【感想】「世界文学大図鑑」ジェイムズ・キャントン (著), 沼野 充義 (監修), 越前 敏弥 (翻訳) なにこの本、すごい楽しいんですけど。
「世界文学大図鑑」読みました!すごく楽しかったです。
紹介系の本って現代だけとか古典だけとか偏りがあるか、教科書的な紹介だけになるコトが多いと思います。でも、この本は今でも読んで楽しい本が多く紹介されているとおもいます。
著者と単に趣味が似てるだけかもしれませんが、
それって大事ですよね。
古今東西の文学作品をまとめて100+200編紹介するというなかなか面白い本です。池澤夏樹=個人編集 世界文学全集【全30巻】とか好きな人には絶対的にオススメできる本だと思います。
世界文学で面白いのある?というときにこの本が手元にあったらすごい楽しいと思います。自分なら後ろの現代の方からめくっていって、ピンときた本を読んでみたいです。マニアックな読書家にはすごいオススメです。
◆古今東西の「世界文学」の主な潮流を、オールカラーの図版満載でわかりやすく解説。 ◆本編で扱う100編あまりに加え、「もっと知りたい読者のために」でさらに200編を超える作品を紹介。
世界には私たちがまだ読んだことのない、面白そうな本がたくさんある ――沼野充義「日本語版監修にあたって」より
何か惹かれるものがあったら、この本を読みかけにしてもまったくかまわないから、ぜひその作品をすぐに入手して読みはじめてもらいたい。そして、その作品のおもしろさをだれかに伝えてもらいたい ――越前敏弥「訳者あとがき」より
『世界文学大図鑑』を推薦します。 約350ページに、古今東西の文学をめぐる情報を収める。この試みを快挙とするも暴挙とするも読み手の想像力次第。むろん「情報源」でもあるけれど、それ以上にこの本は、無数の物語を夢見るための格好のツールなのだ。 柴田元幸(翻訳家・米文学者)
「ことばのあとにことばがつづき、またことばがつづいて力となる」――マーガレット・アトウッドの言葉のとおり、この本は過去から未来へ、都市から辺境へ、そして「他者」から「私」へと文学がつらなっていく奇跡をていねいに解き明かしてくれる。 倉本さおり(書評家)
管理人はこのシリーズ好きです。哲学大図鑑と心理学大図鑑も持ってます。宗教大図鑑ももってますが職場にあります。
たぶんみなさん気になると思いますので、村上春樹先生の章を本文からピックアップ。紹介されているのは「ねじまき鳥クロニクル」です。
かなり長くなりますが、目次をのせます。本編で100編、さらに「もっと知りたい読者のために」で200編超の作品が紹介されております。本編には自分が数えたところ6作品が日本のものでした。意外と日本の作品多いな。赤字で示します。
目次
はじめに英雄と伝説 紀元前3000年~後1300年
神々だけが永遠に日のあたる場所にとどまる
『ギルガメシュ叙事詩』旧徳に従えば、危うくともやがては吉となる
『易経』周の文王が書いたとされるおお、クリシュナ、わたしが犯そうとしているこの罪はなんだ?
『マハーバーラタ』ヴィヤーサの作とされる歌え、女神よ、アキレウスの怒りを
『イリアス』ホメロスの作とされる真実になんの救いもないときに、それを知るというのは、なんと恐ろしいことか!
『オイディプス王』ソフォクレス地獄の門は昼も夜も開いている。
そこへくだる道は平坦で、たやすい
『アエネーイス』ウェルギリウス運命はなるようにしかならない
『ベオウルフ』そこで、シェヘラザードは語りはじめた……
『千夜一夜物語』人生がただの夢にすぎぬのなら、
なぜあくせく働くことがあろうか。
『全唐詩』闇の現(うつつ)はなほ劣りけり
『源氏物語』紫式部主君のために、人はひたすら苦難に耐えなければならない
『ローランの歌』タンダラダイ、小夜啼鳥が愛らしく歌う
「菩提樹の下で」ヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ愛の命令に従おうとしない者は、大きな過ちを犯す
『ランスロまたは荷車の騎士』クレティアン・ド・トロワ他人の傷を自分への警告とせよ
『ニャールのサガ』もっと知りたい読者のために
ルネサンスから啓蒙主義へ 1300年~1800年
気がつくとわたしは暗い森のなかにいた
『神曲』ダンテ・アリギエーリ われら3人、義兄弟の契りを結び、力を合わせて心をひとつにすることを誓う
『三国志演義』羅貫中ページをめくって別の話を選んでください
『カンタベリー物語』ジェフリー・チョーサー笑いは人間の本性だ。楽しく生きよ
『ガルガンチュアとパンタグリュエル』フランソワ・ラブレーこの花と同じように、忍び寄る老いがあなたの美しさを曇らせる
『恋愛詩集』ピエール・ド・ロンサール快楽を愛する者は快楽ゆえに堕ちなくてはならない
『フォースタス博士』クリストファー・マーロウ人はみな、おのれの所業の子である
『ドン・キホーテ』ミゲル・デ・セルバンテス人は生涯にいくつもの役を演じる
〈ファースト・フォリオ〉ウィリアム・シェイクスピアだれも彼も尊敬するのは、だれも尊敬しないのと同じだ
『人間ぎらい』モリエールけれど背中のすぐ後ろにいつも聞こえる、翼をひろげた戦車を駆って時が迫りくるのが
『雑詩篇』アンドルー・マーヴェル蛤のふたみに別れ行く秋ぞ
『おくのほそ道』松尾芭蕉死ぬるを高の死出の山、三途の川は堰く人も、堰かるる人もあるまいと
『曾根崎心中』近松門左衛門わたしは1632年、ヨーク市の良家に生まれた
『ロビンソン・クルーソー』ダニエル・デフォーもしこれがこの世にありうる最善の世界ならば、ほかの世界はどういうものなのか
『カンディード』ヴォルテール勇気なら地獄を裸足で歩きとおせるくらい持ち合わせている
『群盗』フリードリヒ・フォン・シラー恋愛では、感じてもいないことを文字で表すほどむずかしいことはありません
『危険な関係』 ピエール・コデルロス・ド・ラクロもっと知りたい読者のために
ロマン主義と小説の台頭 1800年~1855年
詩はあらゆる知識の息吹きであり、より高尚な精気である
『抒情歌謡集』ウィリアム・ワーズワースとサミュエル・テイラー・コールリッジ現実の人生ほど不思議で奇怪なものはない
『夜曲集』E・T・A・ホフマン人間は努力しているかぎり迷うものだ
『ファウスト』ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテむかしむかし……
『子供と家庭の童話』グリム兄弟隣人を楽しませてやって、こんどはこちらが笑ってやるのが生き甲斐ってものだろう?
『高慢と偏見』ジェイン・オースティンこの密かな労苦がいかに恐ろしいものか、いったいだれにわかってもらえるでしょうか
『フランケンシュタイン』メアリー・シェリーみんなはひとりのために、ひとりはみんなのために
『三銃士』アレクサンドル・デュマけれども、ぼくは幸せには向いていません。そうしたものに、ぼくの魂は縁がないのです
『エヴゲーニイ・オネーギン』アレクサンドル・プーシキン百万の宇宙を前に、冷静で動じぬ魂であれ
『草の葉』ウォルト・ホイットマン人間がどのようにして奴隷にされたかをこれまで見てきた。奴隷をどのようにして人間にしたかをこれから見せよう
『数奇なる奴隷の半生――フレデリック・ダグラス自伝』フレデリック・ダグラスわたしは鳥ではありません。どんな網にもかかりません
『ジェイン・エア』シャーロット・ブロンテ自分の命なしでは生きていけない! 魂なしでは生きられない!
『嵐が丘』エミリー・ブロンテ地球上の動物のどんな愚行だって、人間どもの狂乱沙汰には遠く及ばない
『白鯨』ハーマン・メルヴィルすべて別れというものは最後の大きな別れを予感させる
『荒涼館』チャールズ・ディケンズもっと知りたい読者のために
現実の生活を描く 1855年~1900年
倦怠が物言わぬ蜘蛛のように、心の四隅の暗がりに巣を張っている
『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フローベールわたしもこの大地の子であり、この風景のなかで育てられたのです
『グアラニー族』ジョゼ・デ・アレンカール「詩人」は雲間の王者に似ている
『悪の華』シャルル・ボードレール聞いてもらえないからといって、口をつぐむ理由とはならない
『レ・ミゼラブル』ヴィクトル・ユゴーきみょーよ、とってもきみょーよ!
『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル大いなる意識と深い心には、苦痛と苦悩が付き物だ
『罪と罰』フョードル・ドストエフスキー人類はおろか、一国民の生活でさえ、そのまま記述することは不可能に思える
『戦争と平和』レフ・トルストイひとつの問題をさまざまな立場から見ることができないのは、了見がせまいからだ
『ミドルマーチ』ジョージ・エリオット人間の法に逆らえても、自然の法には抗えません
『海底二万里』ジュール・ヴェルヌスウェーデンでぼくらがやっているのは、王の式典を祝うことだけだ
『赤い部屋』アウグスト・ストリンドベリ彼女は外国語で書かれている
『ある婦人の肖像』ヘンリー・ジェイムズ人間ってやつは、ほかの人間にずいぶんむごたらしいことができるもんだ
『ハックルベリー・フィンの冒険』マーク・トウェイン苦しみ、戦うために、もう一度炭坑へおりていきたくてたまらなかった
『ジェルミナール』エミール・ゾラいまや彼女には夕日が醜く見え、空にある大きな炎症の傷のようだった
『ダーバヴィル家のテス』トマス・ハーディ誘惑を捨て去る方法はただひとつ、誘惑に屈することだけだ
『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド古かろうと新しかろうと、目を向けてはいけないものがある
『ドラキュラ』ブラム・ストーカー地球上の暗黒の地のひとつだった
『闇の奥』ジョゼフ・コンラッドもっと知りたい読者のために
伝統を破壊する 1900年~1945年
世の中は一目瞭然のことばかりなのに、どういうわけか、だれもそれをしっかり見ようとしないんだよ
『バスカヴィル家の犬』アーサー・コナン・ドイル吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生まれたかとんと見当がつかぬ
『吾輩は猫である』夏目漱石グレーゴル・ザムザは、ベッドのなかで自分がおぞましい虫に変わっているのに気づいた
『変身』フランツ・カフカ祖国のために死ぬるは、甘美にして名誉なり
『詩集』ウィルフレッド・オーエン四月は最も残酷な月
死に絶えた大地からリラの花が顔を出す
『荒地』T・S・エリオット空にひろがる星の樹から濡れた夜の果実がぶらさがる
『ユリシーズ』ジェイムズ・ジョイス若いころは、わたしにもたくさんの夢があった
『吶喊』魯迅愛は愛だけを与え、愛だけを受けとる
『預言者』ハリール・ジブラーン批評は進歩と啓蒙の源なのです
『魔の山』トーマス・マンささやきとシャンペンと星に囲まれ、蛾のように飛びかった
『グレート・ギャツビー』F・スコット・フィッツジェラルド古い世界は滅ばなくてはならない。目覚めよ、暁の風よ!
『ベルリン・アレクサンダー広場』アルフレート・デーブリーン遠くに見える船は、男たちすべての望みを載せている
『彼らの目は神を見ていた』ゾラ・ニール・ハーストン死体は傷ついた心よりも重い
『大いなる眠り』レイモンド・チャンドラー涙の国というのは、ほんとうに不思議なところなんだ
『星の王子さま』アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリもっと知りたい読者のために
戦後の文学 1945年~1970年
ビッグ・ブラザーがあなたを見ている
『一九八四年』ジョージ・オーウェルもう十七歳なんだけど、ときどき十三歳がやるみたいなことをしてしまう
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』J・D・サリンジャー死はドイツから来た名手
『罌粟と記憶』パウル・ツェランぼくの姿が見えないのは、単に人がぼくを見ようとしないだけのことだから、その点をわかってくれ
『見えない人間』ラルフ・エリスンロリータ、わが人生の光、わが腰部の炎。わが罪、わが魂
『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフなんにも起こらない、だあれも来ない、だあれも行かない。まったくたまらない
『ゴドーを待ちながら』サミュエル・ベケット一方の手の指で永遠に触れ、一方の手の指で人生に触れることは不可能である
『金閣寺』三島由紀夫やつこそ、ビートだ――ビーティフィクの根っこであり、魂だ
『オン・ザ・ロード』ジャック・ケルアックある人々のあいだでよいことが、別の人々には忌まわしきことであったりする
『崩れゆく絆』チヌア・アチェベ壁紙ですら人間よりもよい記憶力の持ち主である
『ブリキの太鼓』ギュンター・グラスわたしは人間は一種類しかないと思う。人間ってのはね
『アラバマ物語』ハーパー・リーすべてを失っても、また最初からはじめなければならないと宣言する勇気さえあるなら、何物も失われはしない。
『石蹴り遊び』フリオ・コルタサルヨッサリアンは永久に生きようと、あるいはせめて生きる努力の過程において死のうと決心していた
『キャッチ=22』ジョーゼフ・ヘラーぼくが詩を作るのは自分を見るため、闇をこだまさせるため
『ある自然児の死』シェイマス・ヒーニーおれたち、どこか狂ったところがあるにちがいない。あんなことをやるなんて
『冷血』トルーマン・カポーティ瞬間ごとに終わりを迎えながらも、けっして終わるということがなかった
『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア=マルケスもっと知りたい読者のために
現代文学 1970年~現在
最後の瞬間の積み重なりが私たちの歴史なのよ
『重力の虹』トマス・ピンチョンあなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説を読みはじめようとしている
『冬の夜ひとりの旅人が』イタロ・カルヴィーノたったひとりの人生を理解するだけでも、世界を呑みこまなければならない
『真夜中の子供たち』サルマン・ラシュディ自分の身を自由にすることと、自由になった身は自分のものだと主張することは、まったく別のことだった
『ビラヴド』トニ・モリスン天と地は大きく乱れていた
『赤い高粱』莫言こんな話は口では伝えられない。この手の話は感じることができるだけだ
『オスカーとルシンダ』ピーター・ケアリー青々とした簡素さゆえに、この島を慈しめ
『オメロス』デレック・ウォルコット私には殺しの気分が、狂いだす寸前にまで強かった
『アメリカン・サイコ』ブレット・イーストン・エリス彼らは穏やかで神聖な川をくだっていった
『スータブル・ボーイ』ヴィクラム・セスあれこそ、ギリシャ人の考えだ。深淵なる考えではないか。美は恐怖である
『シークレット・ヒストリー』ドナ・タート私たちがこうして目にしている光景というのは、世界のほんの一部にすぎないんだってね
『ねじまき鳥クロニクル』村上春樹たぶん目の見えない人の世界の中でだけ、物事は真の姿になるでしょうね
『白の闇』ジョゼ・サラマーゴ英語は南アフリカの現実を伝える媒体として適していない
『恥辱』J・M・クッツェーすべては二度起こることになる、内側と外側で。そしてその二つは異なった歴史なのである
『ホワイト・ティース』ゼイディー・スミス秘密を知られないようにするには、秘密などないふりをするのがいちばん
『昏き目の暗殺者』マーガレット・アトウッド彼の家族が忘れたがっている何か不愉快なことがあるような気がしてならない
『コレクションズ』ジョナサン・フランゼンすべてあのときの悪夢に起因する。われわれがともに作り出したあの惨劇に
『客人』黄皙暎残念だけれど、わたしは生き方を学ぶのに一生かかるのよ
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』ジョナサン・サフラン・フォアもっと知りたい読者のために
実は、ここに載っていない「もっと知りたい読者のために」も結構面白い!ボルヘスやリョサは「もっと知りたい読者のために」の方の200 の中に入っています。「停電の夜に」のラヒリ、「2666」ロベルト・ポラーニョ、「君のためなら千回でも」カーレド・ホッセイニとか載っているのがすごくいいです!ここら辺の読書センスはすごい好きです。
そして、なんとSF系も結構取り上げられていて、「ニューロマンサー」ウィリアム・ギブスンや「クラッシュ」J.G. バラード、「スローターハウス5」カート・ヴォネガットとか載ってます!
とにかく世界文学を読む人には楽しい本です。池澤夏樹=個人編集 世界文学全集【全30巻】にかなりリンクする作品が多いと思います。そういう意味でも読書家にオススメできる作品です!楽しかったです!!
<関連本>
ご参考になりましたら幸いです。