【書評】『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』と童話『モモ』、自分が変われる3つの理由 ジェイク・ナップ (著), ジョン・ゼラツキー (著),
はじめに
『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』読みました。デジタル時代の新しい時間術を体現した本です。これはすごい良かったです。
日本語タイトルは「時間術+大全」で、時間術を網羅的に集めているような本という印象ですが、実際には一つのポリシーをもって話は進んでいきます。原題は"MAKE TIME"(時間を作る)です。まさに原題のほうがこの本の内容を示していると思います。
デジタルデバイスが生活の中に入り込んで当たり前になった現代、自分たちの時間を自分たちのために取り戻すための新しい考え方がここにあります。児童文学の傑作『モモ』に出てくる時間泥棒の解説みたいになってきましたね。
3つの理由を『モモ』にからめて本書をおすすめしていきたいと思います。2019年の書籍の中でも、まちがいなくヒットな作品だと思います。
時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」 単行本(ソフトカバー) – 2019/6/20 ジェイク・ナップ (著), ジョン・ゼラツキー (著), 櫻井 祐子 (翻訳)
目次
1)「多忙中毒」と「無限の泉」
みなさん『モモ』は読みましたか?児童文学の傑作です。
『モモ』では、町の人達はモモに話を聞いてもらうと幸せな気持ちになります。でも時間泥棒がやってきてみんな仕事に追われて忙しくなって、モモと話をすることもできずどんどん不幸せになっていきます。
いま、みなさんは周りの人と話をして幸せを感じていますか?時間やお金に追われて本当の幸せを見失っていませんか?
『時間術大全』では「多忙中毒」という書き方をしていますが、朝から晩までスケジュールがいっぱいの生活をしているのではないでしょうか。優秀な人ほど、すき間なく仕事が埋まっているはずです。
そして数ヶ月たって、自分が一体何をやったのか振り返ってみるとがく然とします。自分の数ヶ月、そして1年は一体何だったのでしょう?あれほど忙しかったのに、自分の中には何も残っていません。まさに『モモ』の「時間泥棒」たちが私たちの時間を盗んでいったようです。
さらに『時間術大全』では「無限の泉」といってスマホアプリやYouTube、Netflixなど無限に楽しむことができるアイテムが出現しました。いまでは「多忙中毒」と「無限の泉」が私たちをとらえて離しません。『モモ』よりさらに手強い敵が出現しているのです。
一方、私たちは自分の「モモ」とはどう接しているでしょうか?両親や家族、子どもたちと楽しく話をしている時間はあるでしょうか?
iPhoneを見ている時間はあるのに子どもたちとゆっくり話をする時間はなかったりしていませんか?びっしり詰まった予定表にさらに仕事をねじ込むことはできても、夫婦でゆっくり食事をする時間はありますか?
現代の「多忙中毒」と「無限の泉」は恐ろしいワナです。気が付かないと人々は乗っ取られてしまいます。まるで『モモ』の物語のように。
2)4つの時間術テクニック
そこで『時間術大全』作者のジェイクとJZは強力なデジタルデトックスを含めた時間術を提案します。
歴史的に有名な時間術や、みんなが知らないマニアックな時間術を網羅的に紹介しているのが「時間術+大全」だと思います。しかし本書は違います。『時間術大全』というタイトルではありますが、一つの思想をどのように具体化するかという本です。
その根本思想は原題の"MAKE TIME"(時間を作る)です。それも単に時間を作るのではありません。何も考えずに生産性を向上させることは勧めていません。なぜなら生産性を上げても、すぐにその空いたスペースには「多忙中毒」の仕事が入るか、「無限の泉」のワナにハマって時間を無駄にしてしまいます。
4つの技術とは・ハイライト・レーザー・チャージ・チューニングです。これらは言い換えると、
・中くらいの目的
・デジタルデバイスを排除して集中
・エネルギーを補充
・フィードバック
ということです。この目的に沿った戦術87項目が取り上げられています。
特に「気が散らないiPhone」(戦術17)は驚異的でした。ぜひ本書でご確認ください。私も実行しています。
3)自分のための時間システムを作る
『時間術大全』には「多忙中毒」と「無限の泉」にどのように対応するのか、という考えが根底に流れています。今までの時間術は断片的でした。生産性を重視しているのか、人間性を重視しているのか、あいまいなままで語られていました。
『時間術大全』で取り上げられているように、人類の過去20万年の歴史の中でここ数十年のあいだで狂ったように技術革新が行われています。でも人間の心も体も5万年前の古代人と変わりはありません(チャージの項)。
さらなる生産性の向上はさらなる忙しさをもたらすだけになります。でも、いまさら洞窟に戻ることはできません。古代人の心身のまま最新のデバイスをもつ現代人は、一体どうしたらいいのでしょう?
その一つの答えが『時間術大全』にあります。目的は『モモ』と同じように、時間泥棒から時間を取り戻し、自分のための時間システムを作り上げることです。
まとめ
『モモ』で語られた時間泥棒たちは、現代ではさらにずる賢く「多忙中毒」と「無限の泉」に姿を変えています。それらは一面では私たちの生活を豊かにしました。そして別の面では、私たちの生活はデジタルに置き換えられようとしています。
時間とは、生きるということ、そのものだからです。
(『モモ』6章より)
私たちは信じられないほど豊かな生活を送りながら、幸せを感じる時間があまりに短いことに本当は気づいています。時間とは、生きることそのものです。『時間術大全』の原題である"MAKE TIME"(時間を作る)とは言い換えると、生きることそのものを自らの手に取り戻すことを示しています。
時間て、ちっともとまってないで、動いていく。
すると、どこからかやってくるにちがいない。
風みたいなものかしら?
いや、ちがう! そうだ、わかった!
一種の音楽なのよ
(『モモ』12章より)
モモは「時間は一種の静かな音楽」だと語っています。この詩的な表現は本質をついています。私たちはどのような音楽を奏でているのでしょう?現代人の生活をモモが聞いたらどんな音楽だと感じるでしょう?
モモが言うように時間は生きることそのものであり、一種の音楽なのです。『時間術大全』は狂ったように加速する時間を、モモがやったように自分たちの手に取り戻すことが目的です。
・大きすぎず小さすぎない目標にハイライトし、
・デジタルを排除しながらレーザーのように仕事に集中し、
・原始人のようにエネルギーをチャージし、
・トライ・アンド・エラーで、自分の生活に合わせるようにチューニングする。
『時間術大全』では87もの”戦術”が紹介されています。それはただ一つの”戦略”のためです。そのたった一つのこととは、原題にある"MAKE TIME"(時間を作る)です。
時間を作り、自分のための時間ができたとき、私たちはなにをするでしょう?デジタルデバイスを自分のために使い、そして自分のために使わない。自分でその選択をする。調和が取れた自分のための時間が訪れた時、私たちの時間はどんな音楽を奏でているのでしょう?
素晴らしくおすすめの一冊でした!
参考
(1)
モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語
『モモ』は名著です。本当に好き。大人が読んでもいいですし、逆に大人が読んだほうがいい本だと思っています。個人的には絶対に単行本派です。めんどくさい方はキンドルで買ってアレクサに読んでもらうのもありですね。
(2)本書で紹介されている『タイムタイマー』私も買いました。
戦術52で紹介されているタイムタイマー、私も買いました!とても便利ですが、値段の割に作りは思っているよりちゃちです。同じコンセプトでセイコーかシチズンで製品を出してほしいです。
サイズが8cm、19cm、30cmとありますのでご注意ください。私は8cmを購入しています。30cmだとこのサイズ↓ですのでご注意ください。
でかすぎだろ。でも小さい子供には受けがいいかも。
ご参考になりましたら幸いです。
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