勤務医開業つれづれ日記・3

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【TOKIO・山口達也】山口メンバーとアルコール依存症について医学的に考えてみた【謝罪会見】

医師です。山口メンバーの書類送検の記者会見をたまたま見ました。管理人はテレビを見ながら、

 

「山口メンバーはアルコール依存症かな」

 

と思いながら見ていました。しかし本人は依存症を否定していました。そこで会見を元にして、できるかぎり客観的に診断ガイドラインにそったアルコール依存症の検討をしてみたいと思います。 

 

 

 

 

 

 

 山口メンバー謝罪会見

 

TOKIO・山口達也が謝罪会見(全文1)焼酎の瓶を1本ぐらいは飲んでいた(THE PAGE) - Yahoo!ニュース

より引用 

 

 

<他にはこちらに全文があります>


 

 

 

 

 

アルコール依存症とは 

では、山口メンバー謝罪会見を元にアルコール依存症について検討して見たいと思います。今回は厚生労働省のHPを元に考えてみましょう。 参考にしたHPはこちらです。

アルコール依存症|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省

 

そもそもアルコール依存症になるまでには、どのような段階をへるのでしょうか?

 

健常者がいきなりアルコール依存症にはならない

下の図にあるように、正常に飲酒する人とアルコール依存症の患者さんとの間にはプレアルコホリズム、アルコール乱用など中間的なグレーゾーンがあります。

 

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そしてグレーゾーンの人も、アルコール依存症の人も、アルコールをいっぱい飲むことに変わりはありません。その大量に飲むことを”多量飲酒”といいます。ビール中瓶3本、日本酒3合、焼酎300mlです。

 

多量飲酒

厚生労働省は「健康日本21」の中で、「節度ある適度な飲酒」と「多量飲酒」を明確に定義しています。前者は、「1日平均20g程度の飲酒」であり、後者は「1日平均60gを超える飲酒」です。ここでいう60gは、酒に含まれる純アルコール量で、だいたいビール中ビン3本、日本酒3合弱、25度焼酎300mlに相当します。
アルコール関連問題の多くは、この多量飲酒者が引き起こしていると考えられています。(以下略)

 

会見では、

山口:たぶん、焼酎の瓶を1本ぐらいは飲んでいたと思われます。

と言っていますから、相当量の飲酒をしているのだと思います。しかも退院日ですから。この時点で”多量飲酒”をしている状態だと思われます。

 

 

 

害になるアルコール

有害な使用、乱用、プレアルコホリズム

アルコール依存症までには至らないが、何らかのアルコール関連問題を有する場合、すなわち図1でグレーゾーンの部分は、概念が最も錯綜しています。
この部分は、WHOが策定しているICD-10診断ガイドラインでは「有害な使用(harmful use)」、アメリカ精神医学会によるDSM-IV-TRでは「アルコール乱用(alcohol abuse)」と呼ばれています。しかし、その内容は両者でかなり異なっています。
有害な使用は、飲酒のために何らかの精神的または身体的障害が存在する場合に、またアルコール乱用は、社会的または家族的問題がある場合に、そのように診断されます。 近年、上記グレーゾーンに「プレアルコホリズム」という概念が提唱されており、臨床現場でもよく使われています。プレアルコホリズムは、何らかのアルコール関連問題を有するが、離脱症状も連続飲酒(※1)も経験したことがない場合に、そのように呼ばれます。
また一般に、アルコール依存症まで至らないこれらの問題群とアルコール依存症を合わせて、アルコール使用障害と呼ばれています。

※1 連続飲酒
飲酒のコントロール障害は、初め「飲む量のコントロールができない」「飲む時間のコントロールができない」など、様々な形で現れ、次第に連続飲酒という形に集約されていきます。連続飲酒とは、常に一定濃度のアルコールを体の中に維持しておくために、数時間おきに一定量のアルコールを飲み続ける状態です。臨床で遭遇するほぼすべてのアルコール依存症の患者さんがこの症状を示し、わが国ではアルコール依存症の重要な診断根拠とされています。

そして、大量に飲酒をしていると日常生活に害が出てきます。それを乱用や有害な使用といいます。

 

何らかのアルコール関連問題を有するが、離脱症状も連続飲酒も経験したことがない場合がプレアルコホリズムです。いまのところ、ほぼプレアルコホリズムは確定的です。

 

会見では離脱症状(昔でいう禁断症状)や連続飲酒(飲む量や時間をコントロールできない)は一切触れられていません。これがあると、次のアルコール依存症の疑いが強まります。

 

 

そしてアルコール依存症に……

アルコール依存症

 

アルコール依存症をひとことでいうと、「大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒をはるかに優先させる状態」です。具体的には、飲酒のコントロールができない、離脱症状がみられる、健康問題等の原因が飲酒とわかっていながら断酒ができない、などの症状が認められます。

 

確定診断はICD-10診断ガイドラインに従います。診断ガイドラインは表1の通りです。 表の中で、2の典型は連続飲酒です。4は酩酊効果を得るための量が以前より明らかに増えているか、または、同じ量では効果が明らかに下がっている場合です。6では、本人が有害性に気づいているにもかかわらず飲み続けていることを確認します。 なお、以前、慢性アルコール中毒、アルコール症、アルコール嗜癖などという用語が使われていたこともありますが、これらはアルコール依存症とほぼ同じものと考えてよいでしょう。

 

表1. アルコール依存症(alcohol dependence syndrome)のICD-10診断ガイドライン


過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合


1 飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感
2 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
3 禁酒あるいは減酒したときの離脱症状
4 耐性の証拠
5 飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
6 明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒

 

 

上記の6項目のうち3つが当てはまるとアルコール依存症の診断になります。山口メンバーの会見を診断ガイドラインに当てはめてみると、

 

1 飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感 → ありえる(退院当日の飲酒)

2 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難 → ありえる(意識がなくなるほどの酩酊)

3 禁酒あるいは減酒したときの離脱症状 → 不明

4 耐性の証拠 → 不明

5 飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長 → 不明

6 明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒  → ありえる(入院が必要なほど飲酒が有害、でも退院直後に泥酔)

 

アルコールに関する障害で入院していたのに、退院したその日のうちに記憶をなくすほどの飲酒をするというのは、かなりな程度の依存が疑われます。今回の会見ではアルコールに対する耐性や離脱症状などの肉体的依存についてははっきりしないか、本人は否定をしています。

 

つまりは診断ガイドラインではかなりアルコール依存症が強く疑われる状態です。

 

 

山口メンバーのアルコール症スクリーニングテスト

会見内容から類推される内容で、アルコール症のスクリーニングテストを行ってみました。 新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(新KAST)は我が国で開発され非常によく使われているテストです。厚生労働省のHPに原本がありますのでそれを参考にしてください。

 

新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト:男性版(KAST-M)|メンタルヘルス|厚生労働省

 

注意していただきたいのは、

・これはスクリーニングであり、あくまで診断基準ではないこと

・本人が受けるテストであること

ということです。あくまで今回は、記者会見で本人は嘘をついていなく、山口メンバー本人がもしもこのテストを受けたらどうなるだろう?という仮想でのお話です。

 

ではご本人になりきって、会見から可能な範囲で類推できる部分にチェックを入れていきたいと思います。

 

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チェックできたのは4ヶ所でした。 

 

記者会見では、以下のことが読み取れます。

(1)食事も仕事の合間にとりにいくことに、バランスのとれた食事をとるために病院に、という発言がありました。入院期間は1ヶ月で、アンケートはここ6ヶ月ですから、通常生活では食事は乱れていたものと思われます。

(2)山口メンバー本人が認めているように、肝臓機能障害があるようです。

(5)会見の最後で断酒を決意されているようです。

(10)同じく会見の後半で、これだけ大きなことを起こして、という発言があります。飲酒がなければよりよい生活を送れることを自覚しているのではないでしょうか。

 

すでに4点を超えていますので、アルコール依存症の疑いがつよいグループだと思われます。もちろん、このような自覚を本人が持っていれば、の話ですが。

 

 

まとめ

以上より、山口メンバーのアルコール依存症について医学的に検討してみました。医師を含めて色々な方が「山口メンバーはアルコール依存症」と言っているようですが、現時点では「プレアルコホリズム」でほぼ間違いなく、「アルコール依存症」の可能性も十分にある状態だと思います。限りなく黒に近いグレーです。

 

治療の必要なアルコール依存症の患者さんは80万人といわれています。そして予備軍である多量飲酒の人は860万人いるといわれています。

アルコール依存症|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省

 

より良い理解と治療が何より大切な病気です。そう、アルコール依存症は病気です。TOKIO復活とか東京オリンピックどうするとかそういう話の前に、

 

キチンとした診断とキチンとした治療

 

が必要です。本当にアルコール依存症なら治療しないと人生を棒に振ります。そして医学的に正しい治療を行うことが本当に重要です。アルコールで問題を抱える多くの人の救いになるような人生を送ってもらいたいです。

 

 

 

 

 

 

ご参考になりましたら幸いです。