【感想】兄の嫁と暮らしています。 2巻 くずしろ お互いの大切だった人が亡くなって……。【ネタバレ漫画レビュー】
「兄の嫁と暮らしています。」２巻が出ました。この作品、すごい好きです。
以前からくずしろ先生の作品はとても好きで紹介させてもらっていますが、この作品はちょっとだけ雰囲気がちがいます。
志乃ちゃんは高校生で、お兄さんのお嫁さんで教師の希さんと二人暮らしです。両親がいない志乃ちゃんとお兄ちゃんは二人で生きていました。そしてお兄ちゃんは希さんと結婚します。でも仕事中にお兄ちゃんが亡くなってします。残された希さんと志乃ちゃん二人はぎこちなく暮らし始めます。
もともと登場人物のふとした寂しさや不安な気持ちの表現は抜群にうまいくずしろ先生。でもいままでのくずしろ先生の作品とはちがって、喪失感が強いです。お互いにもう失われてしまって、もう取り戻せないものを二人が感じ取っているのが伝わってきます。くずしろ先生の作品でも個人的には一二を争う作品です。ぜひ手にとってみてください！
兄の嫁と暮らしています。 2巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
岸辺志乃、高校生。17歳。唯一の肉親だった兄貴が死んで半年、「兄の嫁」である〝希さん〟との二人きりの生活も半年が経ちました。『他人だけど家族』──。そんな二人を描く、不可思議で、不器用で、そして少しだけ互いを知る、日常センシティブストーリー第２巻。
こちらが２巻の表紙です。で、カバーを取ってみるとこうなります↓
比べてみます。
表紙裏ではお兄さんが食卓に一緒に座っています。楽しそうで、そして切ない。希さんの笑顔がちがう。ぜんぜん違う。
椅子の背もたれと希さんの背中の距離を見るとわかるけど、表紙ではほんのちょっとだけ希さんの体も後ろに引けています。希さんのヒザの角度とかね。志乃ちゃんが良いとか悪いとかじゃなく、ちょっとした表情や距離感にお兄さんがいる時といなくなった時の違いがにじんできます。
こういう芸がこまかいところがくずしろ先生の良いところですよね。
お兄さんの葬儀の時の二人。宣伝ポスターにも使われています。
「また 一人にしないで 希さん さみしいよ 希さん」
お兄さんが死んで奥さんの希さんがいなくなるのは当然、と思っていた志乃ちゃん。お兄さんと二人きりだったころよりもっとさみしくなることを考えて志乃ちゃんは身の置き場がありません。
「私 岸辺さんみたいな人 嫌いです」
両親の離婚で選手としてバレー部を続けられない小泉ちゃんはマネージャーをやっています。志乃ちゃんがバレーを辞めた理由をあいまいに答えたらいきなり言われちゃいました。
だし巻きタマゴで希さんの女子力に圧倒される志乃ちゃん。相変わらずの「くずしろ節」がいいですね。
「志乃は 全然希の事 知らないねぇ」
りっちゃんはお兄ちゃんと希さんの高校の同級生です。アメリカ帰りでお兄ちゃんと希さんをくっつけた張本人、と自分は思っています。りっちゃんはとにかくストレートに生きている感じの人で、志乃ちゃんと希さんの距離感についてズバッと言ったりします。
お互い思っている事をすっきり言えなかったり、他人行儀だったり、熟睡できなかったり、進路の事を相談できなかったり、いろいろあるよね。すごいよく分かる。こういうところが心にしみちゃいます。
ちなみに１巻で拾ってきた猫の名前はG出現で「大佐」になったようです。家の中で一番えらいらしい（笑）。
二人の関係がこのままでいて欲しい気もしますけど、でもずっとこのままじゃいられないですよね。高校生ってむずかしい。自分が戸惑っているうちに時間だけは進んでいきますからね。
もともとくずしろ先生は百合系だけど、ここから二人の百合展開はないだろ。いや、自信ないけど多分大丈夫……。ということでかなり先が気になる作品です。
ご参考になりましたら幸いです。
