■水谷フーカ『Cl 1 / 菜園モノクローム (1月と7月)』鉛筆の線がキレイ! 繊細な はかなさを越えて 【マンガ感想・レビュー】
(2018.06.24更新)
水谷フーカ先生の新作が出ました!今回は鉛筆作品です。うれしくて、うれしくて、速攻で買ってしまいました!!
『Cl』
5億人に1人という確率で
黄緑色の髪の毛を持つ子供が生まれる
保志くんは黄緑症(先天性緑髪症)で、黄緑色の髪の毛を周りは好奇心の目で見ます。友人の三田くんはそんな周りの好奇心や距離感がとても気になってしまいます。
全ページ2色で、黄緑症の保志くんの髪の毛がきれいな黄緑色で印刷されています。
いままでの水谷フーカ先生の登場人物は、みんな輝く表情が素晴らしい。
でも今回の作品は日常的な高校生活を楽しく描いていますが、時折見せる三田くんの固まったような表情や、保志くんの周りに何も期待していない感じ、などネガティブなちょっとした表情がとても心に突き刺さります。
記憶の欠落が生じる黄緑症の保志くんと三田くんは、これからどんな生活を送るのかな?なんだか読んでいて、すごく気になる作品です。
保志くんの買う、変なジュース(『秋刀魚物語』しかもホットとか)も毎回気になるんですけど(笑)。
登場人物はこの4人。
わたしは紅一点の古谷さんのファンです。
保志くんの髪の毛が、気になって、気になって、気になって、仕方ない古谷さん。保志くんの黄緑の髪の毛を縛る妄想シミュレーションをしてしまいます。
ねー!かわいいね、古谷さん!!
個人的には古谷さんの今後がいろいろと気になります。あとは、平先輩が卒業できるかどうかですね(笑)。
『菜園モノクローム』
漫画雑誌「1月と7月」連載作、全ページ2色で描かれた「Cl」1-5話に加え、水谷氏の最高傑作と言えるであろう読み切り作品「菜園モノクローム」を併録いたしました。
水谷氏は台詞と台詞のあいだの「間」を上手く使い、無声映画のようにその場の空気感を描くことに非常に長けています。その強みが最大限生きる鉛筆描きにて執筆をお願いした作品群になります。
作品紹介で”水谷氏の最高傑作”とか書かれていますが、わかる。言いたいことはわかるけど。好きな人はとっても好き、でも、読み手を選ぶ作品だと思います。
個人的なカテゴリーでは映画『ミツバチのささやき』とか『エル・スール』みたいな感じです。思春期の前の時期、大人が信じている価値と自分たちがもっている価値感が違う年齢のころの話です。死ぬことについても意味が違っていた、あのころのわずかな記憶を思い出させるような作品です。
自分たちが生きている意味って一体なんなのだろう?でも、きっと二人ならどんなことがあっても怖くはない。そんな幼い頃思ったはかない感覚が心に残ります。
鉛筆の水谷フーカ先生もすごくいいですね(うっとり)……。
水谷フーカ先生の鉛筆って、思い出せるのは新版のほうの『チュニクチュニカ』の最終ページが見開きの鉛筆風だったくらい。水谷フーカ先生の鉛筆のイメージがありませんでしたけど、鉛筆の線がとってもきれいです。
収録作品は『Cl』が1−5話と、『菜園モノクローム』になっています。本のタイトルが『Cl』(1)となっていますから、(2)が今から待ち遠しいです。今後続刊も期待しましょう。
というわけで、いつもの水谷フーカ先生とは一味違う、繊細で、はかなさのある、味わい深い作品でした。オススメです!
ご参考になりましたら幸いです。
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