勤務医開業つれづれ日記・3

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【日大アメフト部から学ぶ】4つの「悪い謝罪」、8つの「良い謝罪」とは?危機管理と謝罪の3冊の良著から学ぶ

日大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題が世間を騒がせています。ありえないほど悪質なタックルを行なった日大アメフト部。その体質と対応についてみなさんいろいろと思うところも多いかと思います。

 

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ではこの問題から一体何を学びましょう?日大悪質タックル問題から私たちは勉強できるところは一体なんでしょう?

 

私が日大問題から連想されるキーワードは「危機管理」「謝罪」でした。危機は常に起こるもの、そしてそれは予想しないタイミングで予想しないことが起きるのです。そんな危機を未然に管理することができないでしょうか。そして、いざ危機が起きてしまった場合にはどのように解決をすることができるでしょうか。

 

今回、3冊の本を読んでみましたので「危機管理」「謝罪」についてかんがえてみたいと思います。全ての本が日大悪質タックル問題の前に出版されていますので、それぞれの本から何が得られるのか考えてみたいと思います。なお、今回の文章は3冊の本を読んでそれぞれに管理人が考えてことであり、本の中に書いていない内容も含まれますのでご注意ください。

 

目次 

 

危機管理&メディア対応 新・ハンドブック 

まずはこの本から読んでみました。一般に危機管理とリスク管理がごっちゃ混ぜにして語られますが、それらの管理について3つに分けています。 

 

・リスク管理

・危機管理

・危機管理広報

 

リスク(risk)は危険性であり潜在的なものです。それに対して危機(クライシス)はリスクが顕在化したものです。リスクと危機(クライシス)を分けて考えます。そして、危機管理と危機管理広報をさらに分けて考えるのが大事です。

 

リスクは外部リスクと内部リスクに分け、それぞれに未病のうちに予防をすることが大事です。次に危機。予防しきれなかった危機が実際に訪れた時のために、14のTo Doリストが本文にはあります。このTo Doリストは中小企業では行わなかったり行えないようなものも含まれていますが、必読だと思います。

 

ToDo01 危機拡大を防ぐなら、発覚時の迅速・的確な伝達がキモ

ToDo02 リスク管理室と広報部が最初にやるべきこと

ToDo03 ホールディングコメントの用意〈広報担当〉

ToDo04 「ネガティブに報道されるか」どうかを判断する〈広報担当〉

ToDo05 「状況報告書」を作る〈広報担当(リスク管理室)〉

ToDo06 「危機管理広報対応方針」をまとめる

ToDo07 緊急対策本部の立ち上げ

ToDo08 危機管理広報実施計画を作る

ToDo09 ホールディングコメントを使ったメディア対応

ToDo10 無視する(コメントしない)場合のメディア対応

ToDo11 ニュースリリースを作る

ToDo12 ニュースリリース発表後の問い合わせと対応

ToDo13 キーメッセージを徹底する

ToDo14 個別インタビュー「特ダネ」を狙う記者とは上手に付き合うべし  

 

今回の日大問題を考えてみると、ほぼ全ての段階で対応にまずさがあります。危機管理、そして危機管理広報は大命題として危機を乗り越える、という目的があるはずです。そのための日大の選んだ戦略、キーセンテンスは保身と責任転嫁でした。

 

 

「言い訳になってしまうのですが」「信じて頂けないと思うんですが」「私からの指示ではございません」といった保身というキーワードは徹底して記者会見でのべていますので、ある意味日大の保身と責任転嫁の方向がきちんと伝わったのかと思います。危機は増幅しましたが。

 

 

この本から得られたことをまとめるとこうなります。

・危機管理とリスク管理を分けて考える

・危機管理と危機管理広報をさらに分けて考える

・素人でも緊急記者会見までの流れが一応わかる

・メディア対応はとても大事

 

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(「危機管理&メディア対応 新・ハンドブック」第2部より)

 

「記者に対して腹を立てると、視聴者に腹を立てているように見える」

なるほど。色々と勉強になった一冊でした。

 

 

補足ですが、著者の山口明雄氏は他にも多くの危機管理の本を書いております。内容の重複があることがありますので、ご注意ください。 

 

 

 

よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術 

こちらは吉本興業の宣伝広報室で、吉本の芸人の謝罪会見などを一手に引き受けていた方です。吉本興業ですから一般の会社より謝罪が多い、いわば謝罪のプロ。謝罪会見について具体的な話が色々あって大変面白いです。「危機管理&メディア対応 新・ハンドブック」が理論編ならこちらが実践編な感じです。

 

「危機管理&メディア対応 新・ハンドブック」をあらかじめ読んでいると、未然に防ぐリスク管理がやはり大事なんだな、そして実際に危機的な状況になったら危機管理と危機管理広報がさらなる被害を防ぐんだな、とわかります。

 

芸人の経営する焼肉店の食中毒事件や、飲み会での暴力事件を中心に話が展開されます。とくに想定問答集(Q&A)の作り方がなかなか素晴らしいと思いました。「過去」「今」「今後」に分けた想定問答集は説得力がありました。

 

実際の記者会見の時には広角レンズに気をつけろとか、「危機管理&メディア対応 新・ハンドブック」では受けないように言っている囲み取材でどうするか、などなど百戦錬磨のノウハウが詰まっています。

 

全身全霊を使って、取材陣とその先にいる人々に誠意を伝えるのだ! 

(「よい謝罪」第10章より) 

 

やはりこの誠意、という視点が日大には圧倒的に足りていなかった気がします。また本文で書かれているようにスピードも誠意の一つ、ということを考えても明らかに日大は後手に回ってしまいました。

 

読み物としてもとても読みやすい本でしたが、謝罪についてきちんと順番をおって書かれています。謝罪についての良著だと思います。

 

 

 

科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る 

 

3冊目の本としてはこちらをお勧めいたします。最初は心理学的な本で専門的ですので面白いけどブログでは難しくて紹介できないかな、と思って読んでいましたが中盤からぐんぐん面白くなっていきます。謝罪の科学です。

 

謝罪とは相手の怒りを鎮めることです。謝罪についての科学的な実験や調査研究結果について書かれた本です。

 

「本書では、個人の怒りを鎮める方法や、効果的な謝罪とはどのようなものか、ということを実験や調査による研究に基づいて説明します」 

(「科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る」はじめにより) 

 

本書は「基本六感情は人類に普遍的」というところから始まります。

 

本文の目次です。

第一章 怒りのメカニズム

第二章 関係の修復――怒った人は相手に謝ってほしいのではない

第三章 効果的な謝罪

第四章 怒りの抑え方

第五章 仕返しと罰

第六章 赦し 

 

最初は論文データが多いのですが、途中からどんどん面白くなるのでできたら第一章は飛ばしながらでも読んだほうがいいと思います。 

 

第三章で効果的な謝罪について書かれています。良い謝罪と悪い謝罪の要素について、これは大事ですね。

「悪い謝罪」4つ

・不快な行動や失言を正当化する(正当化)

・被害者を批難する(逆ギレ)

・弁解をする(弁解)

・事態の最小化をはかる(矮小化:たとえば、「ほんの冗談だった」と言うなど)  

 「良い謝罪」8つ

 「良い謝罪」核となる3つの要素

・自責の念の表出(悔恨)

・責任の自覚(責任)

・補償の申し出(解決策の具体的な提案、補償)

 

「良い謝罪」付加的5つの要素

・そのような行為をするに到った理由の説明(説明)

・今後は適切に振る舞うことの約束(改善の誓い)

・被害者を傷つけたり不快にさせたことの認識(被害者への労り)

・自分の行為が不適切であったことを認識(不適切な行為の認識)

・赦しを請う(容赦の懇願)  

 

そしてSNSなど「インターネット上で謝罪圧力が強い理由」についても「バンドワゴン効果」で説明しています。そのため炎上すると実際の被害者より第三者の方がより厳しく罰する傾向が出ます。

 

第5章では「仕返しと罰」について述べられています。バンドワゴン効果をもとに第三者は被害者より厳罰を下しやすく、加害者に自分がどれだけ酷いことをしたのか「理解」してもらうことを希望します。 

 

今の状況に当てはめてみると、日大問題については当事者同士よりも第三者である人々が厳罰を望み、日本中が日大アメフト部の監督やコーチに対して自分たちがどれだけ酷いことをしたのか理解して悔い改めることを希望している状態なのです。

 

そして最終章で「赦し(ゆるし)」が紹介されます。

霊長類は集団生活を行なっているため、仕返しばかりをしてると生存確率が低くなります。そのため進化の過程で「赦し」の機能を得ます。自分を攻撃したり、集団生活でミスをした仲間を「赦す」寛容な個体の方が、赦さない個体より子孫を残す確率が高いのです。つまりは「赦す」ひとがモテる、ってことです。でも赦すことにはコストがかかります。赦したせいで、また攻撃されたり騙されたりする可能性が高まります。

 

「赦し」を得るにはいくつかの条件があります。その一つには「真実」であり、双方の歩み寄りが必要であり、そして行為ではなく人を赦すのです。電車の中で足を踏んだのがイキがった若者と、子連れの妊婦さんなら赦せるかどうかの違いです。

 

現段階では日大アメフト部が赦しをえることは難しいでしょう。真実が語られず、双方の歩み寄りがなく、そして行なってしまった行為ではなく、赦されるべき人自体が赦される資格がまだないように思えてなりません。

 

 

まとめ 

日大アメフト部悪質タックルに関係して気になる3冊の本をまとめてみました。 

「危機管理&メディア対応 新・ハンドブック」は危機管理とリスク管理の違いを知ることができます。

「よい謝罪」では実際に「謝罪のプロ」の実践ノウハウを楽しく学べます。

そして「科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る」はその根本にある人間の行動の原理について怒りと謝罪、仕返しと罪、そして赦し(ゆるし)について理論付けを行うことができます。

 

単純に「日大アメフト部、ありゃゆるせない!」だけではあまりに条件反射的で良くないですよね。今回の問題から謝罪のノウハウや危機管理を学び、人がどうやって怒り、どのような謝罪をのぞみ、そして赦しに到達するのか。自分は医師として、経営者として、そしてネットにつながっている一市民として考えさせられる機会になりました。

 

あんまり他人に厳罰ばかりを望んで、ゆるさない人間はモテないらしいです。ご参考になりましたら幸いです。