勤務医開業つれづれ日記・3

おすすめ漫画8割、ライフハック2割の院長ブログです。

【空の青さを知る人よ】二次創作「さよならも言わずに」

ここのところpixivで妄想を書き連ねていました。今回は映画『空の青さを知る人よ』です。賛否両論が巻き起こっていますが、自分はとっても良かったです。

 

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で、二次創作を書いてしまいました。

 

映画『空の青さを知る人よ』ラストシーンの二次創作です。最後はやっぱり、しんのとあおいのラブシーンになってほしかった。ただただ、そんな想いをこめて妄想しました。嫌いな方はお気をつけください。

※この作品の他にpixivでは映画中間のラブシーンと、エンドロールの創作も投稿しています。よろしくお願いいたします。

※ネタバレ注意

www.pixiv.net

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 

 

「二人で行けって、あおいもしんのも、ふたりとも乗らないの?」

 

あかねのジムニーの前まで4人は歩いて、車で帰ろうと話をしていたところだった。
あおいが、急に慎之介とあかねの二人で帰れ、と言い出したのだ。

「しんのも随分疲れているみたいだし。二人で少し休んでからゆっくりタクシーでも拾うよ」

あかねをトンネルから助け出して、しんのはめっきり口数が減った。
まるで、しんのが消えてしまう前ぶれみたいだった。

「ね、しんの?」

あおいらしくもなく、しんのの袖口を引っ張って聞いた。

「ああ、確かに疲れたかもな。少し休んでいくわ」

しんのは、お堂を出るときに背中に背負っていた”あかねスペシャル”をおろして、慎之介に渡した。

「弦は、あかねがニッケルで張り直してくれた。宝物だろ。大事にしろよ」

「あ、ああ」

慎之介はちょっとためらいながら、しんのからギターを受け取った。
”あかねスペシャル”を手にしたこの感覚は、ずっと忘れていたものだった。
そしてお堂に来た目的をすっかり忘れていたことに気づいた。

”あかねスペシャル”を持って東京に戻ろうか、それともそのまま置いておいて、忘れてしまおうか。
あかねに対する自分の気持と一緒に、振り向かないようにしようか。
いろいろなことを悩んでいたが、あかね本人を目の前にすると何もかもが吹き飛んでしまう。

「じゃあ、行くけど。何かあったらすぐ連絡してね」

あかねは慎之介を乗せて、ゆっくりとジムニーを出発させた。

 

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 

 

慎之介は、あかねとジムニーの中で二人きりになって緊張していた。

「今回は無事でよかったな」

 

「うん。慎之介にも、みんなにも心配かけちゃったね」

 

あかねの口調は今までと変わらない。トンネルの事故の前と後も、13年前とも変わらない。
それに引き換え、慎之介は自分が変わったことに気づいている。

 

「俺はどうして、こうなったんだろうな」

 

慎之介は、最初からあかねのために走り出せなかった歯がゆい自分を、こう言うしかなかった。

 

「どうして?今の慎之介も頑張っているよ。でしょ?」

 

「どうだかな」

 

慎之介は、なにげなく手にしていた”あかねスペシャル”で音を出した。

「ガンダーラ」を軽く引き、13年も触っていないのにその感触に違和感がないのに驚いた。
これが自分の探していた音だったのかもしれない。

慎之介は『空の青さを知る人よ』を引き始めた。
気持ちがいい音だ。高校の頃より、ずっと”あかねスペシャル”の良さがわかる。

鼻歌を歌いながら慎之介は”あかねスペシャル”で『空の青さを知る人よ』を奏でた。

 

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 

 

あおいは、あかねと慎之介が乗ったジムニーが遠ざかっていくのを見ていた。
となりには、しんのが疲れた感じでボーッと立っていた。

 

「なんか俺、疲れたわ」

 

あかねは、しんのをそばのベンチに連れいていって、一緒に横に座ろうとした。
すると、しんのはベンチであおいの膝に頭をのせて横になった。
しんのはぐったりしている。

 

「”あかねスペシャル”、慎之介に渡せたね」

 

空は青かったけど、すこしだけ夕焼けが混じってきていた。
あおいは、しんのを膝枕しながら、ぴょんと出ているしんのの前髪を意味もなく触っていた。

 

(もう、行っちゃうの?しんの)

 

「ああ。お堂から出たな。俺も、”あかねスペシャル”も」

 

目をつぶって、ニヤニヤしながらしんのはつぶやく。
きっと、しんのにはとんでもなく楽観的で明るい未来が見えているに違いない。
そして31歳の慎之介なら、自分なら、つらいことも乗り越えられるって確信したに違いない。

 

「ありがとな、あおい。お前がいなかったら俺も”あかねスペシャル”もあのままだった」

「うん」

 

あおいはめずらしく素直にうなずいた。しんのはふざけて言っているわけじゃないんだ。

 

「ねえ、しんの。起きてる?」

 

しんのの呼吸が静かだ。気のせいか、しんのの気配が薄くなっている感じがする。

 

「ん」

 

しんのは目を閉じたままだ。
こんなに近いのに、こんなに遠い。

(しんのは私を置いていくの?もう行っちゃうの?)

 

「お、ギターの音だ」

 

目を閉じたままの、しんのは耳を傾けて小さな音を拾うように聞いている。

 

「え、聞こえないよ」

あおいには風の音しか聞こえない。
しんののおでこに手を当てる。しんのは、まだここにいる。
でも、不安がこみ上げてくる。

 

「”あかねスペシャル”だな。『空の青さを知る人よ』だ。この曲、出来上がってたんだな」

 

あおいは前かがみになって、しんののおでこに息を吹きかける。
さっき、しんのがあおいにしたように、ふーふー息をかける。

 

「なんだよ、あお。俺、泣いてないし」

 

ポタポタ涙が流れているのは、あおいのほうだった。
泣きながら、ふうふう、しんののおでこに息を吹きかけては、こらえきれずに嗚咽した。

 

「あお、泣くな。また会えるさ」

 

しんのは、あおいの頭を優しくなでた。
そして目を閉じたままニヤリと笑った。

 

「泣いて、ない、し……」

ポロポロとあふれてくる涙をふきもせず、あおいは下唇をかみしめている。

 

「ありがとな、目玉スター」

 

しんのは、ゆっくりと眠そうに目を開けて、あおいの頭をなでながら優しく言った。

 

(もう行っちゃうんだね、しんの)

 

あおいは、しんのの手に包まれるように、自分のくちびるをしんののくちびるに重ねた。

風が吹いて、あおいの前髪を持ち上げる。
触れていたはずの、くちびるの感触が急に軽くなった。
しんのの姿は見えなくなっていた。

 

「さよならも言わずに。バカしんの」

 

赤く染まった空から、あふれだすような光のシャワーに囲まれて、あおいはベンチから立ち上がった。
太陽を背にして、反対側のまだ青い空を見上げて言った。

 

「あー、空。くっそ青い」


あおいは、しんのが知っている空の青さを知りたかった。

 

ずっと追いかけていこう。

 

しんの、行くよ。

 

きっと届く。

 

きっと。

 


<了>

 

 

 

 

 

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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