【感想】『崖際のワルツ 椎名うみ作品集』 椎名うみ (著) 孤独と友情と狂気の間【マンガ感想・レビュー】
『崖際のワルツ 椎名うみ作品集』出ました!
『青野くんに触りたいから死にたい』で話題沸騰の椎名うみ先生の短編集です。
『ボインちゃん』 『セーラー服を燃やして』 『崖際のワルツ』の3作品が入っています。どれもが心に刺さるような作品です。コミュニケーションがうまくできない少女たちは大真面目に奇行に走ります。孤独にすらなれない、距離を取っても追いかけられる主人公たちは気が狂いそうです。読者の信じている常識が悪者で、主人公たちを追い詰めているような感覚におちいります。
どこを読んでも「椎名うみ」。これっぽっちも混じりっ気がありません。そしてクオリティが高い。こういうのを才能っていうんですね。『青野くんに触りたいから死にたい』が読める人にはぜひ読んでもらいたい作品ですね。ほんとオススメ。
選考委員・萩尾望都氏が感嘆した、アフタヌーン新人賞「四季賞」受賞作。『ボインちゃん』教師と生徒。その埋めがたい溝をめぐる絶望と激高。『セーラー服を燃やして』華と律――ふたつの異なる才能が、舞台上で激突する。高校演劇青春活劇!!『崖際のワルツ』
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『ボインちゃん』
まおちゃん
内藤さん
アフタヌーン四季賞を受賞した『ボインちゃん』はそのタイトルの通り、おっぱいが大きくなってきた小学生のまおちゃんのお話です。
成長って絶対に必要なんだけど、今までと変わったりちょっとだけ成長が早くて目立ったりすると、成長そのものが悪いことのように思えてきます。まおちゃんはおっぱいが大きくなるのがすごいストレスです。そして雰囲気を読めない内藤さんが、まおちゃんに直球で言葉を投げかけます。
椎名うみ先生のデビュー作ですが、最初っからこのレヴェルなのか!すごすぎです。すでに椎名うみ先生の色がにじみ出ています。
『セーラー服を燃やして』
『ボインちゃん』で出てきた内藤さんが今回は主人公です。内藤さんは内藤明日香、まおちゃんの苗字は小谷です。
空気読めない内藤さんはちょっとしたことから登校拒否になってしまいます。善意の担任の先生が内藤さんの家族と一緒に内藤さんを追い詰めます。内藤さんも先生も間違っていないのに状況が狂っていく感じが恐ろしいです。先生怖すぎ。
ちなみに『ボインちゃん」で小学生の時におっぱいが気になっていたまおちゃんは、中学生になったら普通のおっぱいみたいな感じでした。よかったね。
『崖際のワルツ』
西園寺 華(さいおんじ はな)
↓
美しい女性を、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、と形容しますが、黙っているとすごくきれいな華ちゃんですが、しゃべる姿は棒読みで破壊的で悪鬼のごとくです。 演劇部に入りますが、超大根役者です。
五反田 律(ごたんだ りつ)
律ちゃんは理性的で頭脳派です。同じ演劇部の1年生で、華のおかしなキャラに目をつけて15分間の寸劇を組み立てます。超大根役者の華と心は伝わらないという信念を持った律ちゃんの二人が作り上げた寸劇が始まります。衝撃的な劇の行方はどこに向かうのでしょうか?
10年前にお母さんに捨てられた律ちゃんは、捨てられて日に劇場で芝居を見て衝撃を受けたはず。そんな前フリがあるので、短編ではありますが連載ネタなんじゃないかと思います。この作品の続きを読んでみたいです。
こちらが裏表紙も含めた見開きですね。表紙側の華ちゃんだけだとすごいアンバランス。危うく見えます。でもきちんと裏表紙の律ちゃんが華ちゃんの手をつかんで飛んで行かないようにしています。ふたりの関係をうまくまとめている素敵な表紙ですね。
明日発売の短編集、「崖際のワルツ」の献本が届きました🌸☺️🌸 pic.twitter.com/oUXarNRM6e
— 椎名うみ (@shinaumin) 2017年8月22日
というわけで、やっぱり椎名うみ先生はすごかった!
これは新しい才能ですね。ここから初連載『青野くんに触りたいから死にたい』での大注目につながっていくんですね。個性と異端、友情と無理解のどうしようもない関係を絶妙に描き出している椎名うみ先生の作品集は読み手を選びますが、ハマる人にはものすごい衝撃があると思います。気になる人にはかなりオススメです!
ご参考になりましたら幸いです。