【感想】『星の砂 雨野さやか短編集』雨野さやか (著) 切なくて、別れてもきっときみの名前を忘れない。【マンガ感想・レビュー】追記:雨野さやか先生からお返事いただきました!
『星の砂 雨野さやか短編集』でました!
いやぁ、感動して泣いてしまいました。特に表題作の「星の砂」が素晴らしいです。おばけになった”りんご”ちゃんと小説家のハルとの心温まる作品です。雨野さやか先生のお人柄が出てくるような作品でした。
収録作品は「星の砂」「瞬く間-ハイライト-」「立夏の首」そして書き下ろしで「星の砂」の番外編「きみのうみ」です。この「きみのうみ」がまたいいんだな。書いていてまた泣けて来た。こういう作品にめぐり合うと漫画読んでいてよかったな、って思います。
この短編集だけですごいのですが、雨野さやか先生は初めての単行本の出版で、しかも『なつやすみの友』と同時発売ですからすごいx2です。『なつやすみの友』は後半の怒涛の展開もすごいです。この絵柄で、そうくるのかよ!個人的には絵柄もすごい好みで上手いのですが、お話がメチャクチャうまくて新人とは思えません。とんでもない新人のストーリーテラーが出て来ました。新人ということを抜きにしてもオススメの作品でした。
小説家のハルが「いわくつき」の新居で見つけたのは、押し入れの中、ひとり涙をこぼす少女だった――。表題作「星の砂」ほか、「瞬く間-ハイライト-」「立夏の首」を収録。忘れえぬ出会いを詰め込んだ、心温まる短編集。
星の砂
りんごちゃん
泣き声が聞こえる、といういわく付きの物件には押入れのなかに女の子がいました。見つけたハルは”りんご”ちゃんとよぶことにしました。
ハル
本名は中川遥。小説家です。いわく付きの物件に入って”りんご”ちゃんを見つけました。他の人にはりんごちゃんは見えません。りんごちゃんもそのことを気にしていますが、ハルはあまり気にせずりんごちゃんの服を買ってあげたりします。
もー、とにかくりんごちゃんがかわいい。胸がぎゅっと締め付けられるような感じです。子供なのに我慢したり、つらいことを耐えたりしているような表情がもうカワイソウでなりません。
前編は本当にほのぼのとしたいい作品だな、という感じです。そして後編にもう涙腺ガツンとやられてしまいます。
前編で海に行けるので喜び表現ででんぐり返しして、後編ではハルがりんごちゃんのために一冊だけ作ってくれた本をもらって、でんぐり返しします。それだけでもかわいいのに、あとで「ありがとう ハル」っていう表情が最高にいいです。
なんでもない
ハルはりんごちゃんのためにいろいろとしてくれます。本を作ったり、海に連れていったり。そして”りんご”ちゃんが本当はどんな子だったのかを突き止めます。
なんでもない
もうねむたいでしょ?
このセリフ、本当に胸に刺さりまくります。一つ一つのシーンが積み重なるように物語を伝えていきます。子供なのに大人に気を使って、言いたいことも言わずに、いい子を演じているような子供ってズキンと心に来ます。りんごちゃんはもっと、ハルに甘えて言いたいこともいっぱい言えばよかったのに……。きっとお母さんにも甘えられなかったんでしょうね。
おやすみなさい
自分のために頑張ってきたハルと一緒に布団で横になります。疲れたハルが眠りにつきます。りんごちゃんはいろいろと感じて最後に言うんです。
おやすみなさい
りんごちゃんはきっとこの夜に自分でどうなるかもわかっているはず。りんごちゃんはきっと話をしたいこともいっぱいあっただろうに、おやすみなさい、ってだけハルにいうのです。胸にはハルが作ってくれたこの世で一冊だけの本を大事そうに抱えて。目にはいっぱいに涙をためたりんごちゃんはハルが寝るのを見守ります。涙がちょっぴり流れ落ちているのを見て、もうここで管理人は泣いたね(1回目)。
ハルが目をさますと枕元にはりんごちゃんが残してくれたメッセージがあります。りんごの後ろを見てまた管理人は泣くわけです(2回目)。そしてりんごちゃんが割ってしまったカップが届くわけですよで、さらに泣かされるですよ(3回目)。で、ハルの最後のセリフにドカンとやられてしまいます。
ひとつのうそもまぜることなく
前半までは、なんかいい話じゃね?ぐらいの感じなんですが、後半が怒涛の展開です。前編でやったうれしいでんぐりがえしを後編で本をもらってもう一度でんぐりがえしやったぐらいから、もうグイグイ来ました。気がついたら3段階ぐらい泣いていましたね。本当に、さみしく切ない別れでした。
「きみのうみ」
そして巻末の番外編「きのうのうみ」です。
ハルは小さい頃から本が好きで、社交的ではありませんでした。小さなころ、外で一人で本を読んでいるときに一人の女の子と出会います。設定では、りんごちゃんはハルと同じ年齢ですから、もしかしてりんごちゃんか?これまたホロリと来ますね。
まとめ
『星の砂 雨野さやか短編集』本当にいい作品でした!
自分的にはハートに響きすぎました。どストライクすぎて胸が痛い。ご紹介できなかった「瞬く間-ハイライト-」「立夏の首」の短編もとても好きです。「あとだし」とか、とってもいいですよね……。その中でもやはりずばぬけて「星の砂」がよかったです。
雨野さやか先生の作品は切ないです。
いくつかの特徴があると思うのですが、まず親子関係がとても大事です。何らかのかたちで親が無理をして、子供が頑張らなくてはいけません。こどもが無理をして笑顔を作ったり、おとなのために我慢したりするってほんとうに胸に響きますよね。でもこどもが頑張るっていうことは物語が始まるっていうことです。
名前がとても大事なのかもしれません。「星の砂」のりんごちゃんも名前がわかりません。『なつやすみの友』も男の子の名前がキーワードになります。。
登場人物は別れを経験しなくてはいけません。それはとてもつらいものです。でもつらく切ない別れが必要だって言うことをみんな知っています。知っているからこそ我慢して、切ない夜をみんな乗り越えていきます。
短編集でこんなにハートをわしづかみにされたのは須藤先生の『ミッドナイトブルー』以来かもしれません。
【感想】『ミッドナイトブルー』須藤 佑実 みんな、さよならを告げる間もなく去っていく……。すごく良くて、せつなくて、泣けた【ネタバレ漫画レビュー】 - 勤務医開業つれづれ日記・3
番外編の印象は優先生の『さよなら、またね』のおまけマンガのようです。あれは名作ですが、それに匹敵するレベルです。
【感想】『さよなら、またね。』優 がもの凄く良かった件【ネタバレ漫画レビュー】 - 勤務医開業つれづれ日記・3
そして完全に管理人の思い込みかもしれませんが雨野さやか先生、「パーム」シリーズが好きなんじゃないでしょうか? 「あるはずのない海」とかね。あと雰囲気としてはSFのハインラインですよね。ここらへんは読者の妄想なんですが。
ということで、語りつくせぬことはいっぱいありますが『星の砂 雨野さやか短編集』は素晴らしい作品でした。これからも雨野さやか先生の作品に期待したいと思います。切なくて感動するような作品を生み出すストーリーテラーだと思います。これからも応援したいと思います。オススメですね!
追記: 雨野さやか先生からお返事いただきました!ありがとうございます。これからも応援していきたいと思います。頑張ってください!!
コミックスをお読みいただけてとても嬉しいです・・・!ブログの方でもあたたかいご感想をいただき、本当に描いてよかったと思えました;;ありがとうございます。
— 雨野さやか (@ameno_sayaka) 2018年2月25日
並木鈴、25歳。会社の上司と不倫中。そんな鈴の元に現れたのは、上司と同じ苗字と琥珀色の髪を持つ少年・友だった。「5日間限定で友達にしてください」彼の正体、そして「宿題」とは――。誰よりも優しくてあたたかい、“不倫”と“家族”の物語。
ご参考になりましたら幸いです。