勤務医開業つれづれ日記・3

「このマンガがすごい!2021」参加してます。あふれる”好き”を形に。マンガ感想とか書評を中心にしたブログです。

【感想】『ショート・ピース(1)』 小林有吾 (著) 人の心を揺さぶる情熱。「アオアシ」作者がおくる映画製作の名品【マンガ感想・レビュー】

「アオアシ」の小林有吾先生の「ショート・ピース」1巻出ました!

 

いま「アオアシ」で絶好調の小林先生が映画作成の漫画を出しました。これがまた、すごいハートにくる作品です。「アオアシ」ファンなら必見!逆にアオアシ読んでない人なら『ショート・ピース』から入るのもいいと思います。思わず引き込まれるいい作品です。

 

「アオアシ」が未完成の主人公なら『ショート・ピース』は完成された天才キヨハルの映画撮影に関するお話です。映画製作に人を巻き込み、人の才能を見抜き、そして導くキヨハル。1巻には3つのお話が入っています。そのどれもがドライブ感があって素晴らしいです。

 

小林先生が描こうとしているのは究極には”人”です。何を当たり前のことを、と思うかもしれませんが「人間への興味がすごい」と言わせる小林先生が一番そのことを実感しているのではないでしょうか。キヨハルに巻き込まれた人材は、自分の一番知りたくなくて、そして一番本質のところを突かれます。狼狽し、拒絶し、そして苦しみながら自分の壁を乗り越えようとします。

 

小林先生の熱い熱量に支えられた『ショート・ピース』はすごい名作になる匂いがプンプンします。ものすごいポテンシャルが秘められた作品です。かなりオススメでした!

 

 

 

キヨハル 

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映画界の登竜門の賞を最年少で受賞した高校生・キヨハル。本名は恩田清春。その作品は見るものの心を捕まえ、うならせます。キヨハルは映画のためならどんなことでもやります。そのため周りの人には非常識に見えたり、とんでもない失礼な人間に見えたりします。

 

伏線をはり、最後に大どんでん返しをする作風らしいのですが作品は数カットのみ。実はキヨハルの作った映画も見てみたいです。小林先生、実は映画自体の内容も考えてるんじゃないですか!?

 

 

月子

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バンドSHORT PEACEのボーカル、安西月子は「武器よさらば」という曲のPV作成をキヨハルに頼みます。高校生で映画の賞をとったというだけでキヨハルのことを知らずに依頼しますが、キヨハルやスタッフの熱意にほだされます。

 

しかしバンドの方向性で事務所の社長と対立してしまします。社長と決定的にケンカ別れてしてしまい、バンドが日の目を見ることがなくなってしまいました。しかしキヨハルは作ったPVをネットにあげます。

 

この作品なかなかいいですよ。1話完結ですが、試し読みで全部読むことができます。この作品を見て気になるようなら絶対当たりです。2話以降はさらにすごいですから!

 

 

 

足立ひかり

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子役で一世を風靡した足立ひかりは、仕事がなくなって”通用しなくなって”6年前に引退してから一般人になっています。

 

足立ひかりの”闇”の部分は演技力です。子役なのにあまりに頭が良すぎて、いろいろな役者のコピーペーストで演技をしていることをキヨハルは見抜きます。みんなが絶賛する演技に対してダメ出しをするキヨハル。その意味をみんなはわからなくても、ひかり本人だけが理解します。

 

そして彼女は何かを見つけることができたのでしょうか?キヨハルは彼女から何かを引き出すことができたのでしょうか?

 

 

服部安彦

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父親は不慮の事故で亡くなった世界的な有名カメラマン。安彦くんは家族をかえりみなかった父親のことを恨んでいます。安彦くんが選んだのは文学の道。地方の文学賞を受賞しますが、カメラマンとしての素質をキヨハルに見抜かれて映画作りにさそわれます。

 

彼の”闇”の部分は父親です。父親が一生を捧げたカメラから遠ざかろうとする安彦くんを無神経に引っ張り出すキヨハル。カメラなんて大したことない、そんなことを証明しようと安彦くんは技巧に走り、キヨハルにダメ出しをされます。

 

 

アドリブに耐えられるか 

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徐々に女優として覚醒しつつあるひかりは脚本を自分で消化し、アドリブを入れてきます。一度きりの即興に対して、カメラに関してはズブの素人である安彦くんはついていくことができるでしょうか。

 

 

アオアシ&ショート・ピース誕生秘話&まとめ 

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ラストのおまけマンガも12Pあります。小林先生のショート・ピースへの思い入れがあふれています。そしてアオアシが生まれたいきさつもあります。びっくりしましたね、小林先生がサッカーに関してはズブの素人だということに。

 

いろいろな出会いがあって「アオアシ」という作品が生まれ、そして小林先生の執念と情熱がこの『ショート・ピース』を世に送り出したのですね。決して小林先生が一人では生み出せなかった、でも小林先生でなければこれらの作品はこの世に存在しなかったということです。

 

小林先生が人に対してどうやって考え、どんなことを思っているか、何を伝えたいのか。執念と情熱があふれだして来るようです。素晴らしい作品でした。そして徐々にレヴェルの上の映画を撮る条件がそろってきています。これからの展開にさらに期待できそうです。名作になりそうな予感がすごいします。かなりオススメの一冊でした!

 

 

 <試し読み>1話がまるまる読めます。1話は短編として完結していますのでぜひおすすすめです。

comic.pixiv.net

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。