勤務医開業つれづれ日記・3

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【書評】岩野泡鳴全集よ、さようなら

岩野泡鳴をご存知でしょうか?

明治から大正にかけて活躍した自然主義作家です。女性関係がひどく、妻が3人に子どもが9人、主な愛人や芸者だけでも3人という乱れっぷりです。 

 

5年ぐらい前に岩野泡鳴全集を入手して以来、ずっと楽しく読ませてもらっていましたが、このたび手放すことにしました。 

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誰一人知っている人いないだろうと思ってTweetしたら意外とリアクションあってびっくりしました。

 

岩野泡鳴全集・目次

 第1巻 耽溺・ぼんち・五人の女・猫八 他

 第2巻 〈定本5部作〉発展・毒薬女・放浪・断橋・憑き物

 第3巻 〈初出5部作〉放浪・断橋・発展・毒薬を飲む女 他

 第4巻 非凡人の面影・征服被征服 他

 第5巻 燃える襦袢・情か無情か・女の執着 他

 第6巻 芸者小竹・恋隠者・アボト先生 他

 第7巻 真理論者・魂迷月中刃・あぶら虫 他

 第8巻 露じも・夕潮・単行本未収録詩篇 他

 第9巻 神秘的半獣主義・近代思想と実生活他

 第10巻 近代生活の解剖・男女と貞操問題他

 第11巻 新体詩の作法・現代小説の描写法他

 第12巻 小説家としての島崎藤村氏  

 第13巻 新日本主義の意義・我思想界の現状と其救済 他 

 第14巻 池田日記・目黒日記・マクベス 他 

 第15巻 樺太通信・旅中印象雑記・序跋 他 

 第16巻 年譜・書誌・著作年表・総索引他

 別巻 遠藤清「愛の争闘」・諸家追悼文 他

 

 

「おれは宇宙の帝王だ!」

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「おれは宇宙の帝王だ!否、宇宙その物だ!笑うとはなんだ?」 と中学校の講演で叫ぶと学生が大爆笑(憑き物 全集2巻)。

 

近所のダメおじさん感がすごい。  

 

 

「耽溺」 

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「耽溺」は一番有名な小説(岩野泡鳴全集1巻)。内容は、妻子がいて金は無いのに芸者の吉弥を落籍させた。でもその芸者が梅毒だった話。 妻のヒステリー、 芸者の毒眼(目の梅毒)、 ダブルで自分は衰弱した(意訳)

 

、みたいな全く共感できない文章があふれてます。ホント、ダメ男だ。

 

 

 

岩野泡鳴、自殺未遂 

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「僕は事業の失敗は全然苦にしてなかったけど、女に性病をうつして、ずっと女は苦しんでたから、一緒に死のうと言われた時、その気になった」(意訳 全集15巻「ロスケ小屋」)。

 

樺太で事業失敗したのに飲んで遊んで自殺未遂。すがすがしいほどのクズっぷりです。愛人と川に飛び込んだら、冬で水がなく雪ばかりで無傷でした。

 

 

三人の妻を持って 

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岩野泡鳴の実生活もめちゃくちゃ。3回の結婚と9人の子ども。他に芸者吉弥や心中未遂の愛人とか盛りだくさん。

 

「僕は不幸にしてまだ処女に接したことがない。二番目の妻はそう言ってるが、かなりあやしい」(意訳、全集15巻「三人の妻を持って」)。

 

泡鳴先生、この時代にあけすけすぎる。

 

一方、その2番めの奥さんについては別の本でこのような記載があります。

 

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長谷川 時雨はこの2番めの奥さんである遠藤清子のことを「きびしすぎるほど真面目に、彼女自身への貞操を守っている」と書いています(後述、「遠藤(岩野)清子」) 

 

岩野泡鳴は奥さんのこと「あいつは処女じゃないな」と書き、後の文学者は「生真面目に貞操」と書いています。真実はわかりませんが、清子さんがかわいそうな気がします。

 

 

夏目漱石と岩野泡鳴 

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15巻の岩野泡鳴全集月報には夏目漱石と岩野泡鳴について書かれています。

夏目漱石と岩野泡鳴の二人は3回会ったことがあるようです。こちらは夏目漱石研究の超マニアック本「漱石研究年表」からの抜粋です。明治44年8月22日、吐血し入院していた夏目漱石を岩野泡鳴は見舞います。これが3度め、二人が会った最後でした。

 

別巻は岩野泡鳴と結婚していた奥さんがたの文章などで、「なぜ私は離婚しないか」とか「法廷の裁決を乞ふまで」とかだったりして、まあグチャグチャでひどいものです。入手しづらい遠藤清「愛の争闘」が入っているので大変助かりました。

 

 

その他の関係本 

おそらく現時点で販売されている岩野泡鳴作品は、岩波文庫の短編小説集に入っている「猫八」だけだと思われます。 

 

 

芥川龍之介 岩野泡鳴氏 

こちらは青空文庫からです。芥川龍之介による岩野泡鳴に関する短文です。 

岩野泡鳴氏 Kindle版 芥川 竜之介 (著) 

 

 

 

 

ほかにも大久保先生の岩野泡鳴研究本や元奥さんの著書、遠藤清「愛の争闘」などいろいろ集めていました。 

 

泡鳴研究の第一人者、大久保先生による研究の集大成です。「泡鳴三部作」とあるのは大久保先生の泡鳴研究三部作という意味です。 

岩野泡鳴(1873~1920)を追いつづけてきた著者40数年の総決算。昭和20年代にしか入手できなかった履歴に関する貴重な未公開資料や秘話の数々。「岩野泡鳴」「岩野泡鳴の時代」に続く〈泡鳴三部作〉決定版! 

 

 

こちらが前述の遠藤清子についての文章「遠藤(岩野)清子」が入っております。青空文庫でも読めますので「遠藤(岩野)清子」で検索してみてください。 

真率果敢に生きた同時代の女たちを、他では得がたいエピソードを交えながら描いた女性評伝集。下巻には、閨秀歌人として知られる柳原白蓮・九条武子をはじめ、モルガンお雪・大塚楠緒子等9名収録。全力投球された作品だけがもつ気迫が全篇に漲る。 

 

 

 

舟橋聖一という昭和の流行作家が岩野泡鳴について書いています。舟橋聖一も忘れされれた作家ですが、忘れ去られた流行作家による、知られざる天才の伝記になっています。おすすめです。 

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岩野泡鳴伝 (1971年) (角川選書) 舟橋 聖一 (著) 

 

 

あと一冊、最近の文庫本で中に遠藤清子のことについて書かれた本があったはずなんですが、少し前に古本に出して忘れてしまいました。すごく引っかかっていますが、思い出せません。すみません。

 

 

 

まとめ

ここまで書いてきて、岩野泡鳴に対する愛情が自分にはこんなにあるとは思いませんでした。

 

岩野泡鳴は本当にどうしようもないやつです。天才かもしれないけど、普通なら理解できない無自覚無反省なひどい人間です。でも強烈な作品で、人間の獣の部分を書き出しているのかもしれません。

 

自分の周りには全集を読むような人間はあまりいないので、かなり独自路線で読んでいます。一回買うと全集は4,5年は楽しめる素晴らしいものです。皆さんも全集にトライしてみませんか?

 

岩野泡鳴全集は自分の手を離れますが、この全集もまた誰かいい人に巡り合って、大切に読まれるとうれしいです。みなさんも、これからも良い読書を。

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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