勤務医開業つれづれ日記・3

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これまで政府は、新型コロナ対策をおおむね「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」に沿って行ってきたし、今後もそうする可能性が高い【COVID-19】【新型コロナウイルス】【SARS-Cov-2】

はじめに

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日本政府の新型コロナ感染症対策は、場当たり的だ。

と思いますか?

実は、日本政府がこれまで行ってきた新型コロナウイルス対策は、おおむね厚生労働省が定めた

「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」

「政府行動計画」

「新型インフルエンザ等対策特別措置法」

に沿って行われてきていることが分かります。

今後おそらく「新型コロナウイルス対策ガイドライン」や「新型コロナウイルス対策特別措置法」などに修正され改定されていくと思われます。しかし3月2日現時点では、おおむねこの「新型インフル」ガイドラインに沿って対策が行われていく可能性が高いと思います。

 

ということは、このガイドラインを読めば、今後、どのようなことが起こり、それに対して政府がどのような対策を行うのか、だいたいの予想がつくということです。

 

実際のところ、このガイドラインは、今後どのようなことが起こると想定し、どのような対策を行うことになっているのでしょうか?

 

この記事では、それを解説しようと思います。以下、新型コロナウイルス感染症をCOVID-19と書いていきます。

 

目次

発生段階の区分

「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」(1) では新規の感染症の発生段階を4つに分けます。

海外発生期

国内発生早期

 地域未発生期

 地域発生期

国内感染期

 地域未発生期

 地域発生期

 地域感染期

小康期

 

その一歩手前の(2)のたたき台では下記のように分類されていました。

第一段階(海外発生期)
第二段階(国内発生早期)
第三段階
・感染拡大期(防止効果が期待)
・まん延期(防止効果が得られない)
・回復期(ピークを超えた)
第四段階(小康期)

「ガイドライン」では発生前の準備段階を未発生期(1-2)として5つの段階に分類しています。しかし今回COVID-19はすでに発生しているので、4段階として話を進めます。

 

海外発生期(第一段階)は海外で発生した場合です。

国内発生早期(第二段階)は各都道府県を地域未発生期地域発生期に分けます。国内で感染が発生し、まだ早い段階を指します。

国内感染期(第三段階)は患者の接触歴が疫学調査で追えなくなった状態をさします。各都道府県を地域未発生期、地域発生期、地域感染期の3つに分けています。

最後は小康期です。決して終息ではないことに注意が必要です。以前の記事でも書きましたが、休校などで一旦落ち着いた感染が、ふたたび勢いを増して二峰性のピークをつくることは十分ありえることなのです。

 

各段階の対応

海外発生期

各段階での対応はどうなるでしょうか。それぞれ見ていきたいと思います。「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」(1) ではよくわからない部分も多く、適宜(2)より引用しております。

海外発生期
 ウイルスの国内侵入をできるだけ阻止する。
 国内発生の体制整備

<国が行うこと、行ったこと>
 在外邦人の情報伝達、渡航自粛、発生国からの入国検疫、健康監視、停留措置 

 検疫の集約化 

 5空港(成田・羽田・関西・中部・福岡)

 4海港(横浜・神戸・関門・博多)
 (ダイヤモンド・プリンセス号の検疫)

 

第一段階は武漢で新型コロナウイルスの発生が認められた段階から、国内感染者が認められる前まで段階でした。

日本政府は横浜港でダイヤモンド・プリンセス号の検疫を行い、世界中の注目を集めました。横浜港だったのは偶然ではなく、検疫の集約化でおそらく4海港の一つである横浜港が選ばれたのだと思います。

さらに中国の湖北省・浙江省、韓国の大邱・慶尚北道清道郡に滞在歴がある人は日本への入国制限措置が実施されています。

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(新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議2010年6月10日https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/dl/infu100610-00.pdfより)

しかし水際対策が無効であることは過去のデータから証明されています。過去の対策総括会議では有効性に疑問がありながらも、提言されております。このように水際対策に科学的な根拠はないことに留意すべきです。

 

国内発生早期

国内発生早期
 国内での感染拡大をできるだけ阻止
<国が行うこと、行ったこと>
 帰国希望者のために帰国手段を検討(政府専用機、自衛隊機等)
 患者の入院措置(感染症指定医療機関)
 発熱外来の設置
 接触者の外出自粛要請
 発生地域での学校などの臨時休業
 集会、外出の自粛
 感染防止対策の周知徹底

国内で感染者が発見されてから、今までわたしたちが直面しているのがこの第二段階です。そして第三段階へ移行するところに来ているのだと思います。場合によっては第三段階であると考えてもいいかもしれません(後述)。

・武漢から帰国希望者をのせるため政府のチャーター機が5便出されています。

・医療では、発熱外来が設置されました。
・法律により、すべての患者さんを感染症指定医療機関に入院させることによって、感染をブロックしようとしています。

・政府は集会や外出の自粛を呼びかけています。

・そして今回、安倍首相は臨時休校を要請しました。

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今回休校になった学校は、法律的には区分1施設に該当し、感染リスクが高い施設に分類されます。

「各地域において、子どもたちへの感染拡大を防止する努力がなされていますが、ここ1、2週間が極めて重要な時期であります」
(令和2年2月27日 新型コロナウイルス感染症対策本部(第15回)
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202002/27corona.html
安倍総理発言内容 より)

いま政府はCOVID-19対策が、国内発生早期から国内感染期へ移行しつつあることを認識していると思われます。

なお、後述する「地域封じ込め」はこの国内発生早期を想定しているようです。

 

国内感染期

国内感染期
 健康被害を最小限に抑える
 医療機能、社会・経済機能への影響を最小限にする
<国が行うこと>
 感染防止対策の周知徹底
 入院措置の中止
 重症患者のみを入院させ、軽症者は自宅安静

 
現時点ですでに国内感染期だとする見方もあります。なぜなら「国内で、患者の接触歴が疫学調査で追えなくなった事例が生じた状態」を国内感染期としているためです。

今後行われるのは入院措置の中止だと思われます。「軽症でも入院」から一転してコロナでも「軽症は自宅安静」という変更に、一般市民が戸惑うかもしれません。

しかし医療機能を重症患者さんに重点的に振り向けるためには必要です。軽症の患者さんは自宅で療養し、重症の患者さんのみ病院で診療を行う、ということになると思います。

 

小康期

小康期
 いままでの対策を評価し、次の流行の波に備える

なんとか感染症がピークを超え、落ち着いた状態になったら第四段階です。

「やれやれ、頑張ったね」だけではなく、次に来る第二波に備えなくてはいけません。前回の記事のように、感染症は二峰性にピークが来る場合も多くあるからです。

 

ここが日本の弱いところです。きちんとしたフィードバックが必要です。

成功体験が変なバイアスにならないように「これをやったから成功したのに、なぜ次もやらない?」、あるいは失敗体験で「なぜ繰り返し同じことをやる?」という非科学的な論調に惑わされないように、きちんとデータに基づき感染症対策をしていただきたいです。

 

国がまだ行っていない対策について

国がまだ行っていない対策、それは「地域封じ込め」です。実は、日本でも検討されております(2)。基本的人権の尊重があるために、日本で行われる可能性は低いと思いますが、ゼロではないと考えております。

地域封じ込め
・住民全体の外出自粛
・地域内外の移動の自粛
・地域外に出る人の疫学調査
・集会の自粛
・公共交通機関の運行自粛
・公共施設の閉鎖
・救援物資による生活支援
・自衛隊への協力要請
(感染拡大防止に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/090217keikaku-04.pdfより)

「地域封じ込め」は武漢をはじめとして中国各地で行っておりますが、日本ではかなりハードルが高い施策だと思われます。しかし、日本でも検討はされているのです。

「地域封じ込め」の場合、公共交通機関の運行自粛や、公共施設の閉鎖、地域から移動を制限し、救援物資を放出し、自衛隊に協力を要請します。

いま武漢で行われている「地域封じ込め」を、日本でもやる可能性があることを頭の片隅に入れておくことが必要です。


国が考えている被害について

あくまで新型インフルエンザ対策(2)での話ですが、全人口の25%が発症し、医療機関を受診する患者数は最大2500万人を想定しています。過去に流行したインフルエンザから推計すると入院患者は53万人〜200万人死亡者は17万人〜64万人に上る可能性があります。

 

f:id:med2016:20200302140035p:plain(新型インフルエンザ発生時の社会経済状況の想定(一つの例)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/090217keikaku-12.pdfより)

新規感染症による大量の死者が出た場合の埋葬や火葬についても検討がされております(1)。

 

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(新型インフルエンザ発生時の社会経済状況の想定(一つの例)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/090217keikaku-12.pdfより) 

致死率は0.5〜2%欠勤率は20〜40%を想定し、経済的な損失は20〜40兆円にも上る可能性があります。

 

まとめ

以上が「新型インフルエンザ対策ガイドライン」(1)に載っている対策の大まかな部分です。感染症の4段階の対応、想定する被害の甚大さ、そして経済的な損失について検討されています。皆様どのようにお感じになられたでしょうか。

 

未知の感染症に対して、日本政府は右往左往しながら対策を立てているように思えるかもしれません。

 

しかし前回の新型インフルエンザの教訓をもとに「新型インフルエンザ対策ガイドライン」が策定されております。この「ガイドライン」を手元において見てみると、政府は順当に対策を行っていることがわかると思います。COVID-19対策はこの「ガイドライン」の延長上で行われていると考えられます。

 

いま全国、全世界でCOVID-19に対して多くの人が取り組んでいます。感情的でセンセーショナルな報道で、無駄にエネルギーを消耗してはいけません(6)。敵はCOVID-19であり、人ではありません。混乱しパニックになることは全く感染症対策に利益はありません。

 

つねに考えることを止めてはいけません。感染症との戦いは感情に流されると負けてしまいます。いまが本当に運命の分かれ目です。

 

まだCOVID-19は封じ込めることができる段階です。手洗いが本当に大事です。最低15秒以上かけて手を洗いましょう。咳エチケットが大事です。熱が出たらすぐに休むことが大事です。疲れをためず、睡眠を充分にとりましょう。高齢者や合併症のある方を守りましょう。タバコを吸っている人はすぐに禁煙しましょう。

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

参考文献など

(1)「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」厚生労働省

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/keikaku/pdf/gl_guideline.pdf

(2)

「新型インフルエンザ対策ガイドライン」について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/09.html

(3)新型コロナウイルス感染症対策本部(第 16 回)
令和2年3月1日(日)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r020301.pdf

(4)新型コロナ座談会 連鎖断てるか、この1~2週が正念場
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO56113520X20C20A2M10800?s=4

(5)埋火葬の円滑な実施に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/090217keikaku-11.pdf

(5)新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査に関する報道の事実誤認について
2020年3月1日 国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9441-covid14-15.html

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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