勤務医開業つれづれ日記・3

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【感想】『君の話』 三秋 縋 (著), 紺野真弓 (イラスト) あの夏、きみの嘘、そしてやさしい記憶【傑作出たね】

『君の話』読みました!

 

これは三秋縋先生の最高傑作でましたね……。

 

二十歳の夏、僕は一度も出会ったことのない女の子と再会した。架空の青春時代、架空の夏、架空の幼馴染。夏凪灯花は記憶改変技術によって僕の脳に植えつけられた“義憶”の中だけの存在であり、実在しない人物のはずだった。「君は、色んなことを忘れてるんだよ」と彼女は寂しげに笑う。「でもね、それは多分、忘れる必要があったからなの」これは恋の話だ。その恋は、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた。 

 

 

 

三秋縋先生の『君の話』を読みました。

まあ、だまされたと思って読んでみたほうがいい本です。おそらく、うっかりだまされますし、感動してしまいます。予想外に泣いてしまうかも。そんなことにならないように、夏が終わる前に読み終わった方がいいです。まだきっと君の夏は終わっていないはずだから。

 

話題作『三日間の幸福』や『恋する寄生虫』で人気沸騰中の三秋縋先生の新作書き下ろし作品です。青春をどこかに忘れてきて、まだ暑い夏を通り過ぎていない君におすすめします。たぶん忘れられない一冊になるはず。

 

舞台は義足や義肢、義眼とおなじように記憶を補完するものとして”義憶”がある世界。19歳の大学生、天谷千尋の育った家庭は静かに、しかし完全に壊れていました。父も母も家庭を大切にしているとはとても言えない人種で、両親とも理想の“義憶”を植え込み、現実から逃避していました。

 

二人の子供である天谷千尋はそんな過去の記憶をすっかり消去しようと「レーテ」を使用します。しかし自分の過去を消去したはずなのに、自分にはありえない記憶が新たに現れます。幼なじみの夏凪灯花という名の少女と過ごした、あるはずのない記憶。その甘美で完璧な記憶が天谷千尋を混乱させます。さらに、実在の夏凪灯花が目の前に現れるのです。

 

 一度も会ったことのなかった幼馴染がいる。僕は彼女の顔を見たことがない。声を聞いたことがない。体に触れたことがない。にもかかわらず、その顔立ちの愛らしさをよく知っている。その声音の柔らかさをよく知っている。その手のひらの温かさをよく知っている。

(『君の話』P.8より)

 

一度読んで、再び文頭に戻って感動するような作品です。

天谷千尋と夏凪灯花の記憶と嘘と、そして運命は一体どうなっていくのでしょう。正直、P.186まで読み応えはあるものの評価は微妙でした。天谷千尋のとる行動すべてが間違っているように思えます。そして次のページから急に視界が開けてくるのです。ですから、ぜひP.186までは頑張って読んでください。次の章からゆっくりと謎が解けていきます。

 

ネタバレしない程度に、単語の由来は知っておくと楽しいかもしれません。

・「レーテ」はレテあるいはレーテー(Lethe)で、ギリシア神話の黄泉の国に流れる忘却の川のことが由来だと思います。

・「グリーングリーン」は童謡もあるけど、多分伝説のエロゲの方でしょう。

・「ムネモシュネ」Mnemosyneはギリシア神話で記憶の女神。

・「パーシャルリコール」は3章のタイトルですが、映画「トータル・リコール」のパロディです。「トータルリコール」(total recall)は全記憶の回復という意味ですから、「パーシャルリコール」は部分的な記憶回復みたいな意味。

 

 

『三日間の幸福』や『恋する寄生虫』で注目を集めている三秋縋先生ですが、なんだかこのテイストはどこかでみた?と思っていたら漫画の『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』『あおぞらとくもりぞら』の原作者でもありました。この現実世界からの優しく脱落する感覚が刺さります。 

 

 

『君の話』は傷ついていない人より、傷ついている人の方が心に刺さるに違いありません。そして後悔などない人より、後悔がある人に効く作品です。「正しい夏」を送れなかった人(1)のためのものです。

 

夏の魔法は、まだ続いている。 

(『君の話』P.54より)

 

このにぶい痛みは、夏の魔法が解けていない人の心に刺さったトゲのようなものに違いありません。君にはそれがあるのに、気がついていません。この本の中にあの夏、きみの嘘と、そしてやさしい記憶があります。

 

この作品を必要とする君に届きますように。すごくすごくオススメでした。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (1)三秋先生Twitterより

 

  

 

(2)紺野真弓先生 水鏡推理イラスト 

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水鏡推理 単行本 –  松岡 圭祐 (著) 

 

(3)紺野真弓先生作品

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紺野真弓先生、すごい好きです!紺野真弓先生についてもいつか書きたいですね。

 

 

 

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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