勤務医開業つれづれ日記・3

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【漫画おすすめ】『グッド・バイ・プロミネンス』 ひの宙子 (著) みんないつも何かを失っている、その先へ【漫画感想】

はじめに

2019年の短編漫画で『グッド・バイ・プロミネンス』がスゴイよかったです。第1話でこの作品にほれてしまいました。いいな、これ!

 

ときに激しく、ときにさみしく、ある時は孤独で、ある時は親密に。

生きるうえでの大変さというのは、いろいろと姿を変えていきます。この『グッド・バイ・プロミネンス』のキーワードのひとつは”失恋”なんだろうけど、それだけじゃない。困難さや、失ったところから新しいステップを踏み出す物語です。

 

ひの宙子先生はデビュー作とのことですが、ホント天才です。

オムニバス形式で多くの登場人物たちがそれぞれに悩みを抱え、現実との折り合いに苦労しています。生きていることとは、常になにかを失うことでもあります。その先にある小さな希望が見えてくるような作品です。

 

『グッド・バイ・プロミネンス』は短編集として、ものすごいいい作品です。

お話が深いし、心に染み入るものがあります。繰り返し読み返すことで、その世界が広がりを見せます。ひの宙子先生は自分にとってこれからも新しい作品を読みたい作家さんの一人になりました。すごいオススメです。 

  

 

目次

第1話「君、喜び多く、幸深からんことを。」 

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『グッド・バイ・プロミネンス』より)

唐突なハナの告白から物語は始まります。告白相手は担任の笈川先生です。友人の坂井さんは突然の告白を横で聞いていて、ビックリしてしまいます。

 

喜多さんと坂井さんの距離感がいいですよね。親友だけどちょっとだけお互い不器用。でもちゃんと信頼しているっていう感じが好きです。

 

第1話と第2話を一気に読むことをおすすめいたします。第1話はいい話です。そして第2話があると第1話に深みが増します。悲しいお話ですね。

3話もそのつながりになります。そして最終第8話が第1話、第2話の後日談になっています。8話もすごい好きです。

 

 

第5話 「コペンハーゲン」

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『グッド・バイ・プロミネンス』より)

第1話で告白された笈川先生は卒業式のあと、女性とお酒を飲みに行きます。”瑤子ちゃん””幸緒くん”という呼び方から、二人の関係はいったいどんなものなのでしょう?きっと予想は半分だけ裏切られます。

 

カクテル言葉をキーにお話は進んでいきます。

で、第6話で”瑤子ちゃん”はこれまたびっくりする展開になってしまいます。幸緒くん、かわいそうだ。

 

第8話「なつかしい明日のはなしたち」

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『グッド・バイ・プロミネンス』より)

相変わらず剛速球な喜多さんです。くじけている坂井さんに剛速球な言葉を投げかけます。いい悪いはあると思いますが、思わず喜多さんの直球が心のストライクに入ってびっくりする坂井さんです。


「じゃあそれが全部なんじゃないの!?」 

 

強くて、とてもいい言葉です。

坂井さんの胸に届くような言葉を投げかける喜多さん。でも喜多さんの方は逆に、高校生のころ坂井さんに甘えさせてもらっていたと思っていたようです。

坂井さんはそんなつもりがなくて、喜多さんが笈川先生に告白したときも疎外感を感じていました。そんな第1話のねじれが解消されるような最終8話でした。

 

短編のタイトル

タイトルもなかなか凝っている感じがします。管理人が気づいた点だけあげていきます。

 

1話「君、喜び多く、幸深からんことを。」

登場人物の喜多ハナと坂井深幸のそれぞれの名前からとっているタイトルです。

 

2話「さようならプロミネンス」

プロミネンスはおそらく太陽の紅焔のことだと思います。太陽から吹き出る赤い炎のガス体です。

 

3話「畢竟ーひっきょうー」

畢竟とはつまるところ、結局は、の意味。とどのつまり、イツジくんはなかなかかわいそうだけど、ヘタレでした。 

 

4話「ノット、ラブ、ノット」

not love (恋ではない)と、ネクタイの結び方の TrueLove knot(トゥルーラブノット)をかけているんですね。

 

5話「コペンハーゲン」

カクテル言葉です。いろいろ知りませんでした。

 

6話「あなたにあいみつ」

相見積の「あいみつ」に「愛と蜜」をかけているんでしょうか。 

 

7話「灰かぶりのかかと」

灰かぶり姫=シンデレラです。シンデレラはガラスの靴ですから、そのくつのかかとってことですね。

 

8話「なつかしい明日のはなしたち」 

"なつかしい+明日"で不思議な感じのフレーズになっています。

 

 

ドミノ倒しの登場人物たち

『グッド・バイ・プロミネンス』の凄さはその構成にもあります。登場人物が多いので大変バラエティに富んでますが、読んでいてこんがらがってしまいます。一応管理人が理解した範囲内で登場人物をまとめてみました。

 

1話

喜多ハナ(下の名前は第2話)

笈川幸緒(担任の先生 下の名前は第5話)

坂井深幸(下の名前はあとがき)

 

2話

喜多ハナ

母(喜多春、旧姓ヨシノ)

喜多逸二(イツジ)

 

3話

喜多誠一

喜多逸二(イツジ)

春(ヨシノハル→喜多春)

藤田亮(逸二の友人)

悠(逸二の友人)

 

4話

藤田亮(花婿)

悠(付添人 友人代表)

秋吉愛(花嫁 泣きぼくろ 亮の結婚相手、秋吉舞香の妹)

秋吉舞香(あごのほくろ 下の名前はあとがき)

 

5話

笈川幸緒

笈川瑤子

 

6話

笈川瑤子

篠原太一

秋吉舞香(下の名前はあとがき)

 

7話

篠原太一

篠原百合

 

8話(第1話と同じ登場人物)

坂井深幸

喜多ハナ

 

これらの登場人物のつながりを読み解くことで「なるほど」という感じが増すと思います。管理人も何度も読むことで再発見することが多かったです。深読みすればするほど楽しめる作品です。

 

 まとめ

本当に素晴らしい短編集でした。

BL、GL、NLといろいろな要素がある『グッド・バイ・プロミネンス』 ですが、それだけではありません。それぞれの登場人物が別な話ではまた別な感情を持っていて、一人の人間の多面性や人生の奥深さが混在しています。

 

登場人物では笈川先生が一番不遇な感じがします。瑤子ちゃん、取られちゃうし。イツジくんはまあ不幸だけど自己満足している感じもするし、ハナちゃんもいるし、まあまあ幸せですよね、多分。

 

激しさやさみしさ、孤独や親密さが混在した素晴らしい作品集になっています。おはなしの構造も深いし、刺さるセリフも結構あります。『グッド・バイ・プロミネンス』はホント良作です。今後もひの宙子先生に注目していきたいと思います。

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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