■これは猛毒本。感染注意……『八本脚の蝶』二階堂 奥歯 ※雪雪さん紹介本一覧あり
2020.02.04追記 『八本脚の蝶』二階堂奥歯(著)がついに文庫化されました。 追加記事書いております。ぜひご参考にしてください。
kaigyou-turezure.hatenablog.jp
当ブログには下書きのままの記事がいくつか眠っています。
この記事もそのうちの一つ。
2016年本屋大賞で「発掘部門および超発掘本」を受賞してしまったので、迷いながら表に出します。
この本は危険すぎます。
内容(「BOOK」データベースより)
作家、書店員、恩師、友人、恋人…生前近しかった13人による書き下ろしコラムと雑誌「幻想文学」に掲載されたブックレビュー7篇も特別収録。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
二階堂/奥歯
1977年生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒。編集者、レビュアー。2003年4月26日、自らの意志でこの世を去る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
20代半ばで自ら命を絶った女性編集者の日記です。
だからいつも最後の方は読むのがつらくなってしまいます。
「八本脚の蝶」で検索をかけるといまでもネットで内容を見ることができますが、最終ページが一番上に来るので、できたら最初から読んだ方がいいかもしれません。
八本脚の蝶
http://oquba.world.coocan.jp
↑こちらが最終ページ
八本脚の蝶 最初のページ
http://oquba.world.coocan.jp/note5_p14.html
2016.12.01 追記:
nifty閉鎖の影響で一時期HPが見えなくなっておりました。しかし、アドレスが変更になっていますが、無事見れるようになりました。修正しておきます。
本になるまでの経緯は
↓こちらのブログを参考にされるといいかもしれません。
二階堂奥歯『八本脚の蝶』(ポプラ社)ができるまで 東雅夫(文芸評論家)×斉藤尚美(ポプラ社)対談 2006年1月
http://blog.livedoor.jp/genyoblog-higashi/archives/6916092.html
後半に載っている『八本脚の蝶』著者宅訪問記がなんとも胸に響きます。
「お姉ちゃんの目には、こんなふうに見えていたんだ……」
Webで見るよりも実本を手に取ることはもっと深い何かに導いてくれます。
周りの人が抱いている鎮魂、あるいは慰霊というべき言葉たちが巻末に載っています。
本棚や遺品の写真から帰らぬ主人を待ち続けている雰囲気がただよいます。時間のすき間に落ちてしまったような違和感を感じます。
まるで酔っているかのような。
そして、二階堂奥歯さんが残した文章が詩であることに気付くのです。
ああ、詩だ。
そう思いながら再読をすると、この濃厚な文章から立ち上る二階堂奥歯さんの息づかいを感じとれるような気がします。
本書には圧倒的な量の書籍が紹介されています。
それも濃く深い、なかなか巡り会えない本たちです。
”手元に、雪雪さんが最初にくれた手紙がある。
これには私に薦める本の一覧が載っている。”
圧倒的読書量の二階堂奥歯さんをさらに超える読書量の雪雪さん。
雪雪さんが二階堂さんに勧めた本の一覧がこちらです。
みなさん、どのくらい知っていますか?よほどの本好きでもかなり知らない本が多いと思います。
以下、「雪雪さん紹介本一覧」です。
クリックするとAmazonに飛びます。
イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』河出書房新社
私は世界文学全集の方で持っています。
アラン・ライマン『アインシュタインの夢』早川
スティーヴン・ミルハウザー「東方の国」『イン・ザ・ペニーアーケード』白水社
マーヴィン・ピーク「ゴーメン・ガースト」三部作 創元推理文庫
エディスン『ウロボロス』創元推理文庫
オールディス『地球の長い午後』ハヤカワ文庫SF
山田正紀『宝石泥棒』ハヤカワ文庫JA
天沢退二郎『オレンジ党と黒い釜』ちくま
なだいなだ『夢を見た海賊』ちくま文庫
アンドレ・マルロー『風狂王国』福武文庫
マーヴィン・ミンスキー『心の社会』産業図書
デヴィット・リンゼイ『アルクトゥルスへの旅』国書刊行会
オースン・スコット・カード「エンダー」シリーズ ハヤカワ文庫
山尾悠子『夢の棲む街/遠近法』三一書房
国書刊行会から作品集成が2000年に刊行。『夢の棲む街/遠近法』をふくむ作品が収録されております。
アニー・ディラード『アメリカン・チャイルドフッド』パピルス
コードウェイナー・スミス『ノーストリリア』ハヤカワ文庫
デヴィッド・ジンデル『ありえざる都市』ハヤカワ
残雪『カッコウが鳴くあの一瞬』河出
ジョルジュ・ペレック『人生使用法』水声社
ミロラド・パヴィチ『ハザール事典』東京創元社
A・E・ヴァン・ヴォクト「武器店」シリーズ 創元文庫
金子千佳『遅刻者』思潮社
ジム・バーンズ『ライトシップ』日本テレビ
カスタネダ『イクストランへの旅』二見
小松左京『果てしなき流れの果てに』徳間文庫
バーナデット・ロバーツ『自己喪失の体験』紀伊国屋書店
ピーター・S・ビーグル『最後のユニコーン』ハヤカワ文庫
ブラッドベリ『火星年代記』ハヤカワ文庫
リチャード・ブローティガン『ロンメル進軍』思潮社
松井啓子『のどを猫でいっぱいにして』思潮社
ポール・オースター『孤独の発明』新潮社
J・P・ホーガン『星を継ぐ者』創元文庫
パトリシア・マキリップ「イルスの竪琴」シリーズ ハヤカワ文庫
ジャック・ヴァンス「魔王子」シリーズ ハヤカワ文庫
シュペルヴィエル『沖の娘』教養文庫
オラフ・ステープルトン『スター・メイカー』国書刊行会
吉本良明『よしもとよしとも珠玉短編集』双葉社
ジッドゥ・クリシュナムルティ『クリシュナムルティの瞑想録』平河出版社
池田晶子『事象そのものへ!』法蔵館
竹内敏信『天地交響』講談社
門倉直人「ローズ・トゥ・ロード」シリーズ 遊演体
唐沢なおき『八戒の大冒険』白泉社
水見稜『夢魔のふる夜』ハヤカワ文庫
ロバート・リンドナー『宇宙を駆ける男』金沢文庫
荒巻義雄『時の葦舟』文化出版局
アレキサンドル・グリーン『波の上を駆ける女』晶文社
大森荘蔵+坂本龍一『音を視る 時を聴く』朝日出版社
フローラ・リータ・シュライバー『失われた私』ハヤカワ文庫
士郎正宗『仙術超攻殻ORION』青心社
ロード・ダンセイニ『妖精族のむすめ』ちくま文庫
C・G・フィニィ『ラーオ博士のサーカス』ちくま文庫
パトリック・ウッドロフ『ハレルヤ・エニウェイ』ペーパータイガー
ティム・ホワイト『キアロスクーロ』ペーパータイガー
みなさま、
ここにある本の中で
どのくらい知っていますか?
私はSFを少し読みますから、知っている割合がちょっとだけ多いと思いますが、SF以外は知らないか、知っていても未読のものばかりです。
二階堂さんは最終的に自殺を選んでしまいましたが、読者の方はこの本を読んでも決して自死を選ばないでください。
彼女の持っていた、
精神も肉体も
性も知性も
生も死も
すべてまだここにあります。
そして濃厚な文章に酔いながら、自死の手前で引き返してきてください。皆さんにとって、二階堂さんの持っている毒はきっと薬に変わることでしょう。
そう願ってやみません。
二階堂奥歯さんのご冥福をお祈りいたします。
合掌
ご参考になりましたら幸いです。
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