勤務医開業つれづれ日記・3

「このマンガがすごい!2021」参加してます。あふれる”好き”を形に。マンガ感想とか書評を中心にしたブログです。

【感想】『パレス・メイヂ 7』久世番子 (著) 帝と臣下の禁じられた恋の行方は……?感動の最終巻でした!【マンガ感想・レビュー】

 

『パレス・メイヂ』7巻、出ました!

いやー、感動の最終巻でしたね!本当にいい作品でした。少女帝彰子の侍従だった御園は5巻でその任を解かれます。つまりはクビにされちゃいました。それでもおそばを離れたくない御園は大震災の後、抜け殻のようになってしまいます。そして御園が出した答えは……?

 

それにしても身分違いの恋ってなんでこんなに燃えるんでしょうね。その点は百合もBLも同じかもしれませんが、皇族が題材だとさらにいろいろ配慮する点も多いと思います。そういう意味でも、なかなかに描く方は大変だと思います。でもそういう感じを出さずにさらりと描きあげる久世番子先生の実力がうかがわれます。『神は細部にやどるのよ』とか『暴れん坊本屋さん』のイメージしかなかったので『パレス・メイヂ』にはいい意味で久世先生のギャップがすごくて、やられました!

 

あと、歴史的な事実を知っておくとより楽しめるかと思いますので、多分ベースにあった昭和天皇の欧州訪問と虎ノ門事件についても簡単に書いておきます。 

 

久世番子先生、無事7巻完結おめでとうございます。心に残る素晴らしい作品でした。おすすめです! 

 

 

 

 

 

 

 

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(パレス・メイヂ5巻より)

 

5巻では大震災を経験し、いろいろな感情があふれ出します。陛下のお気持ちも、にぶい御園の気持ちも同じように衝撃を受けます。そして現実は二人を引き裂く事になります。御園は傷心のまま自分の居場所をパレスから失う事になるのです。

 

前の6巻は迷いの巻でした。

これで7巻完結、って知った時は正直ビックリしました。この感じだったら10巻以上行くかと思っていましたから。でも、ここで参考にしているのは多分大正です。大正は15年まで。大震災は大正12年ですからあと3年。そうか、あっという間ですね(実際はちがったけど)。

 

 

 

 

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陛下の元を離れ、東宮侍従として戻って来た御園を見て陛下もびっくり。

 

 

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これまた最終巻なのに濃い新キャラ出てきたな!

烏丸東宮侍従長です。なかなか厳しい人ではありますが、御園のいいところも未熟なところもよくわかっているタイプです。ただ、やっぱり皇族のわがままには振り回されているようで、最終話では鹿王院宮→鹿王院伯爵(結婚のため臣籍降下した)に無茶言われていました。

 

 

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鹿王院様と同行し、壺切りの御剣をもった御園は暴漢に撃たれ負傷します。すぐにもどります、といった帝との約束を果たせません。

 

 

大正時代の”虎ノ門事件”を参考にしているのではないかと思われます。

虎ノ門事件 - Wikipedia

大正12年12月に起きました。当時は関東大震災後の社会不安がありました。無政府主義者による犯行で、その責任を取って当時の内閣は総辞職しました。

 

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とうとうお忍びで陛下は御園のところに来てしまいます。陛下が臣下のところに行くのは危篤の時だけ、という習わしから寝ぼけた御園は自分が危篤なのかと思います。

 

 

 

 

あれから10年……

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その後、10年の月日が流れます。東宮殿下は初の欧州御外遊にいかれることになります。御園も一緒に半年の予定での御外遊です。逆にいうと、日本を半年離れるわけになるのです。いつのまにか御園のことを名前の”公頼”と呼ばれるようになります。でもまだ御園は赤面してしまいます。

 

大正期だと、大震災からここで10年はいるとつじつまが合わなくなりますが、あえて久世番子先生はこうしたのでしょう。東宮殿下の年齢を考えても、すぐに即位というわけにはいきませんからね。最初から先生の計算通りですね。

 

 

 

実際には皇太子裕仁親王が欧州をご訪問されております。

皇太子裕仁親王の欧州訪問 - Wikipedia

 お召し艦は戦艦香取、供奉艦で旗艦鹿島で、イギリス、フランス、ベルギー、オランダい、イタリアの各国をご訪問されました。大正10年3月から9月まででしたので、実際には虎ノ門事件の方が後になります。

 

 

そして御外遊出立です。御園は東宮殿下の計らいで、船上から陛下に手紙を書きます。自分の今までのパレスでの経験を書き始めた御園。書き始めはこうでした。

 

”私が宮殿(パレス)に上がったのは十四の春のことでございます”

 

 

 

いやー素晴らしいお話でした!

この一文は第1巻第1話のフレーズです。見事に第一巻につながりました。5巻まで読んだ時にはどうなることかと思いましたが、無事終わって本当にいい作品でした。

 

これでようやくベツハナ6月号の付録が読めます!いままでずっと最終話が載った雑誌を開かずにとっておきました。付録に対談などもあるそうで、今から楽しみです。

 

これね!

 

 

架空の世界のお話ではありますが、先帝の名前をとって宮殿の名前がパレス・メイヂですから、当然先帝が明治、今の舞台は大正、そしてこれから東宮殿下が昭和の元号で天皇に当たるかと思われます。

 

いろいろと制約もあった題材だと思いますが、本当に抑制があって、それでもなおあふれ出してくるそれぞれの人物の思いが描かれていて素晴らしい作品でした。久世番子先生、お疲れ様でした!

 

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。