勤務医開業つれづれ日記・3

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【空の青さを知る人よ】二次創作「空の青 Rayleigh scattering」

 

 

映画『空の青さを知る人よ』の二次創作です。嫌いな方はご注意ください。

 

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『空の青さを知る人よ』のエンドロールで流れている、本編その後のシーンの二次創作の妄想です。pixivに載せております。

 

個人的にはあおいに『空の青さを知る人よ』を歌って欲しかったです。

そして映画での約束通りに、慎之介とあおいは一緒にバンドを組んでベースを弾いてほしかった。そんな妄想を盛り込みました。

 

嫌いな方はご注意ください。

www.pixiv.net

 

 

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3月末、まだ秩父には冷たい風が吹いている。あおいは空に目をやる。空は晴れ渡り、その青さが目にしみる。


しんのがいなくなってから、わけもなく空を見上げるのが、あおいのくせになった。

 

今日は、あおいが東京に出発する日だった。

 

「東京に行くのに保護者同伴なんて、全然ロックじゃない」

 

ベースを抱えて、それ以外ほんの少しだけの手荷物が東京に行くあおいの全てだった。
慎之介は、あおいの手荷物を軽く持ち上げて言った。

 

「この世界はな、コネと運なんだ。上手けりゃどうにかなるってもんじゃねえ」

 

慎之介は自分で言いながら、以前に誰かに言ったセリフだな、と思いながらニヤついた。
あかねはあおいのことが心配で心配で、慎之介に相談していたのだ。

 

「だから、俺のコネと運は使えるうちに使っとけよ」

 

慎之介は、あおいを子供扱いしている。

 

「分かってないみたいだけど、あれですごいんだぜ、新渡戸さん」

 

「げー。慎之介の運とコネって、あれかよ」

 

あおいは大きく舌をベー、と出して吐きそうな仕草をした。

 

「おまえ、新渡戸さんに絶対にそんな事言うなよ。あおいは前の演奏で気に入られているんだから」

 

しんのと一緒に東京に行くんだったら、良かったのにな。

 

私があかねだったら、しんのと一緒に行っていたかなぁ……。
小さい子供と二人っきりで、妹はお姉のこと信じ切っていて、やっぱ東京は行けないよなぁ。

 

しんののかわりに、31歳の慎之介が横にいる。

しかも、あか姉にべた惚れの31歳のヘタレオヤジだ。

 

「おまえな、

 

『早く着きたければひとりで行け。
遠くに行きたければみんなで行け』

 

って言うだろ」

 

大人な慎之介が言う。

 

「なにそれ」

 

「俺だって、ちゃんと前に進んでんだよ。お前より年の分だけな」

 

慎之介は空を見上げた。しんのが消えた空を見ているのかもしれない。

 

「誰に言われたんだか」

 

もちろん、あおいは覚えている。
しんのが慎之介に言った言葉だ。ずっと忘れることはない。

 

「じゃあ慎之介、バンド組んでよ」

 

冗談めかして、あおいは言う。

 

「いずれな」

 

そんな二人の会話を、あかねは泣き出しそうな顔をしながら見ていた。

 

「あおいは無茶したらダメだからね。慎之介もあかねのこと、お願いね」

 

「ああ、心配するな。あかねも気をつけて。すぐ連絡するよ」

 

あおいから見て慎之介とあかねの関係は、一歩進んだ感じがしている。

 

お互い離れていた13年間は、完全には埋まっていない気がするし、ぎこちなさはある。
でも、時間の分だけお互いに成長して、お互いの生き方を尊重できるようになっているのかもしれない。

 

あおいは下唇をかみながら、あかねの左手を取って、その手を両手でなでた。何度もなでた。

少しためらって、それからあかねに抱きついた。

 

「あか姉、勝手に家離れて、ごめん」

 

あかねの体温が体にしみてきて、涙が出そうになったけど、こらえた。

 

「あおいがあやまることじゃないよ。あおいなら大丈夫だよ」

 

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それから3年。


しばらくしてから、あおいは慎之介と一緒のバンドを組んだ。

新渡戸さんの仕事の合間に作っていたデモが、目に止まったのだ。

 

「あおい、うちのベースやってみるか」

 

慎之介が組んでいるメンバーに、あおいをベースに入れて小さなライブをやった。
すると、SNSでかなりの人気が出たのだ。

 

「バンド名、どうする?」

 

「ガンダーラII」

 

「ない」

 

慎之介は昔の卒業アルバムを開いて、あかねのページをめくりながらポツリと言った

 

「”空の青”か」

 

あおいは、その言葉にピクリとした。何かが心のなかにストンと落ちた気がした。

 

「それいいかも!”空の青”にしよう」

 

「あかねがいいって言ったら、バンド名にもらうか」

 

「いいよ、絶対いい!あか姉も喜ぶよ」


バンド「空の青」は快進撃を続けた。
慎之介のボーカルは低音がとても気持ちよかった。
慎之介目当てのファンも結構いた。でも慎之介は満足していなかった。

 

「あおい、ボーカルやるか?」


「えっ?」

 

「昔のガンダーラ、気合入っていて、よかったじゃねえか」

 

「いや、あれは若気の至りというか、目に見えるものすべてに怒っていたっていうか……」

 

「歌ってみろよ。『空の青さを知る人よ』」


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秩父市内のライブハウスは超満員だった。早々にチケットはソールドアウトした。

単純に地元出身のライブということではなく、「空の青」はSNSで隠れた人気のバンドにのし上がっていたからだ。

当日、ライブハウスは若者ばかりだった。

 

「えー、「空の青」です。今日はありがとう」

慎之介のMCは流暢で、場馴れしている感じがする。客席は熱気で充満していた。

離れて客席の一番うしろに、あかねがいた。胸元で両手をギュッと握りしめていた。

 

「ここに帰ってくるときほど落ち着くことはないです。やっぱいいね」

 

慎之介に大きな歓声が上がる。でも慎之介が見ているのは、あかねだけだった。

 

「でも、地元なので緊張もしています」

 

順調にライブは進んでいった。
あおいのベースも慎之介のギターもうなりを上げていた。

慎之介はライブ中ずっと使っていた、ギブソンのレスポールからファイアーバード、
”あかねスペシャル”にギターを持ち替えた。

 

「ラストの曲になりますが、ボーカル変わります」

 

えー、とも、きゃー、ともつかない歓声が巻き起こる。

慎之介は”あかねスペシャル”で『空の青さを知る人よ』のイントロを軽快に奏でる。

そして、あおいに流し目をして、前に向かってあごをしゃくった。

 

(いけ、目玉スター)

 

あおいのボーカルが『空の青さを知る人よ』の歌詞をなぞる。


”ぜんぜん好きじゃなかった”


あおいはたった一人のために歌っていた。

 

ねえ、しんの。聞こえてる?

 

わたしの音だよ。

 

わたしたちの音だよ。

 

わたしたちは、もっと遠くに行くよ。

 

しんの、もう置いて行かないよ。


”と ど け”


最後の一音のあと、地鳴りのような歓声が聞こえた。
あか姉が涙を流している。


あのとき、しんのが見せてくれた
空の青さを知りたいから。

 

もっとはやく、もっと遠くに。

 

一緒に行こう。

 


<了>

 

 

 

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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