁うつ病)|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省

 

私だ。

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お姉さんは夢でボートを漕いでいます。ボートの上から泣き叫んでいる子供が見えます。

 

喉いっぱいに泣き叫んでいる子どもは、私だ。

 

一つ前のシーンでは男の子が泣いています。それは小さい頃の弟なんでしょう。小さい自分も、小さい弟も岸辺で泣いています。最終話でもボートの話が出てきます。

 

 

お姉ちゃん

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第二話。姉は弟のことは”幹生”って呼びます。昔も今も変わりません。弟は小さい頃、姉のことを”お姉ちゃん”と読んでいました。一緒に手をつないで歩いていますね。

 

 

ねーちゃん

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大きくなって、おばあちゃんの家を出てから弟は姉を”ねーちゃん”と呼びます。第一話が姉視点で、第五話が弟視点で家を出てからの再会が描かれています。

 

あんたさぁ、

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そして成人して、弟が社会人になってから姉のことを「あんた」と呼ぶようになります。弟の姉の呼び方は年齢とともに徐々に変わっていきます。

 

お姉ちゃん → ねえちゃん → あんた

 

これがタイトルで第一話の「あんたさぁ、」につながります。弟は成長して徐々に自分の呼び方を変えています。でも姉はずっと今も昔も「幹生」のままです。

 

三話にちらっと「葉子だから葉っぱなの?」とあるので姉の名前は葉子です。その後も別の男性との会話では葉子さん、と呼ばれます。

 

 

 

 

俺はいいのか?

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俺はいいのか?

 

弟は一緒に暮らしている姉のことに深く踏み込みません。いつも見守っていて、時々すこし傷つけ合いながら、決して心の深いところにはお互いに触れないようにしています。

 

祈れ呪うな

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第八話「祈れ呪うな」、心に響きました。どうしても弟は我慢できずに同僚を殴ります。殴ってでも止めなくてはいけない時に殴れず、殴ってはいけない時に殴る。弟は自分を責めますが、姉はやさしく弟を肯定します。

 

第二話で子どものころ手をつないでいたように、姉と弟は手をつなぎます。そして弟は、

 

姉と俺はもう手を繋ぐことはないと思う。

 

と思います。手をつなぐなんて、もう二度とない。うわぁ、切ない。

だれかれとなく肉体関係を持ち、長時間眠ったと思ったら全く眠らなくなったり、一人では日常生活もうまくできない姉。でも姉のことを守るべき時に自分が守れなかった。それでも自分のことを姉はやさしく認めてくれます。

 

 

抱きしめるよ。

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最終話「現(うつつ)」もずしりと心にきました。

昔の心に傷がある人には、深い部分でいまでも泣いている幼い自分がいるに違いありません。姉も弟も、過去に傷を負っています。

 

姉の心象風景では、いつもボートに乗っています。そして岸には小さな子供が泣いています。ボートの上からはどうすることもできません。でも最終話で姉は言います。

 

「私、子どもたちを、抱きしめるよ」

 

ボートを岸につけ、陸に上がって、子どもたちのそばにずっといる、と言います。なんかもう、読んでいて涙出ました。

 

昔の自分が笑顔になるまで一緒にいてあげるって素晴らしいですよね。多くの人が、自分は傷ついているのがわかるけど、慰めるすべがありません。今の自分が、昔の自分のことを抱きしめて、笑顔になるまでずっとそばにいる、そう思えることって素晴らしいことです。

 

 

 

 

 

茜新地花屋散華

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ルネッサンス吉田先生の初単行本が『茜新地花屋散華』です。どうです?このインパクトは。私はすっかりやられてしまいました。

 

電球

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時々出てくる電球切れの電灯。メガネをかけているのは十三さん。

 

 

 

深沢くん 

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花を売っている深沢くんは色がとっても白いです。もちろん男性。十三さんのことが好き。そして埴谷くんと良かったり悪かったり、まあいろいろです。

 

ルネッサンス吉田先生の作品ではこんなかんじの超長文や、ながーい英文や、剣道部とかも特徴です。あ?そういえば『あんたさぁ、』では超長文と英文はありましたが、剣道はなかったですね。

 

 

茜新地花屋散華+余禄

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+余禄は『茜新地花屋散華』の短編集です。Kindleで100円くらいなので、気に入った方はぜひ買いましょう。こちらに『茜新地花屋散華』のあとがきも書いてあります。

 

 

 

まとめ 

初単行本の『茜新地花屋散華』が2009年。

精神的に病んでいるような、あの救いようがない感じ、強烈な印象をのこした作品でした。今年でそれから9年。昨年2017年の『BLOOMS SCREAMING KISS ME KISS ME KISS ME』は『茜新地花屋散華』とはうって変わって、恋愛依存症な高校男子のベタ甘なBL作品になっておりました。

 

いつも心をざわつかせるルネッサンス吉田先生。今回の新刊は『BLOOMS SCREAMING...』と比べて『茜新地花屋散華』よりな作品でした。でも昔とは違う。先生は最終話で、

 

”同じところを延々ぐるぐるとまわっている” 

 

と描いています。ルネッサンス吉田先生の心境なのかもしれませんが、読者としてはボートを浮かべている水が、ずっと水が同じ水でないのと同じように少しずつ変わっていているように思えます。

 

「生きなきゃ だから 漫画……描けなくなっても」

 

姉はそうつぶやきます。もしも姉が先生の心を代弁しているのなら、もちろん私個人としてはルネッサンス吉田先生に生きていて欲しい。でも可能なら、また新作を届けて欲しい。

 

決して同じところを回っているわけではありません。『茜新地花屋散華』から『愛を喰らえ!!』、そして今回の『あんたさぁ、』と。水は変わり、川は流れ、そして季節は巡ってもおなじ時間は二度とはきません。この作品でも姉も弟も問題は消えていませんが、希望というか救いはあると思うのです。ルネッサンス吉田先生の作品に共通する、真っ当ではないけど小さな希望みたいな光がみえるのがとても好きです。

 

 

 

ルネッサンス吉田先生が受賞した2014年の第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞は他に、「プリンセスメゾン」の池辺葵先生と「ちーちゃんはちょっと足りない」 阿部共実先生です。 両先生と同じぐらいルネッサンス吉田先生には魅力があると思います。まあメンタルいってたり、小説っぽかったり、毒っ気が強かったり、難解だったり、BLだったり、雰囲気暗いかもしれませんが、もっともっと知られていい作家さんだと思っています。

 

知らない人も多いかと思いますが、興味があるならかなりオススメです。ルネッサンス吉田先生の強烈な毒っ気にさらされてみてください。

 

 

 

 

 

 

愛しあえないから、弟が好き。大好き。 身体を売り、漫画を描き、日々を暮らしている姉。 毎朝勤めに出て、淡々と、日々を暮らしている弟。 姉は、口には出せぬ想いを抱えて。 弟は、口には出せぬ過去を抱えて。 ひとつ屋根の下で暮らす。 ふたりだけを乗せて、凪いだ世界をたゆたう、舟。 しかし、その舟を激しく揺らしたのは―― 第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作家が描く、情念と諦念の物語。 

 

遊廓の立ち並ぶ架空の歓楽街『茜新地』を舞台に、開高、深沢、埴谷という三者三様の思惑と恋情が渦巻く物語。眩暈がするほどの業とエロスを描いた、作者渾身の壮絶な人間ドラマがついに登場! 

 

茜新地花屋散華 +余録 (EDGE COMIX) Kindle版 ルネッサンス吉田 (著) 

遊郭の立ち並ぶ架空の町、茜新地を舞台に開高、深沢、埴谷という三者三様の人間の恋情とエロスの業を描いた壮絶なドラマ。『茜新地花屋散華』電子版未収録の「余録」と「あとがき」を完全収録。(※非BL(男女)描写が含まれます。 ) 

 

◆中村明日美子推薦! 「尖ってつっけんどんで痛々しい。 臆病で繊細であたたかくてやさしい。 それが吉田さんの漫画(ことば)。」 ――男が嫌いだ、心の底から。 ◆男が嫌い。家族が憎い。自分自身を傷つけたい。でも心の底では、愛したいと願っている。 この物語は、古い花街で風俗店の店長として生きる女・百花の傷と恢復の軌跡である。男に身体を犯され、性の対象とされることに憎悪を抱く彼女は、男を男に売ることに歪んだ悦びを覚えている。女三代を絡めとる深い業に、終わりはあるのか。 画面を埋め尽くすモノローグと、執拗に繰り返される強迫的な会話――マンガ界の異端児・ルネッサンス吉田が過剰な言葉をもって描き出す、絶望とロマンス、そして救済のすべて。 

 

気鋭・ルネッサンス吉田の新境地!! 愛されたくて仕方ない、優しくされたら好きになっちゃう、好きになったらシたくなっちゃう!優しくしてくれたあなたを大好きになったから、キスしてハグして僕を愛して!! そんな極度の愛されたがり愛したがり男子高生・藍が出会ったのは、懐が深くて優しく受け入れてくれるお寺の息子・真。ルネッサンス吉田 史上、最も甘い!? 最もやわらかなラブストーリー! 

 

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。