【感想】『昭和天皇物語 1 』能條 純一 (著), 永福 一成 (著), 半藤 一利 (原著) 平成が終わる時、昭和を考える素晴らしい作品!【マンガ感想・レビュー】
2018年の漫画レビューは『昭和天皇物語 1 』ではじめたいと思います。
この作品はすごい!
半藤一利先生の「昭和史」を原作にして、能條純一先生の手で漫画化されました。12月にようやくキンドル化されましたので遅ればせながら読ませていただきました。宮内庁で刊行されている「昭和天皇実録」をもとに作品を作られていると思いますが、1巻は明治天皇が亡くなられて皇太子になるまでの明治から大正その時代を感じさせてくれる作品になっています。
もうすぐ平成も終わりを告げます。
いま私たちは確実に歴史の分岐点にいます。そのようなタイミングで第二次世界大戦と戦後という、嵐のような時代に翻弄されたながらも歴史を作り上げてきた昭和天皇の人生を改めて振り返る必要があるのではないでしょうか。半藤一利先生と能條純一先生が描き出すなんて、素晴らしすぎです。名作必然の作品ですね!
昭和天皇、ダグラス・マッカーサー第一回会見
「私は全責任を負います」
マッカーサー回顧
自らの命と引き換えに、自国民を救おうとした国王が……!!
オープニングから、昭和天皇とマッカーサーの第一回会見のシーンが取り上げられています。間違いなくここが歴史の分岐点の一つです。この会見を能條純一先生の作品で読むと、胸に込み上げるものがあります。
個人的には狂気のダグラス・マッカーサーの評価は日本でこそ積極的に、そして冷静に行われることが可能だと思っていますが、まあいつか機会があれば。
ここから話は明治にさかのぼります。
明治天皇
明治天皇は崩御されます。迪宮様(のちの昭和天皇)はまだ皇孫です。
乃木大将
明治天皇崩御の後、自刃します。夏目漱石「こころ」でも取り上げられている事件です。明治の時代に生きた多くの人に影響を及ぼした事件です。
足立たか
迪宮様(のちの昭和天皇)の養育係の足立たかは後に鈴木貫太郎と結婚されます。鈴木は終戦時の総理大臣であり、日本を終戦へと導く工作を行いました。
お印「若竹」
昭和天皇のお印「若竹」のエピソードも入っております。昭和天皇の若かりし頃の皇族であるための疎外感なども上手く描かれています。
明治天皇崩御の後、迪宮様は皇太子になられます。教育係は乃木大将から東郷平八郎にかわり、東宮御学問所総裁に就任します。
杉浦重剛 倫理・帝王学担当
東宮御学問所には当代一流の学者が選ばれましたが、皇太子教育の中心である倫理・帝王学の担当に選ばれたのが、ほとんど無名の一私立中学校長にすぎない杉浦重剛でした。小村寿太郎の知り合いであり彼を外務省に推薦し借金の連帯保証人にまでなっています。校長を務めた中学では、岩波書店の岩波茂雄、日本画家の横山大観、政治家の吉田茂など多くの人材を育てています。
さらに後の話になると思いますが、皇太子様(のちの昭和天皇)のご成婚についても杉浦は職を辞して尽力されています。久邇宮良子女王が皇太子殿下のお后として内定しましたが、色盲の家系であり問題があると元老の山縣有朋が難癖をつけてきました(後続の色盲問題については医学界でもあまり語られていないのですが)。
杉浦重剛は御学問所を辞して山縣有朋の意見に反対し、高齢かつ病身でありながら人の道を説く杉浦に世論も共感します。結果、山縣はあきらめ、無事ご成婚となりました。大正13年1月に皇太子様ご成婚の儀、翌2月に杉浦はこの世を去ります。
まとめ
この作品の登場人物の全てが歴史に名を残すような人たちです。当時の日本という国における最高水準です。その中には単に権威がある者だけではなく、本当に実力のある一般の人たちが昭和天皇を育てるキーパーソンとして深く関わっていることに驚きを隠せません。いまよりもはるかに閉鎖的であったはずの明治から大正の時代にあって、いかに教育の本質を重視していたかわかるかと思います。
今年で平成30年になりました。昭和が終わって30年になりました。そして平成が終わりを告げるときが迫っています。今一度、昭和について学び、そこから新しく将来について考えるいい機会なのではないでしょうか。新年最初にご紹介させていただく価値がある一冊だと思います。すごいおすすめです。
今世紀最大の話題作、ついに単行本化!! 大元帥陛下して軍事を、大天皇陛下として政治を一身に背負い 昭和という時代を生き抜いた巨人。 波瀾万丈という言葉では表せないほどの濃密な生涯に 半藤一利氏協力のもと、漫画界の巨人・能條純一氏が挑む―― 「ビッグコミックオリジナル」誌で毎号にわたり衝撃を呼ぶ巨弾連載、 待望の第1集は、その少年時代が 大胆な解釈と圧倒的な画力で描かれる…!
ご参考になりましたら幸いです。