勤務医開業つれづれ日記・3

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【新型コロナウイルス】新型コロナウィルスが他の感染症に比べてどのくらい恐ろしいのか、グラフで比較してみた【COVID-19】【2019-nCoV】

 

はじめに 

新型コロナウイルスは恐ろしいのでしょうか?あるいは、恐ろしくないのでしょうか?

 

今回は感染症における基本的な3つの数字である致死率、患者数、伝染りやすさを、グラフを使って他の感染症と比べてみたいと思います。

 

 

致死率

新型コロナウイルスにかかり死亡する方はいます。致死率は中国とそれ以外で大きく異なっています。2月15日、現段階での中国国内での致死率は2%前後、中国国外では0.5%と推定されています(1)。グラフではこのようになります。

 

1-A. 新型コロナ 中国国内と国外比較(致死率)

f:id:med2016:20200229144431p:plain

 

SARSは約8000人が罹患し死者は800人、致死率が9.6%と報告されています。グラフの左側にSARSの値を入れてみましょう。

 

1-B. 新型コロナとSARS比較(致死率) 

f:id:med2016:20200229144452p:plain

 

SARSの致死率は高いです。新型コロナウイルスと比較するとかなり致死率が違います。致死率が高いと、死ぬ危険性が高い感染症であるということです。

 

さらにエボラ出血熱をグラフの左側に加えてみます。世界中から恐れられているエボラ出血熱は平均の致死率が50%です。

 

1-C. 新型コロナとエボラ出血熱比較(致死率)

f:id:med2016:20200229144511p:plain

 

グラフを見るとわかりますが、SARSはかなり恐ろしい病気ではありますが、エボラ出血熱はSARSを上回る恐ろしい疾患であるかがわかると思います。WHOが必死になって制圧しようとしていた理由がこの致死率の高さです。

 

ちなみに季節性インフルエンザは致死率が0.1%以下です。インフルよりは新型コロナウイルスは致死率が高いのですが、新型コロナウイルスは今まで流行した新型の感染症に比べて、極端に致死率が高いわけではありません。

 

まとめ1: 新型コロナウイルスの致死率はSARSより低く、エボラ出血熱よりかなり低いが、季節性インフルよりは高い

 

患者数

中国国内でも国外でも患者数が急激に増えています。WHOの2月14日データ(1)を使用してみます。中国国内では48,548人、中国国外では505人の患者さんがいます。

 

2-A. 新型コロナ 中国国内と国外比較(患者数)

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 やはり中国の感染者がすごい多いです。

 

では2009年に流行して大騒ぎになった新型インフルエンザ(以下、新型インフル2009)はどうでしょう?新型インフルは2009-10年シーズンに日本国内では150万人がかかっています(2)。日本における新型インフル2009の患者数を、新型コロナのグラフの左側に入れてみます。

 

2-B. 新型コロナと新型インフル2009(患者数)

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新型インフル2009は日本国内だけでも、新型コロナウイルスの感染者数よりはるかに多い感染者を出しています。

 

みなさんは2009年にこのような新しい未知の感染症を経験していることを、忘れていませんか?新型インフルって実はこんなに流行ったんです。そして日本国内でも200人の死亡者を出しています。

 

さらに毎年流行する季節性インフルは、日本では1000万人が罹患すると言われています(3)。2016から18年の3シーズンでも991万人から1458万人まで大きな幅があるのですが、ここでは1000万人でグラフを作ってみました。どうなるでしょう。

 

2-C. 新型コロナと季節性インフル(患者数)

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グラフを見てわかるように、新型コロナウイルスよりはるかに多い新型インフル2009でしたが、それでも季節性インフルの前には大したことがないように思えます。新型インフル2009ですら、インフルエンザの毎年の変動幅ぐらいしかありません。

 

季節性インフルは圧倒的な流行をおこします。しかも日本でも毎年数千人の死者を出しているのです。ですから医療関係者は「新型コロナウイルスもいいけど、まずインフルの予防接種してね」というのです。

 

一方、SARSの患者数は約8000人(4)、MERSは2220人(5)と非常に少なくなっています。これらの新型感染症と比べると新型コロナウイルスは広がっているのです。

 

まとめ2:新型コロナウイルスの患者数は、新型インフル2009よりかなり少なく、季節性インフルと比べてごくごく少ない。しかしSARSやMERSに比べると多い。

 

伝染りやすさ

伝染りやすさの度合いを、専門用語では基本再生産数といいます。季節性インフル、新型インフル2009そして新型コロナウイルスの基本再生算数はだいたい2−3前後と言われています(6)。これらはみな接触感染と飛沫感染を起こします。

新型コロナウイルスは暫定的に2,SARSは2−4と言われているので中央値の3、新型インフル2009は2.3をそれぞれ入れてみます。

 

3-A. 新型コロナとSARS、新型インフル2009比較(基本再生産数)

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では、はしか(麻しん)はどうでしょう?

はしかは空気感染します。はしかの基本再生産数は12−18であり(7)、中央値の15をグラフの左側に入れてみます。

 

3-B. 新型コロナとはしか比較(基本再生産数)

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はしかの伝染りやすさがずば抜けています。はしかの再生産数の高い値こそが、空気感染の恐ろしさなのです。

 

新型コロナがエアロゾル感染するとかしないとか、感染様式についていろいろ言われていますが、一般には伝染りやすいかどうかだけで判断するべきです。

 

このグラフを見ると「新型コロナが空気感染するというのはウソ」あるいは「もしも空気感染してもショボい」ということが一発で分ると思います。

 

まとめ3:新型コロナウイルスの伝染りやすさはインフルエンザと同じぐらい。空気感染するはしか(麻しん)にくらべたらかなり低い。

 

以上より新型コロナウイルスの基本的なデータが出てきました。基本的な数字をつかって判断していくことが可能です。以下にいくつか例をあげてみます。

 

中国国内で死者1000人を超えた!という報道の意味 

死亡者が1000人を超えた、という報道がされていました。あおるようなニュースでしたが、算数的にはどんな意味があるのでしょう。

 

2月14日のWHOデータでは1,381人の死亡が確認されています。患者数は前述の通り48,548人(2-A)です。割合を計算してみましょう。

 

1,381 ÷ 48,548 = 0.028

 

直近で致死率が2%でしたが、今回は2.8%になっています。つまり、

 

患者さんが増えたから死亡者も増えた。

死者1000人でも中国国内の致死率はほとんど変わりない

 

、ということです。

 

最初のレポートでは致死率3%という報告でした。おおむね2−3%の致死率という枠を超えていません。死者1000人超えによる致死率2%→2.8%という数字の変動がどんなことを意味するかさらに考えてみると、

 

1)2%より少し高めなので、重症患者さんを中心に中国ではカウントしている可能性

(軽症患者さんは中国の患者数に入っていないかも)

 

2)今後、この数字が上昇するとウイルス変異の可能性(今は単なる誤差範囲)

 

3)もし中国でも海外と同じ致死率0.5%なら、死亡者の200倍の感染患者がいるはずなので、実際の患者数は20万人程度いるかも知れない。

 

ということが算数でかんたんに予想できます。

もちろん3)の20万人は計算上の話であり、高濃度でウイルス感染しているために中国国内では致死率が海外よりも高くなっている、と専門家は考えています。

 

日本ではじめての死亡患者が出た!という意味

2月13日に新型コロナウイルスによる日本で初の死亡者が出ました。

新型コロナウイルスによる死亡患者さん発生の予想は前記事で書いておりました。算数的に2%なら50人に1人、0.5%なら200人に1人の死亡者が出る計算です。

 

現在クルーズ船のことがあり、厚生労働省の報告では日本の感染者総数がよくわからない状況になっておりますが、2月13日現在、日本の感染者数は203人になっております(8)。

 

1 ÷ 203 = 0.0049

 

203人で死亡患者さんが1人出ているということは、0.5%からの推測としてぴったりになります。

 

しかし、もし厚生労働省がクルーズ船をカウントしないことにした場合、日本人の感染者数は29人になります。致死率を計算してみると、

 

1 ÷ 29 = 0.034

 

となり、日本の致死率は3.4%になってしまいます。一気に日本は中国国内なみの致死率になります。日本では中国並みの致死率が発生していることになります。

 

一方、他の海外同様の致死率なら、200人いて1人の死亡です。もしかしたら、

 

200−29=171人

 

171人程度の未確認感染者が、日本国内にいる可能性があります。

 

「日本に何千、何万人も新型コロナウイルス感染者がすでにいる」という説はどう考える?

雑誌によっては「何千、何万もの新型コロナウイルスの感染者が日本にいるかも」と脅している記事があります。その場合、仮に1万人の感染者がいるとしたら致死率は0.01%程度になります。

 

1 ÷ 10000 = 0.0001

 

日本の死亡者が1人しかいない現状では、世界的な致死率は0.5%ですから

「数千、数万人の患者さんがいるのに1人しか死んでないなら、

仮に1万人で致死率0.01%。つまり、

日本医療は世界最高

というマスコミの意図とは逆の結論が出てきてしまうのです。

 

などなど算数レベルの計算を使って、新型コロナウイルスと他の感染症を比べることができると思います。

 

まとめ

今回のグラフからは、新型コロナウイルスのこのような特徴がわかります。

 

1)致死率はSARSやエボラ出血熱よりずっと低いが、季節性インフルよりは高い。

 

2)患者数、死亡者数は新型インフル2009のほうがかなり多く、季節性インフルはさらに多い。しかしSARSやMERSより多い。

 

3)伝染りやすさはインフルエンザ並みで、空気感染のはしかよりずっと低い。

 

一般の方は「よくわからないけど新型コロナウイルスは恐ろしい」という印象を持っていることでしょう。今回はデータを使い、他の感染症とグラフを用いて比較してみました。新型コロナウイルスに対する印象が変わったのなら、大変うれしいです。

 

ただし対策を放り出してはいけません。感染症は指数関数的に増えていきます。気を抜くと爆発的な増加が起きてしまいます。現在、全世界が新型コロナウイルスを全力で封じ込めを行っています。軽々しい気持ちで感染制御に反するような行動を行えば、日本国内だけでなく世界中から非難されることになります。

 

新型コロナウイルスを恐れず、しかししっかりと十分な対策を取りましょう。

 

 

 

参考文献

(1) Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Situation Report 25

Data as reported by 14 February 2020 

https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200214-sitrep-25-covid-19.pdf?sfvrsn=61dda7d_2 

(2) パンデミック (H1N1) 2009によるインフルエンザ脳症

水口 雅 脳と発達 2011年 43 巻 2 号 96-99

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn/43/2/43_96/_pdf/-char/ja

(3) 2019年5月24日 インフルエンザの発生状況について

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000509899.pdf

(4) SARS(重症急性呼吸器症候群)とは

国立感染症研究所

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/414-sars-intro.html

(5) MERSの最新状況 2018年5月

厚生労働省検疫所 

https://www.forth.go.jp/topics/2018/06151301.html 

(6) Early Transmission Dynamics in Wuhan, China, of Novel Coronavirus-Infected Pneumonia.

N Engl J Med. 2020 Jan 29 

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001316

(7) 麻しんに関する緊急情報

2016年8月25日 国立感染症研究所感染症疫学センター

https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/655-disease-based/ma/measles/idsc/6709-20160825.html

(8) 新型ウイルス感染、中国で激増も 「重大な変化なし」 WHO

BBC 2020年02月14日

https://www.bbc.com/japanese/51498822

 

 

関連記事

それでは新型コロナウイルスに楽観的に対応して良いのでしょうか?いいえ、そうではありません。日本政府は「新型インフルエンザ対策ガイドライン」において、 

・全人口の25%が発症

・患者数は最大2500万人

・入院患者は53万人〜200万人

・死亡者は17万人〜64万人

という予想をすでに10年前(平成21年)に設定して対応していることを書いております。ご参考にしてください。 

kaigyou-turezure.hatenablog.jp

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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