【感想】『阿・吽 5』おかざき 真里 いま、ここで芸術が生まれている!この躍動、この魂、この熱量!!最澄と空海の”セッション”を見ろ!!!【ネタバレ漫画レビュー】
ああ……、なんてことだ。芸術がリアルタイムで生まれている。
おかざき先生の才能が指先から紙面にだだ漏れしています。先生の熱量がデータに混じって紙面から浮き上がっている気がします。
これは強烈にまずいです。なんだか異能の才を見ているようです。
遣唐使に選ばれ、世の注目を集める最澄。
その選に漏れ、更なる荒行に邁進する空海。仏教史に名を残す二人の天才が遂に運命の邂逅を果たす…
果たして彼らの思いは海を越えるか!?物語の舞台はいよいよ中国へ!
激動の第5集!
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5巻にしてはじめて最澄と空海がようやくあいまみえます。同じ時代、同じ領域の二人の超天才がはじめてお互いを知ることになります。
命をかけた遣唐使に、最澄は国に認められた十禅師の一人として、かたや空海は現在でもなぜ参加できたか不明である無名の一私度僧として加わります。
『此の花は今年咲いたのではない。 何年も種を落とし続けた。 因と縁に従い枝をのばした。 そこで春に遇う そして花が開いた ーー拾遺雑集』
深い、深いなぁ。これ。コミック開いた途端にこれですから。最初から熟読モードですよ。
タイトルが『セッション』か!!!
この扉絵見て背筋がゾクゾクして、そしてタイトル見て二度目の”うわぁ”ってなりました!
最澄と空海で、遣唐使で『セッション』ですよ!ジャムってるな!!当時、すでに広く世間に認められていた最澄と、いまだに何故選ばれたか謎に包まれている一私度僧である空海。この二人が同じ船団で唐を目指すことになるのです。
その後の天才二人の愛憎入り乱れる人生を知ってか知らずか、二人の才能がお互いを呼び合うジャムセッション。
「面白かったな! またやろう!」
「……うん。」
おかざき先生のセンスがもう、ビリビリきます。この最澄の「うん。」の丸がいいですね。この丸ですよ、会話の最後の丸。読みながら興奮して泣きました。
この作品は、おかざき先生の指先から魂がこぼれ落ちているんだな。
タイトルの赤岸鎮とは、今の福建省の村で、空海が漂着した唐の場所です。最澄は第一船、空海は第二船に乗り込んでおり、一緒に出発した第三、第四船は遭難しております。最澄の第一船が目的地にたどり着いて、空海の第二船はなんとか唐につきましたが、目的地よりだいぶ南に流されてました。
唐に着いた段階からすでに引き離されている最澄と空海。空海の文章はまるで極上のメロディーか、目がくらむほどの芸術作品で、唐の人も魅せられてしまいます。空海はその才を発揮し、苦難の道を前に進みます。
一方、最澄は目的地には着きましたが、病に倒れます。
なんなんだ!この作品の熱量は!?
読み終わって、紙面から顔をあげて、大きく溜め息つきました。ほんとに息するの忘れていたわ!!もう読んでいるだけで魂、震えます。みんな、簡単に感想書いているけど、すごいですね。
私は読んでグラグラしました。泣いたけど。
各回の扉絵だけで、もう震えがくるような極上の芸術作品になっています。
でっかく引き伸ばして、壁に貼って正座してじっとみていたいです。いっそ美術館特設展示で3、4階からブチ抜きで垂れ幕で外から見るってのもすごいかも。しかも白黒で!オープニングで読経してもらって、みんなでお経を読み上げるとか。壮観ですね!!
……すまん、妄想が走ってしまいました。
天才のみが天才を知る。そして、いまはその場所を離れる第三の男、徳一。 彼がどのような描き方をするのかすごい興味があります。後年、彼が刃となって最澄を切り刻むか、それとも、お互い高めあって真実を求めるために戦うのか。
徳一の書は『真言宗未決文』以外、すべて失われています。ただ、最澄と空海の著作の中に彼の言葉が残っています。最澄と空海が徳一の意思を書き取っているんですね。最澄と徳一はバチバチに論戦を戦わせていましたが、史実では空海と徳一は仲良かったと思います。これが作中ではどうなることやら。
登場人物をいろいろと考え始めたら妄想がつきない作品です。もう、これだけ心震えるような作品をリアルタイムで読めるなんて、幸せすぎ。そして、もしちょっとでも気になる人がいるなら読まないのは絶対にもったいないです!
いいか、断言しておこう、読め、って!!
ご参考になりましたら幸いです。