【感想】『青野くんに触りたいから死にたい(1)』椎名うみ (著) 純粋で、切なくて、そして狂う。恋って一体なんだろう? 【マンガ感想・レビュー】
(2017.10.23更新)
『青野くんに触りたいから死にたい』1巻出ました!
第一話が衝撃的でしたね。読んで引き込まれてしまいました。
優里ちゃんと付き合いはじめて2週間で青野くんが死んでしまいます。死後、優里ちゃんだけが青野くんの幽霊が見えます。たとえ幽霊になっても優里ちゃんは青野くんが好き。でも幽霊の青野くんは優里ちゃんを侵食していきます。幽霊の話なのでちょっと怖い。
登場人物みんなの幸せになるための出口が見当たりません。みんな、どうなったら幸せになるのでしょう?なかなか読ませるお話です。おすすめ!
君に触れるなら、死んでもいいよ。これがわたしの愛なんだ。アフタヌーン公式サイト「モアイ」掲載の1話が30000PV突破! 話題の「青野くん」がついに単行本化! 天然少女・優里ちゃんと、その彼氏・青野くん。ごく普通のお付き合いをしていたふたりだが、ある日突然、青野くんが「いなくなって」しまう……。絶対に結ばれないし、触れ合えないふたりの、でたらめで切実すぎるラブ・ストーリー。
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ちなみに1巻のバージョンと別に、分冊版もあるようですのでご注意ください。
ちょっとおとぼけな優里ちゃんと青野くんは付き合いはじめます。でも、たった2週間で青野くんは死んでしまいます。
憔悴しきった優里ちゃん。
管理人は、この顔を見て「あ、なんかすごいマンガかも!」って思いました。今までの優里ちゃんはツルッとした感じの表現でしたが、青野くんが死ぬ前と後の優里ちゃんの表情のギャップがすごくて胸に響きました。
優里ちゃんの前に幽霊になった青野くんが現れます。もちろん生前とはいろいろな意味で別の存在になっています。でも優里ちゃんにとってはかけがえのない恋人です。
幽霊になった青野くんには生前に近い部分と、いままでに優里ちゃんが見たことがない部分の二つが見えます。見たことがない方はまるで悪霊のようです。そして悪霊のような青野くんも優里ちゃんは受け入れます。
幽霊になった青野くんに対して恐怖心もある優里ちゃん。でも、それを乗り越えられるぐらい優里ちゃんは青野くんに対する純粋な想いがあります。
すごいですね、この表現!
単純に墓場で死人が怖くてビビるとかじゃありません。優里ちゃんの一途な想いが怖すぎます。相手が死んでしまって幽霊になっていても、自分は生身のままでも相手を追いかけるということです。相手が死んでいても受け入れてしまうって、明らかにホラーです。
幽霊の青野くんは二面性があって、徐々におかしくなっていきます。優里ちゃんはそんな青野くんを受け入れますが、負荷が大きくなってきます。丸一日記憶がなくなったり、鼻血を大量に出して倒れてしまいます。
そのほかにも登場人物がいて話を動かしはじめます。
登校拒否の堀江美桜ちゃんは大のホラー映画好きで、解決の鍵を握っている感じです。そして色々と巻き込まれている藤本くん。藤本くんは青野くんの友人で、最初は口が悪くて印象よくないやつなんですけど実はいい奴。自分では望んでいないのにだんだんとキーパーソンになってきています。キスしちゃうしね。
ということで、なかなか読ませる1巻でした。椎名うみ先生の表現はシンプルで、でも残酷です。
何がいい?何がわるい?
死んでいるから悪くて、生きているからいい?
純粋に好きだっている感情はどうすればいい?
ただただ純粋に好きだって感情が抑えられないと、その感情は狂気に近づきます。たとえ相手が死んでいても生死を超える感情があるということは理解できます。でも普通は生理的に受け付けません。死体が好きとか幽霊が好きとか、根本的にまずいですよね。でも相手が死んでも、好きだって気持ちが消えないときには一体どうしたらいいでしょう?そして目の前に好きだった人の幽霊がいたらどうします?
純粋恋愛に突っ走る女子高生に、ウラオモテ二面性がある幽霊の彼氏。そして彼氏は彼女の精神と肉体を侵食していきます。切なくて残酷で、そして狂っています。でも優里ちゃんがそうなるのもすごいわかる。単純に素直に好きってだけ。でもそれが許されない。
できたらみんな幸せになってほしいけど、現時点ではみんな出口がない。
みんなはどうなったら幸せになるでしょう?優里ちゃんにとって幸せとは青野くんが生き返ることだけど、これは無理。青野くんが幸せになるには生き返るか成仏するか。生き返れはしないし、成仏したら優里ちゃんには会えなくなります。藤本くんが幸せになる条件はまったく不明。優里ちゃんと付き合ったら死んだ友人の青野くんに対して罪悪感がでそう。唯一、良い将来が見えるのは堀江さんで、優里ちゃんと友達になって登校拒否がなおって学校に行けるようになると幸せかも。
これから一体どういうお話が待っているのでしょう。期待の作品です。
ご参考になりましたら幸いです。
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