【感想】『Lily lily rose (1)』紺野キタ (著) 閉じた少女の心はいま、ゆっくりと開きはじめる【マンガ感想・レビュー】
紺野キタ先生の『Lily lily rose』1巻が出ました!
いいですね、この作品。雰囲気が好きです。以前の『女の子の設計図』 も好きでしたけど、『Lily lily rose』もいい感じです。
りりちゃんがのばらの家に引っ越してくるところからお話ははじまります。静かで安定した、一般的な社会とは切り離された世界がそこにはありました。でも少しずつりりちゃんも周りになじんでいかなくてはいけません。
のばらや真耶さんとりりちゃんの3人がおくる何気ない生活。でもその一つ一つが時にお互いを傷つけ、そしてお互いをいやします。静かに閉じた世界でお話はゆっくりと進みます。これからの展開が楽しみですね!
母を亡くして以来、口がきけなくなってしまった少女・”凛々(りり)”は、おばにあたる”のばら”と同居人・真耶が住む屋敷を訪れる。木々に囲まれたその屋敷には、たくさんの本とたくさんの猫たちが。どこか陰のあるようなのばら、屋敷に出入りする人々、幻想的な出来事を通して、やがて凛々は……。心の再生を描くファンタジック・ストーリー。
『Cotton』や『女の子の設計図』、そしてKITA先生名義で『1リットルの涙』を描かれている紺野キタ先生の新作ですね。楽しみです!
りり(凛々)ちゃん
りりちゃんは9歳。のばらの家に住むことになりました。大事そうに大人用の傘をいつも持っています。そして、まったくしゃべりません。
のばら
りりちゃんのお母さんはゆりか。のばらとゆりかは双子の姉妹でした。だからのばらとりりちゃんはおばさんとめいの関係になるのでしょう。
のばらは結構適当な性格で家は猫屋敷で、雑誌や本も床にちらばったままです。ご飯は自分一人ではお菓子しか口にしません。しかもさみしがりやで泣き上戸。めんどくせー。
りりちゃんがきても適当。荷物も外に出しっぱなし。でもそんなのばらだからりりちゃんはストレスを感じずにこの家で過ごせるのかもしれません。
真耶さん
真耶さんはこの漫画の良心回路です。お料理もちゃんとするし、掃除もするし、大家であるのばらのわがままも結構ちゃんと聞いてくれます。でも「私だっていつまでもここにいるわけじゃないんだよ」とか言ってます。
百合っぽい展開が随所にありますが、この直後に真耶さんに否定されています。
「私 のばらのそういうところが嫌い」
友達以上、恋人未満って感じなんでしょうか。読者としては、真耶さんの反応はある意味当たり前な感じなんですけど。
1巻の最後のシーンが2巻に続く伏線になっているのでしょうか。真耶さんがのばらに手を伸ばそうとします。でものばらは真耶さんの手を払いのけます。あら?二人の関係に変化が?でも、これって最初に真耶さんがのばらとの関係を否定しているから、しょうがないですよね。手を払われたことで改めてショックを受ける真耶さん。二人の関係はどうなるのでしょう?
そして、りりちゃんはどんな風に心を開いていくのでしょうか?すごいインパクトがある作品ではありませんが、ちょっと先が楽しみで大事に育ってほしい作品です。秘密にしておいて、いい作品になったら「やっぱり」って言いたい感じですね。
紺野キタ先生とくれば、個人的には短編集の『女の子の設計図』を振り返りたいです。
(『女の子の設計図』より)
追伸 神様
天罰は
甘んじて受けます
このタイトルだけでもうダメでしたね。あ、やられたって感じ。
花南ちゃんも青音ちゃんもかわいいんだけど、ほろ苦です。紺野キタ先生ってビタースイートですよね。そんでもって、”追伸”って書かれて読者はふにゃふにゃです。もー。
『女の子の設計図』も姉妹百合ですから、本作『Lily lily rose』のばらと姉妹のゆりか(りりちゃんのお母さん)との関係もあやしいですよね。……いや、現時点では全然あやしくはないけど、管理人にはそういうふうに見えてしまいます。
ということで、百合成分多めの紺野キタ先生がどんな作品を作っていくか楽しみです。りりちゃんがちゃんとした大人に成長してほしいですねぇ。こっそり、おすすめです。
<試し読み>
ご参考になりましたら幸いです。