勤務医開業つれづれ日記・3

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新型コロナウイルスのエアロゾル感染【COVID-19】【新型コロナウイルス】【SARS-Cov-2】

はじめに

「エアロゾル感染」という言葉を、今回の新型コロナウイルスで初めて聞いた方も多いかと思います。

 

空気感染と誤解されたり、接触感染と同じだと言われたり、よくわからないですよね。今回は「エアロゾル感染」について、簡単に説明してみたいと思います。

 

(※ 「エアロゾル」および「エアロゾル感染」について、専門的には統一の定義がありません。この記事では、筆者の医師としての経験から、「一般の方の場合、実用上、こういう理解をしておけば、概ね事足りるだろう」と思われる説明を書きました)

 

エアロゾルとは

エアロゾルってなんでしょう?
粒子の大きさについていろいろと言われていますが、イメージが上手くつきませんよね。

管理人の独断で簡単に言うと、喘息の治療でパフっとやる薬ありますが、その時出てくる薬の、

”パフッ”がエアロゾルです。

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説明書にもエアロゾル(細かく言うと、エアゾールと記載)と書かれています(1)。

 

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オルベスコ(2)


喘息の薬で”パフッ”となる薬は、エアロゾル式の他に粉のドライパウダータイプの2つがあります。

 

ミスト状の霧が出るのがエアロゾル、白い粉が出てくるのがドライパウダーです。つまり、喘息の薬のように霧状にパフッとなるのがエアロゾルなんです。

 

空気感染、飛沫感染とエアロゾル感染の違い

 

空気感染とは、空気中をただよう微細な粒子を吸い込むことにより感染することです。いつまでも空気にただよっています。

 

一方、飛沫感染とは咳やくしゃみで飛び散ったしぶきを吸い込むことにより感染します。

 

エアロゾル感染はその中間のような状態で、喘息の吸入薬のように”パフッ”と細かい粒子がでますが、いつまでも空気中にただよっているわけではなく、すぐに落ちてしまいます。

 

エアロゾルが起きやすい状況

 1・一般生活でのエアロゾル感染は?

一般生活では、どんなときに感染に関係した”パフッ”が起こりやすいでしょう?結論から先にいうと、エアロゾル感染はあまり気にしなくていいレベルだと思います。

 

糞便から新型コロナウイルスが出るという報告がありますので、気にするべきなのは嘔吐と下痢のときだと思われます。しかし最新の報告でも新型コロナウイルス感染症では下痢は3.8%しかありませんので(3)、あまり気にしすぎることはないと思われます。

 

同じような現象は、ノロウイルスのときのエアロゾル感染が有名です(4)。子供が吐いたり下痢したりしたものを親御さんが処理するときに、マスクも手袋もしないともわっとなって”パフッ”を吸い込んでしまいます。

 

厚生労働省は、 ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合に家庭内でご注意いただきたい8つのポイント(5)の中に、

鼻をかんだティッシュはすぐにビニール袋に入れ、室外に 出すときは密閉して捨ててください

ということを入れています。鼻をかんだり痰を出したあとのティッシュは密閉しないと、他のゴミなどを入れたり、間違ってこぼしたりした時に”パフッ”となってしまうかもしれません。

こまめに袋に入れるか、WHOは使用済みのマスクを蓋付きのゴミ箱を使用することを推奨しています(前記事)。

 

エボラ出血熱では、マスクを外したときに感染することが報告されておりますから、汚染が疑われるものは、エアロゾル感染とは関係なく、できるだけ2度触らないように処理することが必要だと思います。

 

2・トイレのエアロゾル問題

 

あまり日本で起こることはないと思われますが、SARSのとき香港ではトイレの床の排水口の配管でエアロゾル感染、つまり”パフッ”が起きてしまったらしいです(6−7)。

「トイレ付き浴室の床にある乾燥したU字型の排水管が、汚染された汚水飛沫が各家庭へ流れ 込む経路となった」(7)

つまり、トイレの配管や排水口から”パフッ”がおきてしまい、狭い空間に”パフッ”となって充満して感染してしまった、ということです。

 

中国などが「便からウイルス」という糞口感染をとても気にするのは、トイレを含めた下水道の衛生環境がかなり違う事情が背景にあると思います(8)。


まとめ

 

エアロゾル感染について、ごく簡単な説明をしてみました。最初にも述べたようにエアロゾルおよびエアロゾル感染について統一的な定義はありません。そのためきちんとした説明が上手くなされていないと思います。

 

喘息の吸入薬は、エアロゾルのイメージがつきやすいかと思います。”パフッ”という薬の感じがエアロゾルで、それによる感染がエアロゾル感染なのです。


一般の方は、エアロゾル感染についてあまり気にする必要がないと思います。厚生労働省の出している情報をもとに接触感染と飛沫感染に対応してください(5,9)。この2つは必読だと思います。

 

新しい感染症は人を疑心暗鬼にさせます。しかし少しでも分かりづらいことをイメージできると恐怖は和らぎます。エアロゾル感染ってなんだか恐ろしそうですが、吸入薬の”パフッ”ですよ、といわれるとイメージしやすのではないでしょうか。新型コロナウイルスに対しても、理性的な対応をしていきたいですね。

 

参考文献

(1)オルベスコ添付文書

https://medical.teijin-pharma.co.jp/iyaku/product/skhk4v0000000sow-att/skhk4v0000000sp6.pdf

 

 (2)オルベスコ50μgインヘラー112吸入用 帝人ファーマ ホームページ
https://medical.teijin-pharma.co.jp/iyaku/product/av/avi/avia/img/index.html

 

(3)Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China NEJM
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2002032?fbclid=IwAR1KUNZoFP6cNn4j06uqNqPH9qmvfBRh2Qv6X94CUY8-WtO3ylbd2HOTftI

 

(4)感染性胃腸炎における感染対策-ノロウイルスを中心に-
https://www.yoshida-pharm.com/2008/letter79/

 

(5)ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合 家庭内でご注意いただきたいこと ~8つのポイント~
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601721.pdf

 

(6)香港のアモイガーデン(Amoy Gardens)におけるSARSの集団発生について
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/eiken/kansen-center/shikkan/sa/sarsamoy1.html

 

(7)重症急性呼吸器症候群(SARS)の疫学に 関する統一見解文書 WHO
http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/update101who.pdf

 

(8)排せつ物で新型肺炎感染の恐れ 中国、注意呼び掛け 3/4(水) 17:11配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200304-00000138-kyodonews-soci

【北京共同】中国政府は4日、新型肺炎の診療方針を一部改定して公表し、排せつ物からの感染もあり得ると注意を呼び掛けた。またウイルスの遺伝子を増幅して有無を調べる検査に加え、血中からウイルス抗体が検出されれば感染確定の診断を下せるよう変更した。子どもや新生児に特徴的な症状も追加した。

 改定は3日付。「飛沫」「濃厚接触」「密閉空間における空気中を漂う微粒子『エーロゾル』」による感染のほか、尿や大便からウイルスが検出されており、接触やエーロゾル感染の恐れがあるとした。

 2月下旬に日本感染症学会と日本環境感染学会がまとめた文書も同様の指摘をしている。

 

(9)新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601720.pdf

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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