【感想】『戦争は女の顔をしていない 1』小梅けいと(著) これは名作誕生。もう一つの「この世界の片隅に」【漫画おすすめ】
はじめに
泣いた。
ただただ、泣きました。
2015年にノーベル文学賞受賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの同名作品『戦争は女の顔をしていない』のコミカライズです。
コミカライズ はなんとあの『狼と香辛料』の小梅けいと先生です。当ブログでも完結に合わせて感想記事を書いています(1)。『狼と香辛料』も名作でしたが、小梅先生がまさかこんなヘビー級な作品をコミカライズするとは思っていませんでした(ちょこちょこエロい漫画を描いていたようですし)。
舞台は独ソ戦。ソ連では100万人以上の女性が従軍したにもかかわらず、戦後は口を閉ざさざるを得なかったのです。ソ連はドイツに勝ちましたが、戦争の傷跡は深く残されていました。作者は500人以上の女性の退役兵士から聞き取りを行い、彼女たちの戦争を残そうとしました。
『この世界の片隅に』とおなじように、戦争があった時代の女性たちのお話です。各話、涙なくして読めません。胸を打つ作品です。小梅けいと先生の新たな名作が誕生しました。ものすごいおすすめです。
狙撃兵
(『戦争は女の顔をしていない 1』より)
独ソ戦において、ソ連軍は多くの女性が従軍しています。軍医、看護師のみならず飛行士、機関士、砲兵などです。女性の狙撃兵もいました。
彼女たちの苦悩は戦後も続きます。負傷して後方に運ばれたマーシャのお話では号泣しました。
衛生兵
(『戦争は女の顔をしていない 1』より)
歌を歌いながら、負傷兵を運び出すマリア。決して戦争の美談ではなく、その後も戦争は続くのです。
機関士
(『戦争は女の顔をしていない 1』より)
ソ連では機関士にも女性がいました。ソ連初の女性機関士のお話です。線路を外れては進めない列車は、航空機の格好の餌食でした。蒸気機関車をつぶし、機関士を殺すのが目的です。
作者 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
作者は女性従軍兵のところは話を聞きに行きます。そして戦争経験者の話を聞いて涙します。
まとめ
心を深くえぐるような内容ですが、小梅けいと先生の絵なので戦争の悲惨な状況や殺伐とした印象より、女性の悲しみがより伝わってします。
監修は『大砲とスタンプ』の速水螺旋人先生(2)です。最後2P.に速水螺旋人先生のコメントがありますので、こちらも必読でしょう。
独ソ戦については『どくそせん』(3)をおすすめします。ふざけた表紙ですが、内容はしっかりした本物で、かなり濃いです。
本当に意欲的で挑戦的な作品だと思いますが、このようなチャレンジをして、我々読者の手元に素晴らしい作品を届けてくれた関係者に感謝したいと思います。『戦争は女の顔をしていない 1』小梅けいと先生の新作は、すごいおすすめの一冊でした。
(1)<当ブログ関連記事>
(2)監修 速水 螺旋人先生
(3)独ソ戦ならこの一冊
ご参考になりましたら幸いです。
Copyright © 2016-2020 kaigyou-turezure All Rights Reserved.