勤務医開業つれづれ日記・3

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【感想】幼女戦記(4) 東條 チカ、カルロ・ゼン 耐えざる危険 生命の保証なし 生還の暁には名誉と賞賛を得る【ネタバレ漫画レビュー】

「幼女戦記」4巻きました!戦闘シーンもすごいのですが、この作品のすごいところはそれ以外の会議や準備の場面です。企業の中間管理職なら泣いて共感する作品です。「幼女戦記」というネーミングですが、ロリ成分はゼロ、中身はデスクワークと現場でもがく中間管理職物語の極端な変形版ですw

 

働いている人にぜひ読んで欲しい作品です。濃密な戦域起動演習、順応訓練、ヘルウォーク、対尋問訓練SEREを含めた戦術、戦略および企業や組織における中間管理職の責任と自己判断の範囲など、日夜働いているサラリーマンには涙が出るような内容です。かなりおすすめ!

 

幼女戦記(4)<幼女戦記> (角川コミックス・エース)

絶対に応募者が来ないように募集文を推敲したのに――なぜかターニャの大隊には全国から有望な若者が続々志願してきてしまった。エレニウム九五式による精神汚染もあいまって、気づけばなぜだか大隊長でした!? 

 

 

 

 

 

ついにでました4巻!しかも三ヶ月連続刊行って、まじですか!?スタッフ、デグちゃんに精神汚染されていませんか……?

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第4巻 4月10日発売   ←今ここ

第5巻 5月10日発売予定

第6巻 6月10日発売予定

これって狂気ですよね。まさに”求む男子。至難の旅。
僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。成功の暁には名誉と賞賛を得る。”じゃないですか?

 

 

 

 

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さて第4巻になりました。

 

困難な状況に打ち勝つべく様々に策をめぐらすデグレチャフ大尉(今回、不幸なことにさらに昇進します)。それは本来保身のものですが、優秀な日本の中間管理職の男性が少女に転生しているので、めちゃくちゃ事務仕事に長けています。組織内保身をしていたらいつの間にか信頼されてさらなる激戦に巻き込まれるという悲劇……。笑ってしまいますが、優秀な人材ってこう使われちゃうんですよね。

 

あくまで日本のサラリーマンの発想なので、いくら優秀でも歴史や戦況をひっくり返すようなことはしません。あくまで現状でベストを尽くす。上司から見たら超頼りになる部下です。 

 

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誰も応募しないような募集広告を書いたはずのデグレチャフ大尉(デグちゃん)。それなのに山のような応募が全国から届きます。

 

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「帝国軍参謀本部 戦務課通達

 

常に彼を導き

常に彼を見捨てず 常に道無き道を往き

常に屈さず 常に戦場にある

全ては勝利のために

求む魔道師

至難の戦場 わずかな報酬

剣林弾雨の暗い日々

耐えざる危険 生命の保証なし

生還の暁には名誉と賞賛を得る

 

参謀本部第六〇一編成委員会」

 

 

 

たぶん、元ネタはこれです。

MEN WANTED for Hazardous Journey.
Small wages, 
bitter cold, long months of complete darkness, 
constant danger, safe return doubtful.
Honor and recognition in case of success. 
Ernest Shackleton
「求む男子。至難の旅。

僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。
絶えざる危険。生還の保証無し。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。
      アーネスト・シャクルトン」

アーネスト・シャクルトン - Wikipedia

現在では作り話と言われていますが、5000人もの野郎どもが集まった、という超有名な檄文です。

 

こんなあおられ方したら、軍人だったら心震えるに決まってます。デグちゃんの元には全国から精鋭が集まって来てしまいました。

 

 

 

 

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セレブリャコーフ少尉(伍長から昇進)がデグちゃんの副官として任官されました。あまりに多数の応募者をふるい落としすために狂気の訓練を行います。恐怖の戦域起動演習第一弾はサバイバルです。

 

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休む間も無く対砲兵の防御戦です。しかもぶっ続け36時間。終わったと思ったらさらにアルファです。

 

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ようやくついた第二ポイントで対尋問訓練です。いわゆる拷問です。ジュネーブ条約では拷問は禁止されていますが、尋問は禁止されていません。高度な尋問は拷問と区別がつかない、ということで訓練が必要になります。

 

よく見たらデグちゃんがケリいれてますね。肉体の次には精神を追い込む、にっこり笑ったデグちゃん、ひどい。精神的におかしいですね。

 

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そもそも帝国軍人は死ぬ!!

死ぬために我々は存在する!!

 

11歳の少女が屈強な精鋭を前に訓示を述べます。そのかっこよさったらありません。

 

全国から選ばれた精鋭たちもデグちゃんに踏みつけにされて、鍛えに鍛えらえてデグちゃんの予想とは逆にすばらしい大隊になっていきます。

 

 

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優秀な中間管理職はときに上司の予想を超えて成果を上げてしまいます。気を良くした上司はさらに過酷な条件をつきつけます。自分で自分の首を絞めています。やばいね。

 

 

 

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レルゲン中佐はデグちゃんをビビりまくってます。とんでもない悪魔だと考えていますが 、デグちゃんは逆にレルゲン中佐は自分のことを一番考えてくれているひとだと思っています。レルゲン中佐が重要な情報を教えてくれたのだと勘違いして、にっこり笑って戦いば始まる場所に行きますというデグちゃん。

 

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 レルゲン中佐はデグちゃんの笑顔に恐怖します。戦争の起こる場所に派遣されるのに笑顔なんて、こいつはやっぱり狂った戦争マニアだ、と。

 

……でもね、実際にデグちゃんの考え方は今現在の我々には全然違和感がない発想です。人を「人的資源」として資源や数、ものとしてみなすことはあまりに一般的です。

 

レルゲン中佐が「狂っている」っていうのはデグちゃんのことではなく、現代の我々のことを言っているのかもしれません。現代社会のシステムはちょと外側から見たら狂気の社会かもしれません。そして、私たちもうすうすそれに気づいているはずです。自分たちの社会は狂っているかもしれない、と。

 

 

この作品、人の上に立ったことがあるひとならわかる、 中間管理職的な悩みや葛藤、人間関係がいろいろ盛り込まれています。デグちゃんの小気味好い明瞭な事務的スタンスがとってもいいです。会議で相手を論破していく気持ち良さがありますね。

 

幼女成分はほとんどありませんが、バリバリの戦記物でしかも戦略、戦術の組み立ても、軍の構成についても悩みなどもいろいろある作品です。興味がある方にはかなりお勧めできる作品です!!