【感想】「潜熱 1」 野田 彩子 ヤクザと大学生。好きになってはいけない、わかっているのに熱は冷めなくて【ネタバレ漫画レビュー】
幻の短編が、連載で単行本になりました。
女子大生とヤクザのグラッとくる恋の物語です。危険なニオイのするやばい恋愛。女性の感情の描き方が繊細で、読んでいるとこの作品にどうしようもないほど引き込まれてしまいます。すごいいい作品です、これ!
コンビニでバイトしている大学生の瑠璃は、
毎日必ず同じ銘柄のタバコを二つ購入する
中年の男・逆瀬川のことが気になっていた。
思い切って逆瀬川に声をかけた瑠璃は、
同乗する車の中で、自分の心の中に
未知なる熱い火が灯るのを自覚し――ヤクザと女子大生の、危うく切実な恋物語…第1集。
ヒバナ 2017年3月号(2017年2月7日発売)
表紙は「潜熱」です。2月発売だからバレンタインチョコですね。
うわっ、瑠璃ちゃんが妖しい。
IKKIの短編を読んでいいな、と思っていました。でも短編掲載のIKKIが休刊になって、「ヒバナ」にうつって連載されていたんですね。
第1話は短編収録時と同じ。
岡崎瑠璃ちゃんは大学1年でコンビニでバイトを始めたばかり。
逆瀬川のタバコの注文でいきなりフリーズしたり、目の前で逆瀬川が他のお客に蹴り入れてビビったりします。
逆瀬川はヤクザ。若手に「親父」って言われているので組長になるのかな。ストラップがかわいい。
雨の日、ヤクザの逆瀬川にバイト先から家まで車で送ってもらった瑠璃ちゃん。いつも逆瀬川が瑠璃ちゃんのバイト先のコンビニで買っているタバコのニオイが離れません。瑠璃ちゃんは危険な逆瀬川の雰囲気にどうしようもなく魅せられてしまいます。
短編掲載時はここまで。
この余韻がすごいな、と思っていました。心に残るいい短編だと思いましたが、逆にこの雰囲気で連載になるとはおもってませんでした。
でも、実際に連載作になって続きを読んでみたらかなりよかった。短編部分はそのままですばらしい第一話って感じで、作品としてすばらしく成立していました。やっぱり漫画家の人はすごいです。
「逆瀬川さんは、悪い人かもしれないし、
性格も悪いかもしれない…………」
そりゃそうだ。ヤクザだもん!
でも、一番否定したいところに自分の答えはあるに違いありません。必死に瑠璃ちゃんは逆瀬川のことを否定するけど、否定すればするほど自分の恋愛感情を感じてしまうに違いありません。
瑠璃ちゃんは天然入っていて、しかも初恋相手がもろヤクザだから、友人は危なっかしくて見てらんない状態です。
逆瀬川は当然結婚もしているし、離婚もしているし、キャバ嬢にごっそりプレゼントとか買っているし、子供は自分と同じぐらいの年齢。でも友人にさとされても、同じ年の逆瀬川の息子に注意されても、瑠璃ちゃんは自分の心をおさえることができません。
でもね、瑠璃ちゃん、やっぱりそっちは不幸だよ。
「うなずくと 足の甲に 涙が落ちた。
熱くて 熱くて 体じゅうが痺れた。」
すごいいい作品だな、思いながら読んでいました。瑠璃ちゃんの切ない気持ちがこちらに伝わってくるもんね。
そして最後の6話のこのコマ見て、私は絶対次の巻を買うこと決めたね。見上げていた瞳にあふれてくる涙が、うなずくと同時にこぼれてしまって、足の甲に涙が落ちます。その涙の温度で、自分の体が熱いことを知ります。体にこもる、この熱が「潜熱」なんですね。
瑠璃ちゃん、君はきっと幸せになれない。
それは読者も作品の登場人物だれしもが思っていることに違いありません。それでも瑠璃ちゃんはもう逆瀬川を選んでしまいました。瑠璃ちゃんのブレーキはあるかもしれないけど、全然働いていない。瑠璃ちゃんの体の熱が自分の理性を超えています。
これから瑠璃ちゃんが、もしかしたら幸せをつかみ取るのか、それとも予想通りに不幸になってしまうのか。まだ私たちにはわかりません。体にこもった熱も、流した涙も、自分で選んだ感情も、全部瑠璃ちゃんのもの。でも瑠璃ちゃん、君はきっと後悔する。
そんなあぶない恋のお話です。瑠璃ちゃんの恋心がいったいどこに行ってしまうのか、続きがとっても気になります。これはかなり管理人のハートにビリビリきたな。
オススメです!
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