勤務医開業つれづれ日記・3

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【書評】『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』ふろむだ 新しい人間のOSとは【感想】

『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』ふろむだ氏、読みました。大変考えさせられる本でした。あえて断言しますが、これは素晴らしい本です(後述)。

 

以下、本書を『勘違いさせる力』と省略させてもらいます。『勘違いさせる力』を最後まで読んだ方ならわかると思いますが、この一文が非常に考えさせられます。

 

 本書が「よい本」である理由も、

 「悪い本」である理由も

 語ることができない。 (P.364より)

 

 

 

 

まるで ウィトゲンシュタインの、

 

「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」 

ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』最後の命題より)

 

をほうふつさせる文章です。この一文があるから感想が本当に書きづらいです。だって書評として『勘違いさせる力』は「いい本です」と書いたら、作者の意図とはずれてしまいます。

 

この一文があるからこそ「勘違いさせる力」には価値があり、一方で「いい本です」とか「素晴らしい本です」とか簡単に言えないことになっているのです。それを乗り越えて、あえて「素晴らしい本です」と断言します。そしてその素晴らしさを分析してみましょう。

 

 

 

 

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている 単行本(ソフトカバー) – 2018/8/9 ふろむだ (著)  

構成

『勘違いさせる力』はスルスルと読めますが、実は構成が分かりづらいです。ふろむだ氏はワザとやっている可能性がありますから、目次から攻めてみたいと思います。

 

”ふろむだ氏はワザとやっている可能性がある”と考えること自体が、ハロー効果かもしれませんが。

 

 

『勘違いさせる力』の目次です。

 

はじめに
おいしいのは「正しいとしか思えない間違ってること」
自分はハロー効果に騙されないと思ってる人が騙される理由
学生と社会人では人生ゲームのルールが根本的に異なる
誰も卑怯と気づかない卑怯なやり方が最強の勝ちパターン
運ゲーで運を運用して勝つ方法
優秀な人間が運に左右されずに成功する理由
食欲でも睡眠欲でもない、性欲よりもはるかに切実な欲望
なんでも悪く解釈される人とよく解釈される人の違い
ダメな奴はなにをやってもダメという呪いの正体
自分の意思で選択しているとしか思えない
成果主義という名のインチキゲームの裏をかいて勝つ方法
幸運を引き当てる確率を飛躍的に高くする方法
思考の死角に棲む悪魔の奴隷から主人になる
美しき敗者と醜悪な勝者、どちらになるべきか?
有能な人と無能な人を即座に見分けられるのはなぜか?
自分は公平だと思ってるえこひいき上司の脳内
欺瞞が錯覚を大繁殖させる
思考の錯覚のまとめ
錯覚資産を雪だるま式に増やしていく方法
おわりに 

 

これを分解してみたいと思います。カッコ内は管理人が勝手にまとめたものですので、個人個人が思っているのと異なるかもしれません。ご了承ください。 

 

はじめに(思考の錯覚)


おいしいのは「正しいとしか思えない間違ってること」(運と実力と成功の関係)


自分はハロー効果に騙されないと思ってる人が騙される理由(ハロー効果)


学生と社会人では人生ゲームのルールが根本的に異なる(錯覚資産)


誰も卑怯と気づかない卑怯なやり方が最強の勝ちパターン(錯覚資産はギュゲスの指輪)


運ゲーで運を運用して勝つ方法(運を実力だと錯覚する)


優秀な人間が運に左右されずに成功する理由(後知恵バイアス)


食欲でも睡眠欲でもない、性欲よりもはるかに切実な欲望(コントロール欲)


なんでも悪く解釈される人とよく解釈される人の違い(少数の法則)


ダメな奴はなにをやってもダメという呪いの正体(マイナスのハロー効果)


自分の意思で選択しているとしか思えない(デフォルト値バイアス)


成果主義という名のインチキゲームの裏をかいて勝つ方法(成果に結びつく錯覚サイクル)


幸運を引き当てる確率を飛躍的に高くする方法(利用可能性ヒューリスティック)


思考の死角に棲む悪魔の奴隷から主人になる(認知的不協和理論)


美しき敗者と醜悪な勝者、どちらになるべきか?(一貫して偏ったストーリー)


有能な人と無能な人を即座に見分けられるのはなぜか?(感情ヒューリスティック)


自分は公平だと思ってるえこひいき上司の脳内(置き換え)


欺瞞が錯覚を大繁殖させる(欺瞞と錯覚の共犯関係)


思考の錯覚のまとめ(認知バイアスのまとめ)


錯覚資産を雪だるま式に増やしていく方法(認知バイアスの掛け算の仕方)


おわりに(思考の錯覚の泥沼)

 

ようやく理系的に受け取りやすくなってきた気がします。物語るスタイルは熟読しないと要旨がわからないというのは、理系的な欠点ですね。

 

まとめると、ふろむだ氏は『勘違いさせる力』で認知バイアスである思考の錯覚の例を多く取り上げています。そして成功と錯覚の関係を取り出している、ということです。 

 

 

成功は何に支配されている?

「実力主義」と呼ばれる現在において、本当に実力が成功に結びついているのでしょうか?何かの領域で日本一になった人が豊かに成功しているでしょうか?

 

実力があるにもかかわらず埋もれてしまう人がいます。実力がないにもかかわらず成功する人がいます。それはなぜでしょう?

 

現在は「実力主義ではない」とふろむだ氏は主張します。「実力主義」は中世の考えと同じで(天動説)、じつは現在は「思考の錯覚」で支配された「錯覚資産で殴り合うジャングル」なのだ(地動説)と看破しています。

 

そして実力は成果を生みますが、成果は錯覚資産を生み、錯覚資産から良い環境が生まれます。そしてさらに実力がつきます。

 

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分裂勘違い君劇場 by ふろむだ 人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている - 第一章 より) 

 

『勘違いさせる力』の後段ではさらに二重、三重に錯覚資産にループができている図がでてきます。錯覚資産こそが成功の交差点になるのです。 

 

自分の周りを見てみる

うわ、面白い!と思う方は自分なりに『勘違いさせる力』をすぐにでも応用できることでしょう。

 

一方、なんかいろいろ言っているけど、何をどうしたらいいのかさっぱりだ……。という人も大いに違いありません。 

 

管理人が思い浮かんだのは、例えば「一貫して偏ったストーリー」は人の心に訴えかけます。反ワクチンや反医療の方々はそのようにして信者を獲得しているのでしょう。偏って、弾圧されればされるほど熱狂的な信者がついてきます。決して一般的な成功とは言えませんが。

 

オリンピックで優勝しても不幸になる選手がいます。オリンピックに出れなくても有名で幸せそうな選手もいます。それは錯覚資産を持っているかどうか、ということなのでしょう。

 

自分の周りを見ても、自分よりずっと実力がない人が目立って評価され、逆に本当に実力がある者が不遇な境遇に陥っている人もいます。それも利用可能性ヒューリスティックをうまく使えず、ハロー効果がでなかったからに違いありません。

 

開業した人はわかると思いますが、自営業として自分の強みが一体何なのか、顧客(管理人の場合は患者さん)が自分を覚えてもらえるようなストーリーはなにか、自分と顧客との立ち位置、広告戦略などこれらはすべてハロー効果と利用可能性ヒューリスティックのための努力になるのです。

 

まとめ

『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』あまりにもあけすけなタイトルで、自分は全然読むつもりがありませんでした。あおっているな、と思っていました。

 

でも実際に読むと心理学の認知バイアスを土台にした素晴らしい本でした。「素晴らしい」ということ自体がふろむだ氏の認知バイアスに引っかかっているのですが、それを表現することは難しいです。

 

あえて作者の意図を裏切ってでも「素晴らしい本」だ、「いい本だ」というにはどうしたらいいか。そうですね「素晴らしい」「いい」と「悪い」の評価の仕組み自体をこの本が作り上げているのです。

 

自分で自分の脳外科手術ができないように、

PCが単体でOSを消去することができないように、

「いい」「悪い」自体の判断基準そのものが、この『勘違いさせる力』に書き込まれているのです。言い換えると、新しい時代の人間のOSそのものがここから見えてくるのです。OSはあくまでOSで何をインストールしてどんな結果を出すかが問題ですが、私はあえて「いい本」「素晴らしい本」だと言いたいと思います。

 

認知バイアスは”認知できません”。この事実の恐ろしさ。そして強力さ。他人の心と行動を本人が自覚することなくコントロールできる可能性が本書にはあります。さらなる深みと、新しい時代を予感させる本としてオススメいたします。

 

 

 

 

 

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている 単行本(ソフトカバー) – 2018/8/9 ふろむだ (著) 

◆社会の真理を暴き、11万部突破の大ヒット ◆「林先生が驚く初耳学」(MBS)でも紹介され話題沸騰! ◆オリコン週間BOOKランキング自己啓発書ジャンル1位(2018/9/17付、9/24付、10/1付) 伝説的なブログ『分裂勘違い君劇場』を中心に、 何百万人もの感情を揺さぶり続けたモンスター・ブロガーがついにデビュー! 実力を磨くよりも、はるかに人生を好転させる 「錯覚資産」とは何か? 誰もが一度は思う 「なんであんな奴が評価されるんだ! ?」の謎を解き、 「誰にでも使えるズルい武器」として解説する異色作。 本書を読み終えた後には、誰もが 人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている というタイトルに納得しながらも、 そうした世界でどう生きるべきかを考え込んでしまうはずだ。

◆「興奮」と「目からウロコ」の声多数! ◇控えめに言って人生を変えうる悪魔の書なのでみんな読んだほうがいい ◇こんなに実用的な心理学の本は初めてだ! ◇恐らく世界で初めての、実際の生活に応用できる行動経済学の本 ◇「うわぁ」と声が出るぐらい面白かった ◇何度も読みかえすスルメ本になるだろう ◇控えめに言ってやばすぎ。読むだけで人生変わる本ってそうないけど、久々にきた ◇この本を今の歳で読めたことは、ものすごい幸運だった ◇“運"って、運用できるんだ! やらなきゃ! ◇本当に気持ちよく仕事をする方法が書かれた本だ ◇「錯覚資産」という概念はすごく面白くて、個人的には「悪いファスト&スロー」だと思ってます 

 

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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