勤務医開業つれづれ日記・3

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【感想】『マイ・ブロークン・マリコ』平庫 ワカ (著) 疾走する絶望感 とんでもない新人デビュー作!【漫画おすすめ】追記:はてなブログで紹介されました!

はじめに

一言で言うなら、圧倒的。

とんでもない作品が出ましたね。平庫ワカ先生の『マイ・ブロークン・マリコ』です。これでデビュー作ということですから、すごすぎます。

 

イカガワマリコ(マリコ)はシイノトモヨ(シイちゃん)の高校からの友人です。第一話冒頭のマリコの自殺の報道からお話は始まります。

手紙魔のマリコが、何も残さずに自殺してしまいます。いままでにいっぱいシイちゃんに手紙を書いていましたが、最後だけはシイちゃんにも何も残さずにこの世を去ってしまいます。シイちゃんは理不尽な扱いをされていた両親からマリコの遺骨を奪い取って、逃げ出します。 

 

画力がすごい。お話がすごい。そして魅力がすごい。

『マイ・ブロークン・マリコ』という素晴らしい作品を3つのポイントを中心に感想を述べてみたいと思います。かなりおすすめの作品です。 

 

あたしは骨になったマリコと、最初で最後の旅に出た。 柄の悪いOLのシイノは親友の死を知り、ある行動を決意した。女同士の魂の結びつきを描く鮮烈なロマンシスストーリー! 

 

 目次

疾走する絶望感  

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『マイ・ブロークン・マリコ』より)

『マイ・ブロークン・マリコ』は絶望感が疾走しています。誰にも目指す出口がありません。主人公のシイちゃんも友人のマリコも、閉塞した生活の中から行くべき方向がまるで見えません。

 

マリコは冒頭から自殺しています。シイちゃんはマリコを思い出しながら、自分がどうしたいのか葛藤していきます。

 

躍動する肉体と、陰鬱な精神。

飛び散る血しぶきと、飛べない精神。

 

『マイ・ブロークン・マリコ』では絶望感や怒りが登場人物の原動力になっています。疾走する絶望感の中で、シイちゃんはマリコのことを繰り返し思い出します。シイちゃんは、あてのない旅の末に一体何をつかむことができるのでしょう。

 

 

白と黒のコントラスト 

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『マイ・ブロークン・マリコ』より)

『マイ・ブロークン・マリコ』は絵がとても上手いです。白と黒のコントラストが絶妙です。もちろんほとんどの漫画はモノトーンなんですが、この作品に限っては白と黒を強烈に感じます。 

 

黒いシーンが続きます。夜行の闇をくぐって、酔っ払って野宿した夜を越えます。そして最後のページがほとんど真っ白に見えるのは気のせいではありません。

最後にきっとマリコの伝えたいことが、シイちゃんには伝わったに違いないからです。それはきっと、明るい白い色に違いありません。そうであってほしいと願うばかりです。

 

鎮魂と救済 

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『マイ・ブロークン・マリコ』より) 

夜行バスに乗っているシイちゃんが、小さな子供のころのマリコを抱きかかえているシーンです。マリコが頬に絆創膏を貼っているのが痛々しいです。

今はもう、お骨になってしまっているマリコをシイちゃんが優しく抱きかかえているのです。胸に響くような絵です。 

 

『マイ・ブロークン・マリコ』は鎮魂と救済のお話です。

とても大切で、今はいないマリコに何を言おう。シイちゃん自身は救われたい。でもそれ以上に、ここにいないマリコが幸せになったって信じたい。そうシイちゃんは思っているはずです。

 

”……うん”

 

シイちゃんの最後のセリフです。シイちゃんの乱暴な遺骨ドロボーの逃避行で、マリコの魂はきっとやすらぎを得たに違いありません。

最後の最後の”うん”は、マリコに対する相づちでもあり、シイちゃん自身が間違っていなかったという肯定の”うん”に違いありません。シイちゃんはほんの少しだけ救済されたのでしょう。

 

まとめ

『マイ・ブロークン・マリコ』は本当に素晴らしい作品でした。

「疾走する絶望感」「白と黒のコントラスト」そして「鎮魂と救済」について感想を書いてみました。

白と黒のコントラストを感じさせる絵的な才能を感じますし、絶望感とその先にあるささやかな救済が心にしみます。

 

これがデビュー作だなんて、私たちは何かとんでもないものを見ているのではないでしょうか。

この魅力あふれる作品が多くの人に届くといいな、と思います。きっと必要としてる人がいるはず。そんな人に届いてほしい作品でした。めちゃくちゃにオススメでした。

 

追記:はてなブログで紹介されました

ありがとうございます。とてもうれしいです。これからもよろしくお願いいたします。 

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ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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