【感想】『ヒャッケンマワリ』竹田昼 (著) 「まあだだよ」「イヤダカライヤダ」奇人・変人・内田百間、でも憎めない【マンガ感想・レビュー】
『ヒャッケンマワリ』でました! 個人的にすごいいい本でした!!
過去に当ブログでも3、4年前から『ヒャッケンマワリ』って作品がいいんだけど、絶対に書籍化しないよね、とか言っていました。
■漱石とはずがたり 1 香日 ゆら - 勤務医 開業つれづれ日記・2
(単行本になるのは難しい、ってコメントで書いています)
■Kindle無料!「楽園 Le Paradis」第1号、第10号 かなりオススメ - 勤務医 開業つれづれ日記・2
(やっぱり書籍化は無理って思いながらかいてます)
竹田昼先生、本当にごめんなさい!
そして、
『ヒャッケンマワリ』書籍化おめでとうございます!!
変人で奇人、でもどこか憎めない内田百閒先生の人となりがわかるような本です。夏目漱石ファンや芥川龍之介ファンもぜひ手に取って見て欲しい作品です。そのままでも楽しいですし、文豪の交友関係を知っているとなお楽しい本です。おすすめです!
「阿呆列車」はじめ数多くの随筆、「冥途」はじめ短編小説で21世紀でも大人気の内田百けん(「けん」の文字は門がまえに月)をめぐるエッセイコミック。漱石・芥川はじめ文豪達や鉄道・飛行機・震災・飼い猫まで全25篇収録。
いや、本当に書籍化うれしいです。どのぐらいうれしいかって言うと、実本と電子版の両方買ってしまうぐらいです。
この『ヒャッケンマワリ』を絶賛する条件がなかなか厳しいです。
1)夏目漱石ファンである。
2)内田百閒ファンである。
3)さらに『楽園 Le Paradis』のファンである。
うちのブログは夏目漱石カテゴリーがあるぐらいなので、まあ控えめに言ってもファンぐらいにはなると思います。
【夏目漱石】 カテゴリーの記事一覧 - 勤務医開業つれづれ日記・3
ただ、夏目漱石の真性ファンって異常ですから、あまり簡単に大ファンですって言えないんですよ(笑)。
そしてあの変人の百間ファンで、かつ楽園ファンってかなり厳しいですよね!でも両方をクリアしないと手元に置いて竹田昼先生の作品を見ることはできませんでした。自分は全巻楽園持っているからいいけど。
しかし今回、書籍化されましたので普通の百閒マニアの方も、漱石ファンの方も、龍之介ファンの方も手に取れるようになりました。めでたい!
それでは『ヒャッケンマワリ』を勝手にご紹介させていただきます。
『ヒャッケンマワリ』 実本と電子版
どこかで書きましたが、電子版と実本の両方を買いました。そのくらい欲しかったです。理由はあまりありません。単に自分が欲しかっただけ。
内田百閒関連本
私が個人的に持っている内田百閒先生の関連本の一部です。以前からちくま文庫の全集が欲しいのですが、一部が絶版になったりなかなかチャンスに恵まれません。いつかそろえたいですね。
恥ずかしながら付箋がいっぱい見えますね。昔『奇談異聞辞典』って変な本を読んでいるときに内田百閒先生の随筆をあわせて読んでいたことがあって、いろいろ付箋を貼っているのはご愛嬌です。
『百鬼園随筆』の表紙がふざけているよな、なんだこの下手くそな絵は?と思ったんですが実はこれ”芥川龍之介の直筆”です。今回の『ヒャッケンマワリ』読んで初めて知りました。
東京駅の一日駅長になる
内田百閒は大の鉄道マニアです。東京駅の一日駅長をやってくれないか、という国鉄の提案にニヤニヤしまくりです。本作にはありませんが、内田百閒先生は東海道線の神戸~新橋間をずっと窓から首を出したまま乗って来た、とかそんな話ばっかりです。
部下を粛清する
内田百閒に一日駅長の抱負を聞いたらこう答えました。そして一日駅長として国鉄幹部を前に訓示を述べます。
駅長の指示に背くものは明日馘首(かくしゅ)する
オリジナルはこうです。
”驛長ノ指示二背ク者ハ。八十年ノ功績アリトモ。明日馘首(クワクシユ)スル。”
居並ぶ国鉄の幹部を前に、自分に背いたら80年の実績があっても明日クビを切る(退職の比喩じゃなくて本当に首を切る)と言い放ちます。まあこのおっさん、言うことがムチャクチャ。
そして一日駅長だから明日には内田百閒はもういません。まあ考えつくされていますね。あげくに一日駅長なのに特急「はと」が大好きすぎて見送らずに列車に自ら乗ってしまい、大騒ぎになってしまいます。
まあだだよ
二十年来私を生かしてくださった先生です
それからもうじき世話になるお寺の坊主
いつお世話しましょうか
まあだだよ
教え子達に還暦を祝ってもらったのをきっかけに、「まあだかい(摩阿陀会)」が年に1回開かれます。随筆は「まあだかい―内田百けん集成〈10〉 ちくま文庫」に収められています。黒澤明監督の遺作になった「まあだだよ」 は ここから来ています。なんとも内田百閒とそのまわりの人々らしいです。
イヤダカライヤダ
イヤダカライヤダ
内田百閒先生が芸術院会員を断った時の有名な話です。そのときの口上のメモです。
サレドモ ・御辞退申シタイ
ナゼカ ・芸術院ト云フ會ニ入ルノガイヤナノデス
ナゼイヤカ ・気ガ進マナイカラ
ナゼ気ガ進マナイノカ ・イヤダカラ
さすがだ!内田百閒的な無限ループですね。内田百閒先生の独自ルールが楽しすぎます。
まとめ
内田百閒先生のお話がいっぱい詰まった作品です。内田百閒先生はめちゃくちゃです。借金王だし、泣き上戸だし、人見知りするのにわがままで酒飲みで自分の好きなことしかない。多分、関係者は大変だったと思います。でも反面周りの人もきっと楽しんでいたに違いありません。そうでないと「まあだ会」とかできないですよね。
竹田昼先生の手にかかると内田百閒先生のおかしいこと、この上ありません!竹田先生の描く内田百閒、おちゃめですよね。愛嬌があります。淡々としたなかで独島の味わいがあります。
関係ないけど竹田昼先生のこの絵が一番好きです(P.51)。
なんか、よくないですか。たとえば耽美文学をどうでしょう?谷崎とか、泉鏡花とか。お願いします!
本当に書籍化おめでとうございます!そして、全国の内田百閒ファンとまだ見ぬ潜在的百間ファン、読んでみろ!内田百閒、って単語にピンと来たら手に取る価値あります。すごいオススメでした!
関連: まだだよ (黒澤明監督、遺作)
昭和18年、先生は文筆活動に専念するため長年務めた大学を辞めた。だが先生の人柄を慕う門下生たちは、戦中戦後を通じてその後も足繁く先生のもとを訪ねてくる…。教師と教え子の20年以上にわたる交流をしみじみとまた温かく描いた巨匠・黒澤明監督の30作目にして残念ながら遺作となった作品 主演: 松村達雄, 香川京子, 井川比佐志 上映時間: 2 時間, 14 分 対応デバイスで視聴できます
ご参考になりましたら幸いです。